薄桜鬼小説【土方】パート1 | べちー子’s駄文保管庫

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徒然なるままに
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なげえ!調子にのった結果がこれだよ!
薄桜鬼SSLの小説です。
若干配役違いますが大方一緒です。

千鶴・・・剣道部マネージャー
土方・・・剣道部顧問・教師
平助・・・剣道部・幼馴染
沖田・・・剣道部部長
斎藤・・・剣道部副部長・風紀委員長
千姫・・・親友
南雲・・・校長
山南・・・教頭

長いですが、覚悟のある方どんぞ


薄桜鬼小説ぐるっぽつくりました。
よかったら参加してください。




****************

「やっべえ、寝過ごしたー!」

「もうっ平助君!またゲームで夜更かししたんでしょ!?」

私は平助君に手をひっぱられ朝の通学路を走っていた。
平助君は朝ごはんを食べる暇もなかったらしく食パンを口にくわえている。
私の幼馴染で同じ剣道部に所属する、といっても私はマネージャーだけど。

「セーブポイントが見つかんなくてさ!」

「言い訳になってないよ」

「おはようふたりとも」

走る私達の後ろから聞き覚えのある声がする。
沖田先輩だ。
一生懸命走っている私達の後ろを息も乱さずついてきている。
先輩は剣道部部長。全国大会で何回も優勝経験のある実力者。
でも普段はそんな素振りを全くみせない。

「沖田先輩・・・おはようございますっ」

「げっ総司?!もうそんな時間かよ!」

「人の顔見てその反応は傷つくなぁ」

くすくすと余裕の沖田先輩。あせっている様子は全くない。

「だってお前がいるって事はオレらも遅刻決定じゃん」

「大丈夫だよいつもより5分早く出たから」

沖田先輩が遅刻したところを見たことがない。
ということはいつもこの時間でも間に合っているということだ。
俊足なんだなぁ。なんて事をぼんやり考えていると平助君が私の手を一層強く引っ張る。

「走るぞ!」


チャイムが鳴り始める中、私達は校門にたどり着いた。

「よっしゃ!ゴール!」

「残念だったな・・・少しばかり遅かったようだ」

物静かなたたずまい。
風紀委員と書かれた腕章を袖につけた斎藤先輩が名簿を手にこちらを見据えていた。

「3秒ほどオーバーだ」

「たった3秒?!」

平助君と声がかぶる。

「3秒といえども遅刻は遅刻。校則第8条により失点2だ」

「なんだよそれ!横暴だっつの!」

「まぁ別に僕はそれでもいいけど。失点なんて無視すればいいしさ」

喚く平助君とは対象的にゆったりと話す沖田先輩

「それぐらいにしとけ」

斎藤先輩の後ろから低い声がした。

「斎藤。3秒ぐらい大目に見てやれ」

切れ長の瞳。漆黒の髪。道行く人が振り返るほどの丹精な顔立ち。
美々しいとはこういう人をいうのだろう。
黒いスーツを着た土方先生。女子生徒にも人気が高い。
剣道部顧問で鬼のようなしごきを知らなければ私もその女子生徒の一人だっただろう。

「土方先生がそうおっしゃるのなら」

斎藤先輩は先生に丁寧にお辞儀をして門を開けてくれた。

「てめえらも、次はもっと余裕を持って来い。あと、早くしねえと朝礼に遅れるぞ」

そういって土方先生は校舎に歩いていってしまった。

*********

講堂に入り私達は各クラスの列に並ぶ。
簡単な情報伝達の後、南雲校長が壇上に上がった。

「最近この学校の風紀が乱れています。実に嘆かわしいことです。
今週末に花火大会があります。
毎年少数のおろか者のせいで学校の品格に傷がつきます。
よって、今年は花火大会に行くのを禁止します」

生徒にどよめきが起きる。

「静粛に。破ったものは停学に処します。
学生の本分は勉強。
くだらない娯楽にうつつを抜かす暇があるなら英単語のひとつでも覚えなさい。
以上。解散」

「横暴だ」「楽しみにしてたのにひどい」など生徒の間でも文句が飛び交う。

「楽しみにしてたのにな・・・」

ぽそりとつぶやくと後ろから「ちーづる!」と抱きしめられた。
同じクラスの千姫が私の肩から顔をのぞかせた。

「花火大会、行くでしょ?」

「え?でも今禁止って・・・」

「守るわけないじゃない。
しかも花火大会って何千人って人がくるのよ。行ってもばれないわよ
ね、行くでしょ?」

千姫の押しに負けて私は花火大会に行くことになってしまった。


********

花火大会当日。
私は船姫の部屋で千姫のお母さんに浴衣を着せてもらっていた。

「浴衣って久しぶりだ~」

髪を結ってもらって私は鏡の前で自分の出で立ちを確認していた。
父子家庭で育った私は着物はおろか浴衣を着た機会も数えるほどしかない。
久しぶりにきた浴衣に私はうれしくてしょうがなかった。

「おーい。迎えにきたぞー」

窓の外で声がする。
窓から覗くと平助君を含む数人のクラスメートがいた。

「いま出るわねー」

千姫が片手を挙げて返事をして私達は外にでた。


**********

花火大会会場はたくさんの人でごった返していた。
少し気を抜くとはぐれそうだった。
慣れない下駄で鼻緒部分が靴擦れのようになる。

「千鶴、はぐれんなよ」

平助君が手をつないでくれ、
なんとかクラスメートが取ってくれていた場所にたどり着いた。

夜空に浮かぶ花火は実に見事で幻想的だった。
花火も終盤にさしかかった時、私はトイレに席を立った。

「すごい人だなぁ」

ごった返した人ごみにもまれながらもなんとか前に進む。
やっとの思いでトイレを済ませて外に出ると足元に激痛が走った。

「いったぁ・・・」

鼻緒部分が赤くはれ上がっている。

---慣れないことはするもんじゃないなぁ

「大丈夫か?」

屈んで鼻緒をゆるめようとしていると頭上から話しかけられた。
見上げて私は凍りついた。

「・・・・土方先生!」

「おまえ!・・・雪村!」

どうしよう。見つかってしまった・・・。
固まって動けない私を土方先生は物陰に移動させた。
直後にまた別の声がする

「土方先生?うちの生徒はいましたか?」

「ああ、山南教頭先生か。いや、いなかったぜ」

「そうですか。それではそろそろ切り上げますか」

「そうだな。じゃあ俺はこのまま帰らしてもらうぜ」

山南教頭は「わかりました」と答えるとそのまま行ってしまったようだ。
私、もしかしてかばってもらったのかな。
しばらくすると隠れていた物陰に土方先生が来た。
どうしよう、やっぱりすごく怒ってる・・・。

「お前、何やってんだ」

「えっ・・あのっ・・・」

「花火大会は禁止って言われただろ」

「はい・・・すいません・・・」

はぁーっとあきらめたようにため息をつくと「来い」と私の腕をつかんだ。
歩き出そうとして痛みに足がもつれる。

「どうした」

「あの・・・足が」

「ったく」

私の足を見てすぐに状況を理解したのだろう。
つかんでいた腕を放してふわりと私を抱き上げた。

「わっ!あ・・あの?!」

「おとなしくしてろ」

あわてる私の事なんか眼中になくスタスタと歩き出してしまった。
男性に抱き上げられるなんて初めての経験だ。
人ごみの中をすいすいと抜け、
駐車場まで来ると停まっている車の助手席側に降ろされた。

「乗れ」

おずおずと助手席に乗り込むと先生は運転席に座って車を発進させた。

「お前の家はどこだ」

「えと、商店街のはずれにある雪村医院です」

「わかった」

「・・・・あの・・なんでかばってくれたんですか?」

沈黙が流れる。
聞いちゃだめだったのかな。そもそも話しかけるべきではなかったのかも・・・。

「学生だっつっても、たまには息抜きしてえだろ」

そういってやさしい笑顔をむけてくれた。
もしかしたら先生はすごくやさしい人なのかもしれない。
先生の意外な一面をみたせいか私の鼓動が少し高鳴った。
いつも冷たい表情で回りを寄せ付けない迫力なのに、すこし先生に近づけた気がした。
先生のことがもっと知りたい。
しかし、車はすぐに家についてしまった。

「ありがとうございました」

助手席を降りて先生にお辞儀をする。

「あんまり羽目外すんじゃねえぞ」

私の頭を軽くこずくとくしゃっと前髪をなでてから先生は帰っていってしまった。


***********

次の日、私は先生にお礼を言うために部室に早めにやってきた。

「お礼を言うためであって、話がしたいわけじゃないんであって・・・」

なぜか自分に言い訳をしながらドアをあける。
部室には案の定先生一人だけだった。
部屋の隅に置いてある机で書き物をしている。

「おう、早いな」

先生はちらりとこちらを見たがすぐに手元の書類に視線を落としてしまった。

「あ、あの、昨日は送って下さってありがとうございました」

すると先生はこちらを向いた。
とても冷たい表情で。

「お前がやったことは校則違反だ。今後は二度とない」

あの笑顔を期待していたわけじゃない。
でも、何かしらの会話ができるんじゃないかと期待してた。
冷たく刺すような物言いに私は何もいえなくなってしまった。

「用がそれだけなら、さっさと部活の準備しろ」

「・・・はい」

近づけた気がしたのは私だけだったのかな・・・。
私の心は真っ暗に塗られてしまったように落ち込んだ。