最近、本屋さんに行くと、ぽつぽつと音楽関係の文庫本が出版されている。あの「のだめ」の影響なのか、クラシック音楽業界の地道な努力の成果なのか、単に物好きでひまな中年が増えただけなのか判らないが、音楽の本が売れていているようだ。村上春樹の音楽エッセイ「意味がなければスィングはない」も文庫本になった。文庫版で再読しておくのも悪くないかも。

●バッハ伝承の謎を追う/小林義武/春秋社
全7章の内第1章のみ内容を、整理しておきます。
1.バッハ研究の現状
小林さんは、バッハの研究を次のように分類している。
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Ⅰ伝記研究
1)伝記資料研究
2)一般歴史研究
Ⅱ作品研究
1)作品資料(自筆譜、筆写譜等)の把握
2)作品成立過程の研究
3)原典校訂
4)演奏論
5)様式分析
6)解釈学
7)受容研究

ただ、実際の研究はこれらを関連させながら進められ、下記のように3つの方法論にまとめられるとのこと。
1)資料学的方法
2)文献学的方法
3)分析的方法

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第1章では、この3つの方法論に分けて説明が書かれている。
それぞれが面白いのですが、私にとって興味があったのは「フィグーラ/figuna」です。これは「音型」と訳される。16世紀に多用されたようで、バッハも「死」、「苦しみ」、「裏切り」といった言葉のところにフィグーラを使ったようだ。それを聞き分けるというのは(少なくとも私には)不可能ですが、そういう手法を用いているというのを知るだけでも面白い。
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なお、フィグーラについては、以前読んで、さっぱり理解できなかったゲオルギアーデス(ギリシア出身のドイツ音楽学者)の「音楽と言葉」(講談社学術文庫)に出てきた。え~~と、「言語の音楽化」だったか「音楽の言語化」と表現されていたような気がする。このような考えによる分析手法は、磯山雅のモーツアルトの曲の分析にも使われているような気がした。このフィグーラの理解はカンタータを演奏する場合には必須だろう。ただ、このフィグーラの概念は、器楽曲にも使われているのだろうか。当時の聴衆はこれを聞き分けていたのだろうか・・・。そう考えるのも面白い。

●図書館で借りた本やCD、購入した本など
メシアン 創造のクレド/春秋社(江東図書館)
メシアン/折り眼曲集/サイモン・プレストン(Org)(江東図書館)
朗読CD「新田次郎の強力伝」(江東図書館)
新田次郎は大学時代にだいぶ読んだ。今、文庫本で読み返すなら別の本を読みたいが、CDで聴くとまた新鮮な感じを受ける。
物語イタリアの歴史(ブックOFFで105円)
「国家と神とマルクス/佐藤優/角川文庫(亀戸アトレ)
小泉信三の「共産主義批判の常識」(講談社学術文庫)を大学時代に読んで感心した記憶がある。しかしながら、ソヴィエト連邦が崩壊し、アメリカの放任資本主義が破綻した今、そして派遣者の解雇が広がる現在の日本、だからこそマルクスの分析(敢えてマルクス主義とは言いません)が光る(かもしれない)。

これに読みかけの本数冊(例えば、フルトヴェングラー/岩波新書、犬にどこまで日本語が理解できるか/日本ペンクラブとか、宮尾登美子やガポーティの小説など)を合わせると、当面は事足りるだろう。

・・・ということで。