マネー・ショート華麗なる大逆転 | トンデモ・シネマの開祖

トンデモ・シネマの開祖

トンデモ・シネマな日々を綴る

マネー・ショート華麗なる大逆転

アメリカで起きた『サブプライム住宅ローン危機』事件をいち早く予期して、
巨額の利益を上げた利益を上げた四人を中心に描く実話の映画化。

タイトルからして軽ーい感じの詐欺コメディかと思ってみたら、大間違い。
超真剣な金融トレーダー達の物語。

当初は、銀行の債務が気になり、調べていくうちに「空売り」で大儲けになると気づく。
しかし、大手銀行が倒産するというシナリオに、投資家や銀行家から大反対され、罵られ、「ありえない」と馬鹿にされる金融トレーダー達。
やがて、悪夢が現実化し、馬鹿にされていた金融トレーダー達は勝利する。
それは同時に多くの一般層が住宅ローンにより家を失う瞬間でもある。
たちまちアメリカの経済は破綻危機になった瞬間でもある。
銀行の悪事を暴くと同時に不幸になる人々、
しかし、失敗したはずの銀行家、張本人たちは、逃げ延びる。

映画は社会の矛盾を克明に尚且つ、分かり易く描いてくれている。

前に『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』
というアレックス・ギブニー監督のドキュメンタリーがあったが、
この手法によく似ているが、こちらは再現映画。

各俳優が120%の演技力で、本来なら間延びしても良いような社会派ドラマを、パワフルなドラマとして描く。

 

確かに、本来、内容は少し難しいが、子供でもわかるように、説明してくれるのも親切。
ただ、実話なので、派手に大逆転というわけではない。
静かに、時には悲しく、大人達は大逆転劇を演じる。

久々に観た大人の映画。
こういう映画が昔は多かったが、今は少なくなった。
実際、この中でも若者を助けるブラッド・ピット扮する資産家がいるが、

彼が喜ぶ二人の若者を叱咤するシーンが印象的だ。


「お前らがふざけた事をして、喜んでいるうちに、どれだけの人が苦しむ事になるのか、わかのるか?」

この台詞は映画の後半のテーマだとも言える。
脚本の構成も含め、ベテラン監督アダム・マッケイの腕がよくわかる作品。

先日の『ドント・ルック・アップ』もそうだが、現代の大人というものの幼稚さ、利己主義が浮き彫りにさせるが、
アダム・マッケイは必ずまともな大人もいる事を描いている。

彼のヒューマニズムには本当に頭が下がる。