最近仕事と勉強が忙しくて、なかなかブログ更新に力が及んでいないが、引き続き連続シリーズにて。



③部署配属・異動について

・当初の所属部署はどう希望すべきか

法人によって違いがあると思うが、各法人の主たる部門構成は以下の通りであろうか。



 ◆国内監査部(中身は非常に多岐に分割されている)

 ◆金融部

 ◆国際部

 ◆IPO部(非監査サービス含む)

 ◆公的セクター部

 ◆システム監査部

 ◆IFRSアドバイザリー部

 ◆フィナンシャルアドバイザリー部(FAS・TAS)


 ◆税務

※システム・FASは別法人の場合が多いと思われるが、監査法人から関連会社への出向や移籍は普通にあるので、並列に考えてもよいだろう。税務だけは、単なる会計士だとちょっと壁がある気がするので、以下では触れない。


 さて、みなさんはどの部署の配属を希望するだろうか。それぞれ魅力的な点があるし、一長一短、なかなか決めづらいことだろう。なんとなくカッコいいのは国際部とか金融部とかで、FASも行ってみたいがド新人は殆ど採用無いようだから無理だろうし、国内監査部ってちょっとドメドメだし雰囲気は前近代的で時代錯誤感あるよね、みたいな印象かもしれない。


 どこがいいかに答えはないが、アドバイスとしては、以下の要素も考えてみたらいかがだろうか。


 ◆最近の監査不況やリストラで、大きく人数が減少している部門ではないか

 ◆最近のクライアント数の増減 (経済環境、法人ごとの特性、部門別の特性)

 ◆関与できる会社数・規模(最低5社程度は関与できるか、超大型ジョブに張り付けでないか)

 ◆培える能力 (=外部で活躍するために必要なスキルセットをイメージ)

 ◆職務経歴書におけるアピール性



 クライアント数については、主力3部門(国内・金融・国際)は減少してるし、今後もその傾向は変わらないだろう。上場会社は減る一方、金融機関も元気なく経営統合や合併の嵐、外資系の日本撤退やSEC登録企業の減少、などいずれも厳しい情勢。だが、特に金融部や国際部は規模が相対的に小さく、一つの大口顧客の変動の影響が巨大のため、部門運営は非常に難しいと聞こえてくる。


 金融部や国際部を希望されるような場合、勝ち組の法人であることが最低条件となる。逆に、大口顧客が逃げそうな法人は控えたほうがいい。仮の仮の話だが、オリンパスで責任追及が苛烈になり、住友系の金融機関がA監査法人から引いたら、A監査法人の金融部員の仕事は無くなる、とか(まぁ、この線は大手3社が制裁さえそうなので、ありえないだろうが)。


 色々書いてきたが、私個人的に最も重要と考えているのは、その部門内に優秀な人が多いかどうか、である。いくら優秀でも人間は弱いので、えてして簡単な方向になびいてしまうが、優秀な上司や同期が数多くいれば、その影響は極めてプラスな方向に出ると感じる。そして、相対的に優秀な人が多いと感じるのは金融部や国際部である。それは、これらの部署が、(本当にやっている仕事が魅力的かどうかは知らないが)花形的な香りがして、優秀な若手を吸い寄せる傾向にあるからである。


 たぶん国際部はどの法人でもエライ激戦区になっていることだろう。



・部門異動はできるのか

 意外でないと思うが、法人内の部門間異動は硬直的と言わざるをえない。というか、どんな会社でもそう簡単にほいほい異動させてもらえるわけではないと思う。だから、最初に入る部門は重要である。ただ、絶対できないかというと、そうではない。事実、私も監査法人では希望により部門異動を果たしている。


 仮に希望の部門に配属されなくても腐らず前向きに頑張って欲しい。腐らずに仕事をして成果を出し、法人にとって重要な人材という認識をされれば、「辞められるくらいなら、希望を認めたろ」となりがちである。


 


 

様々なブロガーが語られているのを拝見して、私もちょっと乗り遅れそうなので、6日にリリースされた報告書について、通読してみて気になったことを数点コメントしていきたい。


さすがにスキームものの詳細な理解は時間をかけて読み込まないとできないボリュームである。スキーム図はエンロンの時に出回っていたSPC連関図やライブドア事件のときを彷彿させる、非常に複雑なものである。


①委員会構成

まずは人数。第三者委員会は弁護士・会計士の6名だが、その補助者の数がすごい。弁護士で20人程度、会計士で40人程度との記載がある。作業の量や質、密度を考えると軽く数億~十億の調査費用になっていると思われる。含み損失の後始末としてのスキーム維持費用や関係者労務費等々を考えると、おいおい数字は出てくるが千億単位の損失(当初の純粋な投資損失を除いて)が発生することになる。


ちなみに会計財務周りの補助を行ったのはトーマツ系。当然あずさと新日本系は無理なので、PwC系とコンペになったのかと思われるが、東電に続いて今年の2大案件目を受注していった(採算は知らないが)。来期ぐらいからの監査業務の受注も見えているかと思うが、大リストラ後なので彼らにしてみれば嬉しい特需だろう。


②第三の会社

軽いネタから。


いきなり、報告書の別紙20 に目を移してもらいたい。アルティス等3社の株主構成推移であり、オリンパス及びGC(グローバルカンパニーというオリンパスの息の掛かったファンド運営会社)が99%を占めるのだが、わずか0.5%程度がその他になっている。これは、群栄化学という上場化学メーカーの持分がそれである。どこですっぱ抜かれたか分からないが、会社側も11/14にリリースを出す羽目になっている。参考記事 を掲げておく。


単なる投資好き会社で、ちょっと手を出した程度であればいいのだが、真相は不明。そのうち追いかけてみたいが。



③井坂俊達 公認会計士

報告書の別紙11 に井坂案件がリストアップされている。世に算定書が絶賛公表されているアルティス以外にも数多くの価値を算定していらっしゃる。委員会で尋問されているようだが(報告書P92)、依頼者の言いなり人形になっていた姿が断罪されている。


この方の経歴はネットを検索すれば簡単に分かるのだが、あずさ監査法人・メリルリンチを経て独立されている方で、現在は40台前半の非常に優秀な方とお見受けする。オリンパスを食い物したアクシーズや外資系証券との絡みでこの方にもネットワークが張られて、独立会計士として業務を依頼されていたのだろうか。監査とは違うビジネスであるが、超大口顧客の意向を無視できなかったエンロンを彷彿とさせる、プロフェッショナルとしてしてはならない仕事だった。

②転職について

・転職すべきかどうか

 これははっきり言って人それぞれである。良い悪いは人それぞれだが、その評価項目となる要素を挙げるとすると、


 収入(転職後、将来性)

 ステータス・見栄

 労務環境と家族との関係

 仕事のやりがい

 ステップアップになるかどうか(必要なことを勉強できるか)



 というところだろうか。


 一昔前まで監査法人は、短期的には収入や労務環境という点では悪くなかったと思う。ただ、仕事のやりがいが分からなくなったり、クライアントサービスとしての矛盾に悩まされたり、仕事にも自分にも成長性が見出せない、など不満を持つ人は極めて多いのである。辞めてなくても、大いに不満を持っている人多数なのである。


 個人的には、監査法人とは教育機関・補修所の性質を濃厚に持っていると思っている。若いうちは、仕事の内容に対して過剰な給料をもらっているし、さらに勉強もさせてもらえる、中々良い教育機関だ。しかし、中堅になるにつれてバランスが取れるようになっていて、その余剰分を会社へ奉仕するような構造になっている。一部はパートナーになれるが、期待値としてはそう高いものではなかろう。


 このように監査法人を理解すると、期待値として、監査法人にとどまるという選択肢は魅力に乏しく感じる。あくまで期待値なので、飛びぬけて成功すれば監査法人にいても魅力度が突き抜けることもある。業界として、組織としてというややマクロ的な視点から競争分析すれば、魅力的な業界といえる材料は非常に少ない、ゆえに参入の魅力は高くないと結論付けられよう。


 なお、ここでは議論がややこしくなるため、資本市場対する責任や会計士としての職責などという高尚な点を捨象している。



・転職市場での競合

 先日、某監査法人が400人(最終的には600人とも700人ともいわれている)リストラがあった際に、転職市場に400人も殺到するから大変だ、的な議論があったが、それは現状を冷静に俯瞰すると安易な議論である。新日本が前年度に実施していたから、ということでもない。監査法人出身でイキのいい若手が好むような、金融関係やコンサルティング関係は、既に他業界とのバッティングが相当激しくなって干上がっているのだ。

 もちろん、監査法人出身者として優位性を築けるような仕事があればいいのだが、現実問題、それって結構少ないというのが実感である。よく言われる経理や税務だって、監査法人出身の会計士が即戦力で活躍できるかというと疑問である。では、会計士として優位性が築ける仕事ってなんだろうか?正直あまり思い浮かばない。

 だとすると、監査法人を卒業する会計士は、会計士としての優位性がさほど高く評価してくれないところに、他業界から来た優秀な人々と競合していくことになる。もちろん、例外もあるが、大部分はこう考えていいだろう。ポテンシャルやビジネスパーソンとしてどうゆう意識付けで仕事をしてきたのかが最も重要だと思う。


 アドバイスするとすれば、どこで何がしたいのかを良く考えながら、会計士とその業界外の人々に対してどう優位性を築いていくのかを明確に意識して勉強していって欲しい。漫然と、前期調書を繰り越す、上司の言うことに従ってレビューメモを潰す日々では、あとに何も残らないし、ましてや外から見たらそれは「退化」というものだ。下りのエスカレーターでスクワットしているような日々では、いつの間に下層に着いてつまずいてしまうことに例えられよう。


 水は低きに流れるが如し。社会は、自分という絶対的なモノサシではなく、世界との他人との相対的なモノサシで計られるのだ。

 

本日から何回かにわたって、監査人としての心構えを書いていきたい。目次は前回のエントリーをご参照。



①将来ビジョンについて

・パートナー会計士を目指すべきか

 弁護士事務所の場合、パートナー弁護士になるのが出世街道の王道であり、独立を強烈に志向する人を除いて誰しもが一直線に目指す道と聞く。でも監査法人は違う。(あまり言われないが)「パートナー会計士」になるのが王道かと言われると??である。

 優秀で野心がある若手弁護士と会計士がいたとして、前者はパートナーを目指すが、後者は目指さないのである。私なりに思う理由としては、フロアのそのへんに居座っている「パートナー」連中が


 大した技能も弁舌もなく

 外見も威厳もしょぼくれていて

 要は「終わった」感が充満しており

 実はそれほど大した給料をもらっていないことが明らかにされつつあり

 退職金もかなり目減りしている

 やっている仕事レベルが低く、却って監査の邪魔になっている様子もあり

 


 という状況であり、あまり魅力的でないのである。もっと魅力的でないのは、そのパートナーの座を狙うシニアマネージャー層のへいこら振り・下への強圧的指示命令系統であり、結構これにげんなりする若手多数。

 いずれ目指すことをやめるのがパートナーである。


・復活する、パートナー会計士への想い

 上記では、多くの優秀な若手はパートナーに憧れない様子を描写してきたが、実はパートナーへの憧れ(というか現実的目標)に回帰する瞬間があるのだ。それは、だいたいマネージャー昇格前後で、有力なパートナーに目をかけてもらっている時期だ。

 実は、彼らは若手の頃はパートナーになんかなりたくなく、外の世界に羽ばたいて活躍したいと思って頑張ってきた。でも、それが色々な理由で叶わなかったのだ。転職市場が悪いだの、上場インチャージが引継ぎできないだの、家族が止めるだの、等々。それを上回る最大の理由は、外で通用するスキルやマインドを形成できないまま、いい年になってしまったということだ。

 それでも法人内で認められれば、マネージャーに昇格して大規模クライアントに関与させてもらえる。そうか、おれ(私)は監査が向いているんだ、パートナーも評価してくれる、現在の給料(マネなら10百万前後)を上回る転職先を開拓するのは大変だ、と自分を納得させる。ではでは、パートナーを目指しますか、と原点回帰されるのがよくあるストーリーである。


 パートナーを目指す目指さないはまったくもって個人の自由である。私は最初から目指さなかっただけ。その選択に貴賎は無い。ただ、監査法人の内情なんて上記のようなものであることは知っておいてもらいたい。


 参考までに、私がパートナーについて書いたエントリをリンクしておく。

 ■無責任な有限責任監査法人のパートナー

 ■パートナーの適正数

会計士試験合格発表から半月が経ち、ぼちぼち法人からの内定が出ているという話を耳にする。この監査氷河期の時代、厳しい会計士試験と厳しい就職試験を突破された会計士の卵たちは、魔が差さない限り数年後には優秀な監査人になっていくことと思う。心から頑張ってくださいと言いたい。


また、残念ながら内定が決まらない合格者や、試験に不合格で撤退する人たちもその裏では何倍もの数でいるのは辛い事実である。その人たちにかけてあげられる言葉は少ないが、諦めた者の負けであり、同じ境遇からどれだけ早く次の行動に出られるかが次の競争で勝つポイントだと言いたい。


なにはともわれ、ここでは内定を無事もらった会計士の卵たちに対して、私なりのアドバイス的なものを書き残しておきたい。ブログ界では内定者を支援するビジネスが結構盛んなようだが、私はここでつらつら書くぐらいしかできないが、以下の項目について明日以降少しずつ書いていこうと思う。




①将来ビジョンについて

②転職について

③部署配属・異動について

④担当するクライアントについて

⑤クライアントリレーションについて

⑥パートナーやマネージャー達の生態系と頭脳について

⑦監査で求められる能力について

⑧スキル・勉強について

⑨修了考査について

⑩カネについて

監査をしていた頃、税務絡みは決まって現場最上位者がやることになっていた。別に若手がやってはいけないということはないのだが、税務、特に法人税等の計算や税効果の検討、連結税効果などは比較的監査・会計・会社のこともよく理解していないと厳しいので、現場の最上位者に近い人がやることになるのである。私も晩年は、それこそどの現場でも税金+αくらいを持ち場として、現場監督や会社折衝に精を出していた向きであった。


それはさておき消費税である。監査人にとって、消費税はあまり接触しない税目である。いや正確に言うと常に接触はするのだが、スルーするというか、適当に流せる存在なのである。幸か不幸か。


不動産業や特殊な業界で無い限り、課税売上割合が95%以上であるのが通常なので、会計システムで処理される仮払・仮受と(納付書で明確な)中間申告分を精算すれば、期末の未払(未収)消費税残高の出来上がりである。監査上は適当な分析的手続(企業秘密なので手法は明かせない)で期待値という「枠」に放り込む実務が散見されるが、上位者は何の興味も無いから完全スルーする。一応断っておくが、消費税科目への上位者(パートナー達)による興味の程度は、前払費用とかゴルフ会員権をも下回る程度で、資本金を若干上回る程度といっても過言ではない。


そんな消費税が今年度の法改正により、監査現場で熱くなるのではないかと勝手に外部から盛り上がっている。課税売上95%以上であっても課税売上5億円超の企業は、従来全額控除できていた仕入税額が控除できなくなり、あの勘定が登場してしまうのである。そう、控除対象外消費税額等がそれである。私は延べ100回程度は各企業の年度決算を見てきたと思うが、この勘定が出てくることは非常に稀であった。


しかし、今期からは一定以上の規模の会社であれば、ほぼ必ず出てくることになる。こうなると、かつての黄金時代を経験した分析的手続という生ぬるい手法は、通用しなくなる。監査人各位におかれては、消費税の細かい点を復習して、分析や詳細テストの質を高めて誤謬を未然に防いで欲しい。加えて注文したいのは、過去から設定されていたシステム上の区分もこれを機に検証されたい。昔、この設定が狂っていて過去の修正をしたという話も聞いたことがあり、監査人としても経理としても盲点が突かれたらしい。



最後に、多くの若手スタッフが開示チェック時に一様に発する「未払消費税等の「等」って何ですか??」という質問について、答えは「国税ではない、地方消費税(消費税の25%相当、すなわち1%部分)のことである」、と回答して、結びに代えたい。

株価の乱高下(裏で躍動する某証券)や上場維持容認発言などいろいろあったこの2週間であったが、オリンパス・ウォッチャーとしてもっとも看過できないネタが出てきた。


オリンパスの粉飾疑惑、金融庁が12年前に黙殺



さすがにこれが事実だったら、日本の金融市場の信頼が地に落ちる。昔の行政の不始末とはいえ、いくら金融庁が銀行証券の監督機関に過ぎず会計制度の監督が茶番とはいえ、そうゆう問題ではすまされない。


今回の問題は、色々なメディアが本当の意味でのスクープを抜いてくれている。上記の東洋経済しかり、FACTAしかり、問題の確信である中川氏(元野村、アクシーズ代表)の居場所(香港)をつかんで突撃したロイターしかり。これらが本当の意味でのスクープであろう。何度も例に出してすまないが、日立と三菱重工統合とかゆうインチキスクープを抜いた某経済紙、単に明日報道される企業広報を前夜に抜いたりすることなんか、大したバリューは無い。


ガバナンスを担うべき社外取締役と監査役、監査法人、証券会社(セルサイドとして、バイサイドとして)、そして会計制度や金融市場を監督する金融庁、いずれもが適時の問題解決には無力であった。よく監査法人は何をやっていたんだとか、社外役員を義務づけろとか、そんな議論が決まって出てくるのだが、経営陣が結束して秘匿すれば、まぁ問題は露見しないであろう。残念ながら、それが現実だ。


ではどうしたらいいのか。施策として、ひとつの案がある。近年アメリカでずっと話題になって、5月に法案化されたドット・フランク法がそれである。ご存知ない方もいるだろうから、参考資料を掲示しておく。


Protivity

モリソンフォスター


要は内部通報者にもっとインセンティブを出して、社内でよく不正を知る人から、直接監督機関に直言してもらう仕組みづくりである。こんなの会社忠誠心の低いアメリカ社会には有効だけど、ムラ社会・事なかれ主義の日本になんか馴染まないという意見もあるだろうし、そうゆう側面は否定しない。制度が整備されたからといって、内部通報が即日わさーと出てくるとは思えない。


ただ、忘れてならないのは今回のオリンパス騒動の発端は、FACTA誌への社員からの内部通報だったことだ。個人的には、この内部通報を報酬で報いよう、というのは不正発覚に有効だと思う。社員としては現在いる会社の膿みを出すことで、会社業績が悪化し自分の待遇が悪化することにつながるとしたら、普通は通報しないことが経済的には有利なのだが、だからドッド法は報酬インセンティブでバランスさせようとするものである。


日本でこの制度が定着するのはあっても当分先の話だろうが、内部通報をうまく機能させようとするのはいいアイデアかと思う。そして、監査している監査人からの通報も受け付けて欲しい。監査業務を被監査会社との関係のみで完結させるという前提がそもそもおかしいのである。監査人が不正の尻尾をつかんだら、経営者との(出来レース)ディスカッションや監査(閑散)役への連携という不毛な手段に出るのではなく、金融庁への通報による強制力のある調査に打ってでるのはどうか。


政策提言ぽくなってしまったが、現状では経営者不正に対する有効策は無い、という結論を以って筆を収めたい。

会計士としては一番身近ともいえる、この論点から少し入ってみたい。


<ディスクロージャー制度>
先日、有価証券報告書の読み込み(?)結果を発表した際に、とにかく具体的な情報が不足しているということを書いた。

ただ、私も開示書類のチェックなどをしていると感じるのだが、具体的な情報を記載せよという規定は、意外に欠如しているのである。監査人としては「このへんのPL科目の説明は注記で打ってくださいよ」とお願いしても、経理部長は「別にいいよ。規定なんて無いっしょ?投資家に探られたくねーから、じゃ書かねーよ」とくるのである。そうなると、いくら「フェアディスクロージャー」や「道義的IR」を高らかに謳っても、会社・経理サイドがこのような開示姿勢であれば、それを強制的に正す術は少なくても監査人側には無い。

フェアなディスクロージャーがボランティア程度に過ぎないのであれば、超優良会社のみがIR大賞などで大いに賛美される一方で、大多数の会社は自社に不利な情報をボランティア的に開示することはまず望めない。そんな情報開示を行う会社に誰が投資したいと思うか?情報の非対称性が投資コストの増加となるのは金融理論の常識であり、いわゆるレモンの法則である。

開示すべき情報を開示しなければいけない、そんな常識的な話が通じるようでないと、情報非開示による犠牲者は増えるだろう(今でもたくさんいるが)。昔ソニーのセグメント開示がイマイチだとSECから罰金を食らっていたが、そんなペナルティや統制が日本にも無いと、監査人の発起だけでは無理難題である。この点について、前途はかなり険しい。