この年になってビジネス書を読むことになるとは思わなかった。
ビジネス書はつまらないというかいいかげんという先入観があり(ベストセラーになった本は、当時の成功した企業をモデルに書いてあるのですが、その後、左前になった会社が多い・・・らしい)、会社に入って以来、一度もその手のコーナーに行ったことが無い(というとうそになりますが・・・)。そんな感じです。なお、最近「読んでいる」ビジネス書といっても、経営書ではなく企業文化といったやつです。

で、首記の話。

J.S.バッハが好きといっても人それぞれと思う。
オルガン曲、教会カンタータ、無伴奏のソロ曲、チェンバロ等、管弦楽、そしてリュートいろいろある。私の場合、J.S.バッハは高校時代のギターから入ったのですが、実はいまだにJ.S.バッハの全体が見えない。それで、下記のようなことを(気楽に)やっています。どこが面白いか・・・。というと、面白いのです。

①J.S.バッハの作品全曲を(気長に)聞く
②図書館を含め手に入るJ.S.バッハの本を読む
③J.S.バッハの背景となる中世の歴史を調べる
④当時のヨーロッパの事情を知る
⑤J.S.バッハの生い立ちをなぞる
⑥キリスト教を知る


それやこれやで、なんとなくその輪郭が見えてきつつあると思っているのですが、上記のアプローチで欠けていることがある。J.S.バッハ自身の「音楽」と「思想」です。
この参考となる「論文」らしきものをHPで発見したので、先週の出張先で読みました。そして、自分の理解がまだまだであり、バッハははるか遠くにあるのが判った。と同時に、この「神秘主義」が、シャーマニズム的多神教的宗教観を持つ私の琴線にふれるのではないかとも思う。

●「J.S.バッハの信仰とキリスト教神秘主義」津田能人
西部戦線異状なし-論文著者の経歴
武蔵野音楽大学オルガン科に入学し、秋本道雄氏に師事。同大学卒業後、ドイツ政府給費留学生(DAAD)として国立ケルン音楽大学に入学し、ペーター・ノイマン氏に師事。同志社大教会オルガニスト。
この方の演奏は、同志社大のHPから聞くことができる。何曲か聴かせて頂いたが、教会で聞くともっと素晴らしいと思う。
構成
はじめに:本題の意味
1.バッハの音楽言語
2.バッハの宗教環境
3.バッハとルター、ドイツ神秘主義
4.バッハの作品の中に見られる神秘主義的音楽言語法

覚書(抜き書き)
はじめに:本題の意味
○多くの音楽学者は、バッハの信仰はルター派正統主義と主張する。勿論そうだが、両親や兄弟の別れを小さいころに経験したバッハの生涯の中に、ドイツ神秘主義が通低する特別な神経験があった(これが、著者津田さんの仮説)。
1.バッハの音楽言語
○バッハび音楽言語の究明は、音楽学者、美学者の暇つぶしではなく、バッハを演奏する音楽家にとって必須の勤めである。モティーフの意味を理解しないと、楽曲を正しいテンポや正しい強勢法で再現することは不可能になる。そして、バッハの音楽言語を把握するには、彼の信仰を理解することが必要である。
○前記の考えは、バッハが(まじめな)敬虔なルター派プロテスタントだった場合に正論となる(「そうでもなかった」という話もある)。その行き着くところは「クリスチャンでなければバッハは弾けない」となると思う。「そんなのどうでも良い」のか「よくない」のか・・・。少なくともバッハの信じた宗教には敬意を払おうと思う。なんせ、私はバッハによって音楽を理解しようと思っているので。
2.バッハの宗教環境
○ここでは、宗教環境という切り口で、ミュールハウゼン(1707年-1708年)、ヴァイマール(1709年~1717年)、ケーテン時代(1717年-1723年)、ライプツィッヒ(1723年-1750年)が書かれている。
○バッハの怒りやすさと頑固さは弁護の余地も美化の余地もない。いつも手遅れになってから、自分の権利に思い至っては、独善的に突進し、些細なことも大きないざこざにしてしまう。しかし、彼は正直で曲がったことはできない人間であった。
3.バッハとルター、ドイツ神秘主義
○シュバイツアー(1875年-1965年)は「結局のところ、ルター派正統信仰もこの楽匠の本当の宗教ではなかった。彼の本当の宗教は神秘主義だ。バッハのもっとも内奥の本質に従えば、彼はドイツ神秘主義の一現象である」と言っている。
○著者津田さんは「この神秘主義とは、シャーマニズム的魔術的な神秘主義ではなく、キリスト教的神秘主義だ」とか「(キリスト教的神秘主義とは)神に対する直接的神秘主義ではなく、神の子キリストとの神秘的な交わりによって媒介される現実」とか言っている。キリスト教ではない私には、その真意は想像するしかない。
○Wikipediaでは「神秘主義とは知性による以前に、心によって至高なる存在を知ること」と書いてある。私にとって、キリスト教神秘主義を理解するのは難しくとも、このアプローチが「音楽」に通じるのではないかと想像できる・・・。とりあえず、これ以上の安易な解釈は差し控えたい。
4.バッハの作品の中に見られる神秘主義的音楽言語法
疲れたので省略。

・・・ということで。
でも、この論文、結構参考になった。また、津田さんと言う人を知ることができ、バッハ演奏に対するアプローチの一つを知ることができたのは良かった。