会計士としては一番身近ともいえる、この論点から少し入ってみたい。


<ディスクロージャー制度>
先日、有価証券報告書の読み込み(?)結果を発表した際に、とにかく具体的な情報が不足しているということを書いた。

ただ、私も開示書類のチェックなどをしていると感じるのだが、具体的な情報を記載せよという規定は、意外に欠如しているのである。監査人としては「このへんのPL科目の説明は注記で打ってくださいよ」とお願いしても、経理部長は「別にいいよ。規定なんて無いっしょ?投資家に探られたくねーから、じゃ書かねーよ」とくるのである。そうなると、いくら「フェアディスクロージャー」や「道義的IR」を高らかに謳っても、会社・経理サイドがこのような開示姿勢であれば、それを強制的に正す術は少なくても監査人側には無い。

フェアなディスクロージャーがボランティア程度に過ぎないのであれば、超優良会社のみがIR大賞などで大いに賛美される一方で、大多数の会社は自社に不利な情報をボランティア的に開示することはまず望めない。そんな情報開示を行う会社に誰が投資したいと思うか?情報の非対称性が投資コストの増加となるのは金融理論の常識であり、いわゆるレモンの法則である。

開示すべき情報を開示しなければいけない、そんな常識的な話が通じるようでないと、情報非開示による犠牲者は増えるだろう(今でもたくさんいるが)。昔ソニーのセグメント開示がイマイチだとSECから罰金を食らっていたが、そんなペナルティや統制が日本にも無いと、監査人の発起だけでは無理難題である。この点について、前途はかなり険しい。