レディ“L”の肖像⑤ 『空手、型』 | A300yamadaのブログ

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これはこの記事の続きです。

 

その日、それまでの出演者の撮影の列の長さを見ていて、私はいつになく順調だと思っていた。むしろ客の少なさ、列の短さが気になるほどで、2ショット禁止、パンツ着用が貢献しているのかもしれない。“L”の最初の撮影タイムになるまで、特段、撮影依頼を簡単に済ませる配慮は必要ないと判断できた。

1回目のトリ、“L”のベッドが終わり、私は彼女の撮影の列に並んだ。

今までのポラで、列の長さで依頼に配慮したことはないはずだがこの日は意識した。私は関係をこれ以上悪化させず、何かしら改善につながるような手掛かりをずっと探していた。ポーズ依頼では彼女との距離感を意識しつつも、“L”らしいかっこいいポーズの写真を撮りたいと考えた。それが私の“L”ファンとしての証しだと思ったのである。

そのポーズは、そのとき私をとらえていた空手の「型」の映像から考えた。私はよく自分がパソコンで作ったポーズ絵を踊り子さんに見せてポーズを頼むが、この日はそのポーズをできるだけ正確に指示したくて、型の体の決め方を3枚の絵で分解して説明するという手の込んだ依頼図を作った。自分でやるとしたらこういう順序で姿勢を固めるという発想だった。ただ足を開き右手を構え左手を腰に置くだけにみえる型だがわかりにくいだろう。1回では思い通りにいかないだろうから、1回目をフィードバックにして2回目も同じポーズを頼もうと考え、そう説明しようとした。同じ回でまったく同じポーズというのは、今までどの踊り子にもやったことはないが、策に溺れた発想だった。デリケートな状況への気遣いがなさ過ぎたと思う。ただ、『迷惑行為』の記事取り下げすら実現しない中、私には焦りがあったのだ。

L”は大胆な網タイツのすがたで登場した。気のせいか劇場Nでは、パンツを脱いで撮れなくなってからサービスを意識して衣装が露出過多に振れていると思う。私は順番が来てまず2枚分2千円を渡し、彼女が用紙の記入箇所を指示すると、この劇場でも始めたデジカメ写真のやり方で、申し込み用紙に名前を書く。1枚にはサイン依頼の○を付ける。

私は用意していた依頼ポーズを見せた。私の説明図の意図を理解できず、「どのポーズですか」という誤解した質問をしてきた。

 L”の反応は焦っているようで、こう言った。「混んできたので、簡単なポーズにしてください」

少しでも早く私への応対を済ませようとしていたのか、今までどんな時にもだれからも言われたことのない、初めての要請だった。ただし混んでいるからというのはともかく、依頼ポーズが難しいと言われたことは23人から言われたことがあるので、空手のポーズということでことさらに引かれる必然性はあった。考えてみると説明図が必要と考えた時点でそれは難しいのだ。私はなんとかなだめてまず1枚撮った。彼女はそれで終わりにしようとするのを(すでに2千円払っているし)もう1枚というと彼女が取ったポーズは投げやりなもので、依頼に沿ったものとは到底言えなかった。後で見るとさすが笑顔だけは怠っていなかったが。

劇場Nでは、どの写真も必ずテケツ(窓口スタッフ)から受け取らなければならない。サインとともに書かれるメッセージを先にスタッフが読むことは可能だと思うが、受け取った際に何事もなかった。しかし私には撮影時の感触から言っても、ろくなことは書いていないだろうという直感はすでにあったので、受け取りもぎりぎりまで控えたし、3回目の“L”のポラタイムの間に写真を受け取った私は、劇場内で取り出してコメントも読まなかったが、“L”の「圧」に押されていた。その後のオープンショー、出口が近いベンチシートで彼女の視線が走るのを感じつつ見納めにして、劇場を退出した。