小さな命と巨乳、そして人命救助の初夏。 | 明け行く空に…。  ~ひねもすひとり?~

小さな命と巨乳、そして人命救助の初夏。

とらうま郡しがらみ町。

そこがオレの生まれ育った町だ。


ちょっと前までは養殖漁業が盛んに行われ、優れた漁場を多く抱えた町は活気に溢れ返っていた。

漁港には威勢の良い漁師の声と元気な子供達の声がいつもこだまし、それはそれは賑やかだった。

自然の恩恵を充分に受けることが出来た漁師達の経営は潤い、それに伴い町自体も潤っていた。


だが月日は流れ、幾度となく世代交代を繰り返すうちに、第一次産業を支える仕事を受け継ぐ若者は一人、また一人と姿を消して行き、後継者不足といった自然の摂理には逆らうことすら許されず、気がつけば漁港から活気は失われていった。

最新の技術開発に伴い、コストと労力の削減が可能になったことにより、今まで必要とされた人手を減らすことに成功し、後継者不足といった当面の不安要素は回避し生産量は維持することが可能となったものの、一度失われた活気を取り戻すことは出来ていないのが現状だ・・・。


まぁね、こんなモンはどーでもいい話なんですけどね。

あまり知られていないんじゃねーかななんて思いますが、養殖漁業って実はかなり美味しい仕事です。(年収激高!)

一般サラリーマンの年収の3倍くらいは軽く稼げますからね。

まぁその種類にもよりますが・・・。

んじゃなんで後継者がいないのかって話ですが、そりゃやっぱメンドクセーからですよ。

汚れ仕事だからですよ。

世の中金だけじゃ無いってことですよ・・・。



閑話休題。



休日の午後、オレは車を走らせ野暮用を片付けるため、久々にしがらみ町へと向かった。
程なくしてしがらみ町の実家に着くと、たばこが無いことに気が付き、オレは紫煙を求めてブラブラとお散歩気取り。
漁港に隣接する商店街まで足をのばし、たばこをゲット。
まぁ足をのばしたといっても徒歩3分の範囲ですけどね…。

購入したマルボロのパッケージをはがしつつ、岸壁まで行きまして揺れる漁船など眺めつつ、オレはたばこを吸う。
コンクリートむき出しの岸壁に腰を下ろし、緩やかに流れる時の中に身を置く。

オレの横を小綺麗な服装をした若いママさんが、4歳くらいの子供を連れて通りすがる。

小綺麗な服装をしたちょっと巨乳チックなママさんが、潮の香りに乗せてさわやかな香りもまき散らしながら通り過ぎる。(巨乳バンザイ)

あぁ、なんかムカつく程のどかであるなぁと思いつつ、活気は失われてしまったが美しい自然はあの頃のまま何も変わらないでいる生まれ育ったこの地を、もっと大事にせねばならんぁと思った。
なーんて物思いに耽っていると



どっぽーん!



と、何かが海に落ちる音が聞こえてくる。

なんだ?とオレは音のした方に視線を向ける。



きゃーーーーー!!



なんて追い掛けるように若いママさんの悲鳴。



リョウくん!リョウくん大丈夫!?



と連呼するママさん。

大丈夫な訳ねーだろ!子供が海に落っこちたんだから・・・と心の中でつぶやくオレ。

で、回りを見渡し助けを求める様子のママさん。

どうやらオレしかいないらしい。

大事な息子を救出してくれそうなターゲットはオレしか見つけられなかった様子。



すいません!息子を助けてください!



懇願される休日のサラリーマン・ユキオ31歳。

冷静に状況分析を施し、無情にもオレはメンドクセーと思ってしまう。

でもね、困ってるヒトは無条件で助けなさい!ってのが死んだじいちゃんの口癖だったので、渋々オレは立ち上がる。

ポケットの中身をすべて取りだし、彼女に手渡す素振りで一応聞いてみた。



あんたの子供が海に落ちたんだぞ!自分で何とかしようって気は無いのか?



ごにょごにょぼそぼそ・・・。

彼女から明確な答えはなかったが、どうやら飛び込む気はないらしい…。



早く!早く助けてください!



再び懇願されるも、はっきり言わせてもらいますけどオレだってやだよー!

状況をよく確認してみてくださいよ、奥さん。
ほら、あんたの息子だけどさ、笑いながら泳いでるぜ!?
正確には笑いながら浮かんでるじゃないですか…。


まぁしかし、ガキ一人でよじ登れるほどヤワな岸壁でもないので、改めてポケットの携帯とたばこ、財布に車のカギ等々、濡れたらマズイ所持品を彼女に手渡してみました。

あらためて確認してみたら、海へダイブかました子供は徐々に岸壁から沖へ流されつつあるしね。

でも当の本人は、おのれはラッコか!?って感じの半笑いでプカプカ浮いているけどね。

しょーがないから助けてやるか・・・。

で、オレはTシャツにジーパンのいでたち、且つ夏先取りって感じで海へダイブですよ。


そうしましたら、遠くで一部始終を見ていた実家の近所にお住まいの地元漁師のオヤジが近寄ってきまして



おっ!ユキオ君、息子と海水浴か?どうだ?まだ水は冷たいだろう、あはは!



なんて茶化してくる始末。
オレはガキをひっつかまえて、岸壁にかかるハシゴまで泳ぎ、漁師のオヤジにガキを引っ張りあげさせた。



ありがとうございます!ありがとうございます!



と、子供を岸壁から引き上げた漁師のオヤジに何度も礼を言うちょっと巨乳の若いママさん。(巨乳バンザイ)

オレはね、ちょっとおかしいんじゃねーか?と疑問に思いましたよ。

全身ズブ濡れのいでたちで思いましたよ。

ちょっとくらい巨乳触らせてくれてもいいんじゃねーか?と思いましたよ。(巨乳バンザイ)

でもね、まぁアレですよ。オレも大人なモンですから、そんな思いは闇に葬り去り、子供の無事を喜ぶふり、あくまでふりしておきましたよ。



しかし海に落ちても泣かずにいるなんて、凄いねーボク



なんて等の本人である子供に問いかけると



うん!俺スイミングに通ってるから泳ぎには自信あるんだ!でも海で泳ぐのって初めてだったけど、面白かったよ!!



ですって・・・。




想像したよりは冷たくなかった海の水。

むしろ、既に海水浴に適した水温にまで上昇しているんじゃないかとすら思った。

あぁ、夏はもうすぐそこまできているんだなぁと思った休日の午後であった。



で、ズブ濡れで実家へ戻ったオレ。

初夏の海の水は思ったより冷たくなかったが、そんなダラダラなオレの姿を見た嫁さんの視線は、真冬を彷彿させるほどに冷たかったことは言うまでもない。


とほほ・・・。




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