西部戦線異状なし-ふなぼり昨日は、我が家では極めて珍しい来客のためブログがかけませんでした。そして、近いところでめぼしい名所がないので、船堀タワーに上りました(第二東京タワーができればそこにしようかと)。右の写真は夕方5時頃のものです。道路は船堀街道(新小岩-西葛西)で、右は荒川沿いの高速道路です。この写真だと明るく見えますが、実際はかなり真っ暗です。
5時頃です。

で、首記の本です。
これは、11月初めの長期出張のときに読んで、そのあと1/3を残して止まっていたのですが、先週、読了しました。この本はなかなか良い本と思います。私が面白いと思ったところを(自分のために)何回かに分けて書いておこうかと。今回は概要です。

●バッハ伝承の謎を追う/小林義武/春秋社西部戦線異状なし-バッハ

本の構成
●1.バッハ研究の現状
バッハ研究のアプローチが分類されていて分かり易い。
●2.演奏習慣の諸問題
これは、「楽譜の記載法等が違う」ので、現在の常識で弾くと間違った解釈になるといったことが書いてある。
●3.「バッハ復活の背景」-ロマン派のゴシック的バッハ像をめぐって
ここは、何といってもゲーテの言葉が印象深い。
●4.バッハをめぐる偽作の問題
「おれの尻をなめろ、きれいにな」とモーツアルトが言ったとか言わなかったとか、最近の文献学的研究では「言っていなかった(らしい)」というところから、偽作云々の話が書いてある。
●5.「フーガの技法」の謎
●6.晩年のバッハとその作品-バッハ像修正の試み
●7.「ロ短調ミサ曲」のバロック的普遍主義
小林さんの研究によると、バッハ晩年の鳥の歌は、今まで言われてきた「フーガの技法」ではなく「ロ短調ミサ曲」と言っている。これは、私を含むバッハ像を覆す「説」で面白い。また、私のバッハの音楽の聴き方とバッハの人物像に、すこし影響するかもしれない。

なお、この本には次のようなことも書いてあった。
「バッハ研究がある程度進んだ20世紀初頭には、バッハのカンタータの作曲年代を見て「バッハは単なる音楽職人で、最初の頃こそはまじめにカンタータなどを作っていたが、その後はやる気をなくした」という説をとなえた人がいた(ようだ)。その後、バッハは第5の福音書といった過大な評価はなくなったと書いてある。たしかに「第5の福音書」というのは、ひいきのひいき倒しと思いますが、小林さんはこのような極端な(又は単純な)評価にひとつひとつ反論していて説得力がある。
  ★
この本は、バッハをさらに面白く聞くのにとてもも参考になると思った。1回の斜め読みで読んだことにするにはもったいない。何回かのブログで、本の記述に沿って私なりに考えてみたい。

話は逸れますが
磯山さんの本で、たぶん最近読んだ「モーツァルト=翼を得た時間」(講談社学術文庫)と思いますが、「楽譜の透かしとか、筆跡とか文献学的に調べたバッハ像は、事実に基づくので受け入れざるを得ないが、そのアプローチだけでは作曲家の思いに到達することは決してできない」と言っていた(と思う)。これは、まさか、小林さんの研究に対する(直接的)感想ではないと思いますが、最近の一般的バッハ研究の傾向を揶揄していると思われる。私のような単なる音楽愛好家は、磯山さんと小林さんのような両方の本を参考にしつつ、最後は良くも悪くも)自分の(音楽的)直観を頼りに、迷走していくのだろう。
  ★
なお、磯山さんの本は、どの本を読んでも面白く説得力があるので納得してしまうが、それだけに騙されたような感じも(すこし)感じる。実は、あの有名な小林秀雄にも同じような感じを持った(なんせ、ひねくれているので)。評論家というものは、博識で人を煙にまきつつ金銭を取る詐欺師にみえてくる(時もある)。それはそれで「騙されたと思って」みるのも、愛好家の楽しみなのですが・・・。

西部戦線異状なし-パリコンサート●購入したCD
●ビル・エヴァンス/パリ・コンサート
ほんとうは、BCJの6大宗教曲ボックスセットを買おうと思って、身近な人の買い物つきあいでデパート行ったついでにCDショップに立ち寄ったのですが、このCDは売り切れとのこと。それでいろいろ探して、結局購入したのが、このCDです。購入理由は、試聴してみて録音もなかなかよく(SHMCDというやつです)、その雰囲気が気に入ったからということです。予備知識があった訳ではありません。実は、ピアノという楽器がそれほどすぐれた楽器とは思っておらず、どちらかというと打弦楽器の一種と思っていて、そのクラシック的な打楽器的要素が嫌いなのです。それで、打楽器的要素がないピアノ曲や、JAZZ系のピアノのほうが好きなのです。話がそれますが、そもそも、鍵盤楽器という分類が気に食わない。ギターが撥弦楽器でヴァイオリンが擦弦楽器なら、ピアノは打弦楽器(そうするとツイターと同じ仲間に入る)と言うべきと思っています。

●蛇足
今日は、ひねくれ度が高いことを書いてしまったような気がする。師走になって私のストレスが高まり、ひねくれ度に拍車がかかったと自己評価(反省)しています。やはり修行がたりない・・・。こういうときには、私が好きなバッハの曲、例えば、無伴奏チェロ組曲2番のプレリュードを、普通よりず~~と遅い速度の演奏で聴いて見たい(そんなCDは無いので、自分で弾くしかないかも)。

・・・ということで。