昨日(5/4)郷里仙台からやっと帰ってきた。
5/2は高速道路史上特異な日になるのではないか。私の場合、東京-仙台約360kmで11時間かかった。想定外でした。私の考えが甘かった。ただ、時計汗は使ったが、お金が浮いた。なお、浮いたお金はすべて(介護で苦労している)義理の弟に渡した。
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昨日の帰途車の中で、NHKFMで「ラ・フォル・ジュルネ」を聞いた。たしかにこれは「お祭り」だとおもうし、この企画が成功しているのはすばらしいと思う。なお、いちばんつまらなかったのが 村治佳織のギター。自分のことを棚にあげて言えば(音楽が無く)つまらない。あと10年ぐらいは待とうかと。今の音楽レーベルの企画が悪いのではないか。もっと地道にやってほしい。が、儲けるにはそうするしかないのかも知れないが・・・。

で、首記の本です。
音楽の本ではないが「人間」の本ではあるので、一応、私の趣味の範疇に入れておきます。

●企業文化―生き残りの指針/エドガー・シャイン/白桃書房
この本の著者シャインさんは米国の経営学の学者。彼は第9章の「結び」で「文化の視点を獲得するともっと謙虚になれる。その謙虚さから最良の知恵を身につける事が出来る。」と言っている。安易な「(企業)文化論」を戒めているようにも思えるし、その一方、「私の本を読めば大丈夫」という「悪魔のささやき」と見ることもできる。彼はリーダーシップの本なども出している(その道では)有名な人らしい。この手の本は以前ならまず読まなかったが、この本を読んでみて「(著者は)まじめな人」であり、良い本と思う。

著者エドガー.H.シャインの経歴
1928年生まれ。シカゴ大学学士号、スタンフォード大学社会心理学修士号、ハーバード大学社会心理学博士号取得。現在MITの大学院経営学名誉教授。朝鮮戦争の捕虜の洗脳の研究に従事。変な研究が発端でも、それを徹底すれば学問になるということだろう。

本の構成と簡単な覚書
以下は私の「覚書」。熟読して書いているわけではないので、いいかげんな理解もあるのであしからず。
第1章「企業文化はなぜ重要なのか」
・文化レベルの理解不足で失敗した事例がいくつか紹介されている。
・この本のキィワードの一つは”unlearning(学習棄却)”。成功体験が次の失敗を引き起こすということ。「変容」するにはunlerningが必要と、繰り返し説いている。
・個人の行動を説明するには、所属するグループの文化(サブカルチャー)まで探求しなければならない。
第2章「企業文化とはいったい何か」
・文化を理解しようとして単純化するのが最も危険な罠である。重要な側面を見落とす。文化は多層構造を持つ複雑な概念だ。これも繰り返し説いている。
・文化は3段階のレベル「人工物(artifacts)-標榜される価値(values)-背後に潜む基本的仮定(assumption)」を持つ。大事なのが最下層の「学習され共有化された暗黙の仮定」。「仮定」とは、その会社で使われる本音の発想法のこと。
・誤解を承知で言えば「安全最優先」といいながら「利益最優先」を目指すという「建前と本音」文化が想像される。私は、(難しいと思うが)両者は適正であれば相反しないと考える。
・魚が水を語れないのと同じように、組織のメンバーは自らの文化を説明できない。文化の最下層の「仮定」に新しい価値が(本当に)適合しないと、なにをやっても効果を発揮しない。前記の「建前と本音」文化では、効果は得られないということかと。
第3章「企業文化は何を基に築かれるか」、第4章「企業文化はどうすればアセスメントできるか」、第5章「スタートアップ企業における文化の創造、進化、変化」
・文化の構造を理解せず改革に着手し失敗した事例を挙げ、文化を理解するための観点が長々と書いてある。その方法を「実践的含意」としてまとめている。ここらは「ハウツー」物としても読める。
・著者が何度も言っているのは、文化は複雑な構造を持つのだから、簡略化せず多方面から地道に取り組まないと理解できない(ということ)。その手段は長くなるので省略。
第6章「変容-文化を学習棄却し再学習する」
・”transformation”を「変容」と訳している。最近トランスフォーマーという映画があるのでイメージしやすい。
・組織が変わるためには、"survival anxiety"(生き残れるかの不安)>"lerning anxiety"(学習する不安)となる必要がある(らしい)。そして"unlearning"(学習棄却)が必要だ(と言っている)。
第7章「成熟企業における企業文化の動態」
・成熟企業に対する「変容」について述べている。
第8章「文化が出会う時」
・2つの会社が合併するような場合につぃて分析している。
第9章「文化を真剣に考えるリーダーにとっての文化的現実」
・「組織文化の管理」を考えるとき、文化の深遠と強大さを十分認識しなければならない。
・文化とは、組織が対外的課題をこなし、内部に対処するなかで獲得してきた集団内で共有された暗黙の仮定。だから、(意図的に)新しい文化を「創る」ことはできない(つまり「結果によってのみ文化は創られる」ということか)。
・文化を表面的だけに理解することは、文化を全く理解しないことと同じくらい危険である。
・文化変革のためには「自ら文化の中で境界に身を置くこと」。
・新しいことを学習するには"unlearning"が必要。それには痛みと抵抗が伴う。
・なお、この本で明確に書いてないことがある。「文化はほうっとくと劣化する」ということ。ただ、「劣化防止」を"unlearning"と「transformation"という言葉で言っていて、同じ事なのかもしれない。
原著者 日本語版へのあとがき
「日本の管理者は、米国企業の仮定や価値観を取り入れるべきではない。日本の文脈のなかで分析してほしい」と言っている。そのとおりと思うが、「日本の文脈」とはなんだろうか。なお、米国文化を押し売りしないところは、さすが「企業文化」の著者と思う。
監訳者 解説(これが長い)

著者は、繰り返し「文化」の複雑さ、強固さを説いている。逆に言えば、「文化」は強固な構造を持っているので、容易に変わるものではなく、安易に変えようとしてはいけないということだろう。著者は、ほんとうに必要な時(のみ)に、「文化」を深くアセスメントし「変容」させるものと言っている。

前記で、私が読み飛ばし省略したところがこの本のメインと思う。要点のみ理解し判ったような気になることを、著者は戒めている。この問題にかかわる人は、そこを読み理解する必要があるだろう。
・・・ということで。