薄桜鬼小説【土方】パート6 | べちー子’s駄文保管庫

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徒然なるままに
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車で5分ほどの所に先生の家はあった。
10階建てのデザイナーズマンション最上階。
先生は部屋の鍵を開けるとさっさと中に入ってしまい、
私は玄関でどうしていいかわからず置いてきぼりになった。

「何してんだ、さっさと入れ」

「あ、はい。おじゃまします」

出されたスリッパを履いて恐縮しながら先生の後に続いた。
フローリングのリビングは黒の家具で統一され、実に先生らしい。

「こっちだ」

先生に促されて入った部屋は大きな窓にブラウンのフローリング。
そして、真ん中にベッドがあった。

「あ。あの。えっと・・・」

急展開すぎて思考回路がパンク寸前になる。
ソファか簡易的な布団で寝ると考えていた私に
先生の寝室のベッドが与えるインパクトは大きかった。

「ここで寝ろ。そばにいるから」

「わ、私。リビングのソファで十分です。あちらで寝ます」

「何言ってんだ、身体痛めたら元も子もないだろ」

「で、でも・・・」

「いいから、さっさと寝ろ」

「で・・・でも・・・きゃっ!」

押し問答に業を煮やした先生が私の肩に手をかけた。
身体がふわりと浮き上がる。
先生に抱き上げられて私はベッドの上に寝かされた。
少し乱暴に布団を掛けられ、くしゃっと前髪をなでられた。

「時間になったら起こしてやるから、気にせず寝ろ」

「・・・はい」

よしっと先生はつぶやくと、
小さな折りたたみ椅子を持ってきて傍らに座り、本を片手に読み始めた。
不規則に聞こえるパラリという紙の音が私をだんだん夢のなかへいざなう。
(先生のにおいがする)
枕に顔をうずめながら私は眠りについた。

*************

「ゆ・・む・ら・・・・ゆき・・・村」

誰かが私を呼んでる。
でも、今すごく気持ちいい・・・。
この声、誰かの声に似てるなぁ・・・・。
そうだ土方先生に似てるんだぁ・・・。

「ゆきむら・・・時間だ・・・」

時間?何の?
もう少しこのままでいたいなぁ

「んー。後5分・・・」

「後5分寝かしてやりてえが、家に帰る時間だ」

家に帰る・・・?
そういえば先生の家で寝てるんだっけ・・・
・・・・・
・・・・・・・!

ガバッと跳ね起きた。

「す、すいません!寝すぎました」

「その様子ならよく眠れたみてえだな」

ほんとだ。あの夢見なかった・・・。
毎晩のように見ていた悪夢。
常に浅い眠りでぐっすりと眠れたことはここ最近なかった。

「明日は土曜だな。勉強する気があんなら見てやるが・・・」

「お願いします!」

自分の想像以上に大きな声が出てしまい、あっと口を押さえた。
先生はしょうがねえなぁといいながらも顔は笑っていた。

「朝10時にお前の家まで迎えにいってやる。勉強道具忘れんなよ」

「はい、よろしくお願いします」

先生は椅子に掛けてあった上着を羽織ると、車のキーを手にもった。

「お前の家に送るから行くぞ」

私は鞄を持つと先生と一緒にマンションの玄関ホールに向かった。
その様子をカメラのファインダーがのぞいていることを私達は知る由もなかった。