1.はじめに
「(海千山千の)音楽評論家全盛の時代は過ぎ去り、(一次情報に基づく)系統的な研究に基づく音楽学者でなければ音楽(作曲家)を語れない時代になった」というような記事を読んだことがある。
たしかにこのような音楽学者に対抗できるのは、特定の楽器で長年活動し楽器とその音楽を熟知した演奏家だけだろう。
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ただ、バッハや中世紹介の本等を読んでいると、自給自足の農業社会から、都市化がある程度進んだ18世紀という時代(城壁都市に逃げ込まなければならないという時期もあったが)、あのバッハ小伝「J.S.バッハの生涯、芸術及び芸術作品について。真の音楽芸術の愛国的賛美者のために」を書いたフォルケルをはじめ、すでに音楽評論活動があり、音楽評論家がいたというのは驚くに値する。これらの本や評論は一体だれのために書かれたのだろうか。貴族とそれなりに存在したと思われるブルジョアが対象なのだろう。
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で、情報過多の現代ですが、やはり一次情報にアクセスするのは小さな図書館では無理であり、ましてやこれらの資料を入手できる経済力と時間がない一般愛好家には難しい。しかしながら、その音楽を聴き(演奏しつつ)、自らの好奇心を糧に(これを持続するのは難しい)に、一次情報でウラを取りつつ、バッハの生涯を調べるというのは、(愛好家にとって)理想と思われる。

2.首記の話
私のお気に入りのogawa-jさんは、愛好家でありながら、種々の一次情報にアクセスし調べて、その一端をHPやブログで紹介されている。このような活動に敬意を表したい。
その一端をまとめているHPは下記です。

湘南のバッハ研究室

私の読み方はいい加減で的を得ていないと思いますが、簡単ですが面白かったところ(インスパイアされたところ)を記しておきます。目次をみると7章までの構成で、現在、そのうち序章、第1章、第2章、第3章までアップされている。今回はそのうち、序章と第1章です。
●序章「音楽家一族バッハの起源」
・J.S.バッハの起源について、記録に基づいてしっかりとまとめられているのがすばらしい。
・ハンガリー人の起源はマジャール人らしい。そうするとドイツ人の起源はなんだろうか。ゲルマン人のなかの一族のゴート人なんだろうか。J.S.バッハの起源がハンガリー人かドイツ人かは、バッハ復活が「ドイツ国民運動」に関連しているので、バッハの起源はドイツ人でないと困るだろう。ただ、父親のヨハン・アンフロジウス肖像画を見ると、(よくわからないですが)これが100%ゲルマン系なのだろうか。コーカサスのアジア系も入っていないかなと思う(根拠はありません)。
・判ることはバッハ一族は、その係累に貴族(または騎士)はおらず、根っからの庶民だったということ。
・判らないのは、バッハ一族がいつのころからルター派プロテスタントになったかというところ。
・J.S.バッハの父親、アイゼナハの町や庸楽師だったヨハン・アンフロジウス・バッハ(1645年-1695年)が、6人の子供等を養うため、収入を増やそうとアイゼナハの町に辞任を申し込んだが認められなかった。
・早くして両親が亡くなったというから、相当苦労したんだろう。
・自分の性格形成から類推すると、このような貧乏のトラウマが、バッハの性格を形作ったと思う。
・なお、ドイツ人は気楽に「お前の収入はいくらだ」とか「出張の日当はいくらだ」とか聞いてくる。その類推で言えば、堂々と自らの収入増にエネルギーを使うのは、プロテスタントの宗教倫理からは当然ということであり、J.S.バッハのみが「えげつない」わけではないと思われる。
●第1章「幼年時代」
でかけるので、あとで追記予定(と思いましたが、次の機会で)。

3.聞いたCD
●ター編曲によるバッハ:無伴奏バイオリン・ソナタ集
西部戦線異状なし-バルエコ
このバルエコ編曲のソナタの楽譜は、いつか弾こうと思って購入し持っています。ときどき楽譜をみながら一応音を出したりしています。
また、このCDは、一時期車の中でかなり聞いていました。さすがにいつも聞いていると、いいかげん飽きてしまい、しばらく聞いていなかった。昨日聞いてみて、改めてバルエコの演奏とバッハの素晴らしさを感じました。私にとっては、シェリングも良いがバルエコもよい。
収録曲は下記。
1.ソナタ第2番イ短調(BWV1003)
2.ソナタ第3番ハ長調(BWV1005)
3.ソナタ第1番ト短調(BWV1001)
わたしは、最近はシャコンヌに飽きてしまい、よほど素晴らしい演奏にぶち当たらないと、聞く気がしない。最近は、浪漫的な演奏を嫌う風潮がありますが、それが古楽のアプローチかと言うと、愛好家的には(年のせいもある)そうは思わない。その私の指向にあった演奏が無いいま、多少地味なソナタはまだ新鮮です。

4.買ったCD
●レオンハルト/クラヴィコード・リサイタル
西部戦線異状なし-レオンハルト
グスタフ・レオンハルト(1928年-)の1988年の録音。
金属弦の音ながらクラヴィコードの響きが不思議で美しい。なお、HPで聞いた一弦琴の響きも同じような響きを感じた。この響きは、ピアノでもなくハープシコードでもなく、弦そのものの響きという感じで心地よい(と感じる)。その響きでバッハ親子の曲を聴くのは楽しい。もう少し、クラヴィコードの曲を買て聞きたい。
収録曲は下記。
1.組曲嬰へ短調(リッター)
2.幻想曲とフーガ イ短調BWV904(バッハ)
3.フランス組曲第2番ハ短調BWV813(バッハ)
4.ポロネーズ変ホ短調(W.F.バッハ)
5.ポロネーズ ホ短調(W.F.バッハ)
6.ポロネーズ ヘ短調(W.F.バッハ)
7.ソナタ ト短調Wq.51-6(C.P.E.バッハ)
8.ソナタ ニ短調Wq.51-4(C.P.E.バッハ)
9.ソナタ ロ短調/嬰へ短調Wq.63-4(C.P.E.バッハ)

なお、5月のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンのバッハ特集ですが、プログラムを見るとクラヴィコードでBWV996が入っていた。連休の前半は義理の母の介護等で郷里仙台に帰ることになっていて、最終日ならと思っていたら、ほとんどの演奏会は満席状態。まあ、他の機会にトライしようかと。

・・・ということで。