明け行く空に…。  ~ひねもすひとり?~

今年こそ青いザリガニを育てあげます。

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3月11日のオレ。3

3月11日のオレ。2

ジャニーさんにはかなわない。

オレね、自慢じゃないけどバク転できないんですよ。

つーかさ、ジャニーズだって30過ぎたらバク転なんて滅多にしないわけじゃないですか。

想像してごらんなさいよ。

ジャニーさんがバク転してるところを。

いや待て、ジャニーさんて数々の武勇伝をメディアでささやかれているが、その姿って露出したの見たことねーな。

ちょっと想像するの難しいな。

ま、いいか。

そんでね、今度は自慢なんだけどオレ、バク宙はできんのよ。

いや正確には昔はできたのよ。

そもそもバク転ってさ、結構練習しないでやろうとすると手首骨折したり首痛めたりと、なにかと大変じゃない?

バク転上級者の指導がないままにやろうとすると、無傷では済まないっていうのかな。

それに比べてバク宙はさ、ちょっとジャンプ力に自信があるヤツだと、意外と簡単に出来ちゃう。

ほら、オレも若い頃はジャンプ力に自信があったから何気にマットの上でやってみたらあっさり出来ちゃったのよね、当時。


このところ、何をどう頑張っても体重は減らないし、下腹部は凹む素振りを全く見せないもんだから無駄な努力はやめようと思ったわけ。

つーか、もうこの年齢に到達するとビジュアルなんてどうでもいいんだよ。

いやいや開き直りとかじゃなくマジで。

本気って書いてマジでよ。

でもさ、太っていることが災いして、己の行動に何らかの制限が発生するのは納得がいかないのよ。

特に若い頃、めっちゃ機敏だった記憶が残っているだけに、自分の動きがニブイって感じたり誰かに思われたりするのって精神的に苦痛だと感じるんだよね。

だからオレはさ、身軽なデブを目指そうと最近思っているんだよね。


身軽なデブ。


言うのは簡単だが、第三者に「あの人ってデブだけど身軽だよね」と言わせるのにはどうすればいいのだろうか。


オレは考えた。

マジで3日くらい酒を絶ち己の体からアルコールの類を完全除去して考えた。

そして冴えに冴えた頭に一つの案が浮かぶ。


「この体でバク宙を華麗にキメたら、身軽だって証明できるんじゃねーか!?」


よし、さっそくやってみよう。

確か最後にバク宙をやったのが浪人時代のことだから、たった1●年前のことだし不可能なことはないと、自宅の庭でトライ!


「うわ、恐ぇぇぇーー」


もうね、間違いなく首の骨がお釈迦になるのを察したね。

せめてやわらかい布団とか、もっとやわらかいマットの上じゃないと確実に死ぬと即座に察したオレってかっこいいと思ったね。

そんでその日の挑戦は烈火のごとくあきらめた。
なんならこの一連の出来事は全て無かったことにしようと心に誓った。



でね、その数日後、たまたま高校時代の陸上部時分の同級生と一緒に飲んだんだよ。


「100mはお前の方が早かったが、50mなら負けなかった」


とか何とか盛り上がり、つい調子に乗ったオレは、先日のバク宙問題について口を滑らせる。


「つーかさ、オレとか今でも高跳び用のあのゴツいマットの上ならバク宙とか余裕でできるし。でもこの歳になるとそんな機会もなかなか無いからそれを証明できないから残念だ」


そう言って直ぐ、オレはしまった!と思った。

何故ならその友人は市内の中学で教鞭をとり、しかも陸上部の顧問をしているってことを忘れていたことに気付いたからだ。


案の定……


「おうおう、それなら来週の土曜にウチの中学に来いよ。マット用意して待ってるから。ついでにウチの部員に高跳び教えてやってくれよ」


もうね、オレの命もあとわずか……と思ったね。

でもオレも男だ、二言はねーってところを見せてやろうじゃねーかと腹をくくった。



でね、先日本当に友人の勤務地である中学校を訪問したんだよ。


「おいユキオ、やめとけって」


そんな友の言葉には耳を貸さず、オレはマットの上に仁王立ちになる。

オレはできる!オレ身軽だっ、わはは!

そう暗示をかけて、渾身ジャンプをすべく大地を両足で蹴った。


あら、あっさりバク宙成功!

調子に乗ったオレはマットから降りて再度トライ。

またしても成功。


やべぇ、オレ身軽なデブ確定じゃん。

わはっは、オレは軽い軽い!

オレは身軽だ!オレは凄い!

そういって何度も何度も宙を舞った。



がしかし、翌朝オレの体に異変が起きた。


膝が痛い。

足首が痛い。

肩が痛い。

アレもこれも痛い……。


特に膝へのダメージは深刻で、マジでベットから降りることができない。

 


結果オレは仕事を休み、病院へとまっしぐらとなりました。

つーか、今度は膝への負担を軽減すべく、マジで体重を落とす努力をします。

もっと確実に宙を舞えるように。


いや、もう二度とバク宙とかしない方が身のためだな。

もう、ただのデブでいいや。

 


そんな感じで。

3月11日のオレ。

ラーメン大好きなのは、なにも小池さんばかりではない。

インスタント食品ばかり食っていると体に良くないとよく耳にします。
なぜ体に悪いのか、食いすぎるとどうなるのか。
そんなことは知りませんが、ガキの頃から親からもそういい聞かされて育ったのは間違いない。
とは言っても、高校生の時分母が毎日作ってくれていた弁当にはしっかり便利な冷凍食品やらインスタント食品が、弁当箱の中に連日鎮座していたのは間違いない。
まぁいいけど。
 
そもそもオレのような低所得者にとって、インスタント食品ってのは結構高額で手が出にくいって場合が多い。
よほど安売りの特価で販売される時以外はなかなか口には入らないんだよな。
 
でもね、同じインスタントとは言っても、インスタントラーメンってことになるとこれちょっと事情が異なってくる。
だってオレ、インスタント、しかもカップラーメンが大好きなんだもの。
もうね、なんなら寝起き1分以内で出来立てのカップラーメンすすったところで我が五臓六腑はそれを受け入れる体制が整っている。
バッチコーイだな。
なので仕事中の昼飯は
コンビニ弁当 + カップラーメン
おにぎり + カップラーメン
カップラーメン + カップ焼きそば
なんて組み合わせが自ずと多くなる。
更に言うなら、弁当がトンカツ系でラーメンがトンコツ系ならば最早言葉はない。
この組み合わせは神をも凌駕する。
 
だがしかし、そんなオレの食生活に待ったをかける輩がいた。
 
「なぁおい、トンカツとトンコツとかって有り得ないだろ。見ろよこの数値、トンでもないことになってるぜ。お、うまいこと言ったな」
 
そう、我が家の体重計が語りかける。
さすがにオレもいい歳だ、ここはとりあえずヤツの警告を受け入れ、食生活を見直すか……。
 
そうしてオレは大好きなカップラーメンとのしばしの別れを誓った。
 
 
そうして、3月11日を迎えた。
被災地石○市在住のオレも、文字通り被災者となった。
 
食べるものも、飲み水も確保できず、正に塩をなめる生活を余儀なくされた。
支援物資としていただいたおにぎりの味に涙した。
炊き出しとして振舞われた味噌汁の味に涙した。
 
ある日、カップラーメンが支援物資として振舞われた。
オレは己の誓いを思い出し一瞬差し出した手を止めたが、程なくしてそれを受け取った。
そして、久々のその味と温かさに感動を隠せなかった。
 
○巻市在住とは言えども、沿岸部から離れた地に住むオレは、ライフライン復旧と共に日常を取り戻した。
ガソリンが自由に手に入るようになった。
買い物が以前と同じくできるようになった。
近所のスーパーではカップラーメンも数量制限なく買えるようになった。
でも必要以上の買い溜めはやめよう、何より己の体のため食事には気をつけようとカップラーメンの購入はやめようと誓った。
 
がしかし、そんな日常が戻りつつあるとある日、我が家に宅急便が届く。
箱を開けると、そこには沢山のカップラーメンと乾電池が山ほど入っていた。
そういえば、こちらの事情を察して連絡をくれた友人たちがメールで必要なものがあったら遠慮なく言えと手を差し伸べてくれた時、カップラーメンと乾電池と返事をしていたことを思い出した。
ありがたいことだ。
 
ところが、同じようにカップラーメンと乾電池が詰まった箱が、連日我が家にどんどこ届いた。
どうやら最初に連絡が付いた友人が他の沢山の友達にもそのメールを転送してくれていたらしい。
 
もはや健康のため、などと言っている場合ではない。
未だ困っている沿岸部の知人にその大半を譲ってもオレの部屋の大半に山積みになっているカップラーメン。
今宵もその一つを夕飯として食した。
 
うまい、やっぱうまいぜトンコツは。
 
この感動を忘れないように心に刻み、明日も被災地復旧のため仕事へと向います。
 
 
そんな感じで。

地デジカよ、そこは雛段じゃない。

最近ことあるごとにメディアに露出しているあのキャラクター、あれですよ、地デジカ。
あれはうざったい。

特にバラエティ番組なんかには高確率で出演してますね。

何がうざいかというと、正規に尺をもらって「みなさん地デジへの移行はお済みですか」なんて言うならまだしも、最近は往年のウォーリーを探せ的な感覚で、雛壇に座ったりしている。

誰にも全く触れられずひっそり佇むその姿を見つけると「あ、地デジカだ……」と思わず口ずさんでしまう自分が嫌いだったりする。

まぁいいけど。

 


 

何だかんだと言いつつも、我が家はすでに地デジへの移行を済ませた。

もちろん家電エコ何とかポイント欲しさにテレビを買い替えた。

おかげで面倒な何とかポイントの申請を経て、手元にはいくつかの商品券とQUO何とかカードが届いた。

今日はそんな何とかカードを懐に忍ばせ、職場近くにある唯一のお買いものスポットであるロー何とかソンに弁当を買いに行った。

今日もパンチパーマに口髭の、まるでその筋の方を彷彿するような店長がレジに鎮座している。オレはさっさと買い物を済ませようと缶コーヒーと適当な弁当を掴みレジへと向かう。


「お待ちのお客様こちらのレジへどうぞ」
 

その声に振り返ると、そこには見慣れぬ女性の店員の姿があった。

『かわいいじゃねーか』

心でそう呟き、オレは商品を彼女の前に置く。
まだ不慣れなその手つきは、その胸に掲げた研修中の文字を強調させるようであった。

だがそれすら『かわいいじゃねーか』

である。



「498円でございます」
  

そう言われ、オレは予め用意していた何とかカードに手を伸ばすが、ふと頭をある思いが過る。



『まだ不慣れだから、現金にしとくか』
 

そう思い一度出した何とかカードを引っこめようとする。

「カードでお支払ですね」

しまった気づかれた。
仕方なくそれを提示すると、彼女は難なく精算を済ませる。

何だ、もはやしっかり業務をこなせているじゃないか。オレの取り越し苦労だったかと思うと同時に彼女がいう。


「お客様、まだ残高が残っているようですが、新商品のからあげ何とかクンはいかがですか?」



オレは言葉を失った。
500円(カード)-498円=2円

彼女はあと残高2円のオレに対して210円の商品を勧めてきたのだ。

 

ま、結局現金を足して買ったんですけどね。

可愛いから。
ついでに彼女の胸には地デジカのマークがしっかり鎮座していていたんです。

  

と、地デジ完全移行があと一年を切ったとある日、こんな日記を認めていたのだが、それも延期となってしまいましたよ。



そういえば、最近地デジカの姿も見なくなったなぁ。 
そんな感じで。




美しい思いを出来るだけ傷つけぬように。

日記ってのは、元来毎日綴ってなんぼであると常々思っている。
その日の出来事を取りとめも無く書き記す。
ただそれだけでいい。
たとえば今日の朝何を食ったか、今日の昼何を食ったか。
そして今晩の酒の肴が何であったのか。
それだけでも、後に読み返したときにその時の記憶を呼び起こしてくれる。
 
ところがどうだ、オレの日記は。
ダラダラと殴り書いているのはいいが、頻度があまりにも低すぎる。
一体毎日オレは何をしとるんだ!と、思わざるを得ない。
なぁ、なんか書くことあるだろうよ、オレ、と過去の日記を読み返すと言いたくなる。
 
だが、オレが日記を書き記すのは、後に自分が読んで楽しむため……と言う事実も否定できない。
それなのに、今朝は納豆と味噌汁とお新香だとか、昼はいつもの日替わり弁当だとか、夜はビールとロッキンチェアーとか書いてあったところで「ん?意味がわかんねー」と困惑するのは間違いない。
でもでも、あることないこと、早い話が日記に嘘を書くわけにはいかないしなぁ……。
と、思う今宵である。
 
 
閑話休題。
 
 
先日のことだが、オフィスに着きいつものようにメールチェックと一日のスケジュール確認をしていると、上司がオレを呼んでいるのに気がつく。
おいおい、朝から何の用だよ……と頭を掻きながら声の主の下へと歩み寄る。
そうすると、上司は昨日オレが作成した先の会議の議事録を机の上に広げ難しい顔をして呟く。
 
「なぁ、この議事録だけどさ、よく出来ているけどお前の主観が大分織り込まれているように取れるのだが、本当にこんな風な会議だったのか?」
 
オレはまた頭、そしてケツを掻きながら面倒臭そうに答えた。
 
「会議の流れと趣旨、そして結論に至るまでの過程は性格に記したつもりです。ですが言葉、単語のチョイスは確かに私の主観によるものであることは否定できません」
 
上司は眉をしかめて言う。
 
「いいか、議事録というのはありのままを記すのが大前提であるのはお前も知っているだろ。これじゃまるで英国紳士同士の口喧嘩じゃないか。書き直せ!」
 
ちょっと何を言っているのか分からなかったが、まぁオレも大人なもんですから命令に従い書き直した。
 
 
※以下、訂正後と訂正前の一意部内容を発言ごとに記す。
 
 
役員A(訂正前)「今の事務局の説明によると、我が社の7月の総売り上げ金額から想定される純利益は、昨年同期と比較すると13%減少していると言うことになるが、その後の説明からではその減少比率を今後4半期で解消するためのプランからは具体性を感じ取ることが出来ない。そのことについて販売担当役員はどのような見解をお持ちなのでしょうか」
 
役員A(訂正後)「おめだずのはなすだど、おらいのすづがづのもうげがきょねんなより13%もすぐねってごったげっと、あいっだべ?なじょすてほいづくろずさもっていんかって決めっぱぐってんだべ?ほんで販売のやぐいんすたず、なんじょに考えでんのっしゃ?」
 
役員B(訂正前)「前年同期の実績と比較すると、確かに売り上げは減少という結果を示しているが、先ほど説明した資料に記されたグラフに示されている損益分岐点からも読み取れるように、この後の数ヶ月で巻き返しは十分に可能である。秋からは我が社の主力商品の販売が開始され、今年はそれに対する販売促進に係る経費を10%上乗せしている。この猛暑による影響で夏の売り上げは下降線を辿ったが、それを埋めるだけの十分な準備はしてある。恥ずかしい結果には決してしないつもりだ」
 
役員B(訂正後)「きょねんなはおもしぇっくれ売れだんだでば、なんだがしゃねげっと。ほいっとくらべっがらわげわがんねぐなんだげっとも、さっきなかだったみでに、とっけすごどでぎっがら大丈夫だでば。ほれ、秋なっとだまっででも売れるやづ店さだせっがら問題ねーでば。あいったど、こどすはそいっちゃぜんこかげで宣伝すんだがら。すかすなんだなや、こどすはあっつすぎっから誰もこったらものくでぐねーがすてはっぱり売れねがったげっとも、ほんでもほの分あぎがらとっけすがら大丈夫だがら。結局おしょすぐねー結果になっからみでらいん」
 
 
もはや何を言っているのか分からないであろう事は言うまでもなかろう。
 
A4の用紙10枚にも及ぶ議事録を、オレは全てこのように書換えて再度上司に提出した。
関東エリアから、ここ東北の田舎町へとやって来た上司には理解することは出来ないだろうことは容易に想像がつく。
だが、ありのまま記せと言ったのはあんただ。
 
ま、結局もう一度書き直せといわれたのは言うまでもありませんけどね。
 
 
そんな感じで、時には有ること無いこと書く事も必要なのかなぁと思う今宵でした。
 
だ、だめ?


下心までも溶かすこの夏の猛暑。

午後の仕事は車で1時間ほど北上した町での会議。
エアコンの効きに難のある愛車ではなく、この春に納車になったばかりの会社の車での移動は快適極まりない。
国道に設置された温度計には36℃の表示。
絶対に車から降りたくはない。
会場に着いたとしても、駐車場から箱までの数メートルの移動ですら嫌だと、路上で赤い文字を点滅させる温度計はオレに訴える。
 
でもね、移動途中に見つけた海水浴場の前を通りすがった時、オレは車を緊急停車させる。
もちろん、ビーチで狂喜乱舞する水着のねーちゃんを視界に捕らえ、鋭気を養うためだ。
外は36℃?立ってるだけで汗だく?そんなもん知ったこっちゃ無い。
水着にはそれら負の要因を全て払拭する力があるんだよ。
あぁ、夏万歳。
 
近くの駐車場に車を滑り込ませ一歩外へ出ると、そこは地獄。
まじで灼熱。
アッサムリーダーも真っ青な灼熱。
もうね、2秒で下心に勝てなかった己の弱い心を呪った。
額やら背中、終いには脇の下までもが一瞬でびっしょりになり、オレは逃げるようにまた車へ向おうとする。
そうすると、もはや日焼けとはいえないくらいに黒く、正にタイマーの加減を失敗した焼きすぎのトースターみたいな肌の色をしたおっさんがオレの前に立ちはだかる。
 
「お兄さん、駐車料金終日600円だよ、えへへ」
 
何ですと?
こんなただの空き地に車を停めただけで600円?
この野郎、その焼きすぎた黒焦げのパン生地に、日焼け止めの代わりにマーガリン塗ってやんぞと思いましたが、まぁオレも大人なもんですからそんな言葉は熱気と一緒に飲み込む。
しかしオレも水着のねーちゃん眺めに来ただけで600円の出費は惜しい。
ここは早々に立ち去れば事無きを得ることも出来たかもしれないが、既に頭の中は水着一色、真っ赤な水着の色に染まってしまっていたので、熱により融解寸前の脳をフル回転させる。タプタプと音をたてながら回す。
ふと見渡すと、駐車場の片隅に設置された公共のトイレの存在を確認した。
しめたっ!とオレは颯爽とポケットからティッシュを取り出し、下腹を苦しそうに押さえて言った。
 
「す、すいません!う、う○こが、うん○が今にも漏れそうで……ちょっとだけ車置かせてくださいっ!?」
 
そういってオレは全力疾走しトイレへと向う。
もちろん向うと見せかけてビーチへまっしぐらだったのは言うまでも無い。
 
さてと、難は去ったと近くにあった売店でアイスを購入したオレは、防波堤の上へと腰を下ろしてさっそく水着のねーちゃんを眺める。
もはや暑さなど全く感じない。
それ程の達成感を感じながら、アイスの冷たさを口内に充満させ、尻には熱されたコンクリートから伝わる熱さという違和感を感じたがそれを無かったことにして、全力でビーチを眺めた。
 
確かにね、目の前を行き交う目的の光景はオレに元気を与えてくれる。
だが、本日の猛暑はそれを上回るほどにオレから体力を奪う。
既に手に持ったアイスはダラダラと溶け出して、木の棒を伝ってオレの手にべたつく不快感を与えてくれる。
もはや限界と一気に残ったアイスにかじりつくと、そこにアタリの文字が……。
 
仕方なくオレはさっきの売店にトボトボと向かい、もう一本のガリ○リ君を手にし車へと向った。
その前に、パラソルの下で暑さを凌ぎぐためうちわをパタパタとさせながら、大音量のラジオで高校野球の放送を聞いているさっきの焦げたおじさんへのお礼を忘れないオレってかっこいい。
もちろん、2本目のソーダ味を手渡しながら。
 
ま、既に袋の中ではドロドロに解けてしまっていたけどな。
 
 
つーかね、やっぱ夏はエアコンの効いた車内とか社内にいるのが一番だと感じたってことですよ。
水着もいいが、どうせなら快適な室内で眺めたいと心から思いました。
 
 
そんな感じで。

 

鮮血を2 , 3滴。

しかしさ、今年の夏の暑さっておかしくないか?
なんて言うのかな、もう少しこう、加減みたいなもんがあってもいいと思うよ。
 
ガリガリ君がめっちゃ売れてるらしいね。
あとビールの売り上げも凄いらしい。
つーかさ、ガリガリとかどーでもいいけど、ビールの売り上げ急増には一言物申したいことがある。
きっとこの秋には、大手ビール会社が還元イベントとか何とか言い出して、訳の分からない懸賞とかやっちゃうことは目に見える。
まぁそれはいいんだけど、ちょっと待てよって話。
オレなんて、暑かろうが寒かろうが、年中ビール飲んでるからね。
自他共に認めるビール党。
政権が交代しようが知ったこっちゃ無い。
自民でも民主でも、あんたが大将でもなく、オレはもう何年もビール党支持なんだよ。
それがなんだよ、ちょっと暑いからって他の党に浮気しちゃったヤツらには還元しちゃうのに、年中ビールラブのオレには何も無しかよ。
言っとくがな、1杯2杯目ビールでその後は焼酎とか言っちゃうやつらと一緒にしてもらっては困るんだよ。
オレとか初志貫徹、猪突猛進に一晩ビールだからな。
いいかビール会社、どうせならオレを表彰しろ。
そこんとこヨロシク。
ここんとこご無沙汰。
 
閑話休題。
 
マイカー通勤のオレは、昼休みになりランチを済ませると、決まって駐車場に止めてある車へと向かい、そこでわずかばかりの仮眠を取り午後の任務への鋭気を養う。
決して昼休みにまで電話を取らされるのが邪魔臭くてオフィスから逃げ出してる訳ではないので、そこんとこヨロシク。
だが昨今のこの猛暑、日中の車内は正に生き地獄。
朝に車をそこに駐車した際、全ての窓を少しだけ開けておいたくらいでは最早太刀打ちすら出来ないことは容易に想像がつくであろう。
それでもオレは、お昼になると我が愛車へと向かい、そこで我慢比べを始めながら汗だくで仮眠をつるのだ。
気がつけば汗だくとなり、午後の鋭気どころか体力の全てを失うことになろうとも。
 
 
今日もお昼の汗だくミッションを終えたオレは、帰宅の際また車に戻った時にいくらでも快適にエンジンを始動できるようにと、また少しだけ窓を開けてオフィスへと戻った。
が、本日の任務を終了し車へと戻り自宅へ向けて走り始めたとき、これが仇となったことに気がついた。
 
外はすっかり暗くなり、もはやクーラーも必要ないくらいに快適な車内。
颯爽とアクセルを踏みしめ車を加速させるオレは、いつものように高速道路の無料区間へと飛び乗り、帰路を急いだ。
車内に響くのはお気に入りの音楽。
否応無しにオレのテンションはあがった。
 
が、程なくして己の左腕に違和感を感じた。
か、痒い……。
 
時を措かずして、患部がぷっくり腫上がったのを感じた。
!!!
更に一箇所、今度は首筋から痒みを感じる。
オレは車内の音楽を消して耳を澄ます。
心地よいエンジン音に混じり、耳を劈くような嫌なモスキート音が響く。
 
「くっ、くそ!窓を開けていたから蚊が入り込みやがったか!」
 
場所は高速道路、移動速度は時速100km。
車を駐車して敵を排除するどころか、停車することすら許されない道路。
いやこれは緊急事態だ!
などと声を大にしても誰も聞いてはくれないことは容易に想像がつく。
何も出来ないオレに、敵は調子に乗って耳元でブンブンとホバリングを開始する。
ふざけんじゃねー、これでもくらえっ!
そう言ってオレは全ての窓を全開にし、ほんの少しだけ更にアクセルを踏み込む。
時速は100kmを越え、車内にはスピードに乗った風邪が吹き抜ける。
程なくして窓を閉めると、車内に静寂が訪れる。
 
「どうだっ!どうやら高速道路の塵と化したようだな」
 
が、安息の時は長くは続かなかった。
 
『ぶーーーん』
 
オレは落胆した。
そして視線を前方に向けたまま車内を手探りで物色する。
 
「ぶ、武器はないのかっ!?」
 
当然車の中には殺虫剤の類は常備しているはずは無い。
だがしかし、オレは己のシャツのポケットの中に強力な武器を発見した。
ぬははははーーー!
そしてオレはしっかりと窓を締め切り、徐に取り出したタバコに次々と火を灯し灰皿にそれを突っ込んだ。
 
「喰らえっ!人をも病に導く副流煙攻撃!」
 
 
車内に充満したタバコの煙は、目論見どおりモスキート野郎をスモーキーロビンソン状態へと落としいれ、オレはこの戦いに勝利した。
 
 
 
さて、帰宅完了し勝利の美酒に酔いしれようと、今日もビールの栓を抜くオレ。
うん、やはり美味い。
 
美味い酒と美味いタバコ、この組み合わせがオレに至福の時をもたらす。
だが、この組み合わせのひとつ、タバコが何処を捜しても見当たらない。
 
くそっ、たった一匹の蚊を始末するために、今宵のタバコを全て灰にしてしまった。
 
 
 
仕方が無いので今夜のお供を捜し冷蔵庫に首を突っ込む。
そしてオレは真夏のお供、ガリガリ君(ソーダ味)に手を伸ばし、今宵はそれにかじりつくことにした。
 
当たりが出るといいな。
 
 
そんな感じで。

大人になる前に知るべきことがある。

 
「無礼講」という言葉があります。
私たちサラリーマンってのは、この言葉の真意、恐ろしさ、そしてその極悪非道さってことを、時に時間をかけてゆっくりと認知する。
場合によっては高い授業料を支払うことにより、一晩で理解させられる。
 
私の経験上、「無礼講」はその意味が「社交辞令」という言葉と表裏一体であると言える。
ときに「美辞麗句」という言葉とその含みを共有しているとも言えるだろう。
 
  
 
「今週末、みんなで飲みにでもいくか」
 
 
ある朝、窓際の上司が朝の開口一番呟く。
この上司、酒の席での口癖が「無礼講」だ。
だが、その言葉が正に社交辞令だってことは皆が知っていた。
いや、正確には一度彼と同じ席で酒を飲んだことがある輩は知っていると訂正しよう。
 
あれよあれよという間に、飲み会の招集範囲と日時、場所が決まっていく。
思ったよりその召集範囲は広がりを見せ、結構の大所帯での宴が企画されることとなった。
 
オレは隣の席で日々苦行に耐えている、つーかオレの与える毎日の罰ゲームを嫌な顔一つせずこなしている新入社員のザキ19歳に優しくアドバイスする。
 
「おいザキ、飲み会決行の日までに無礼講って言葉を辞書で調べておけ。後の判断はお前に任せるからな」
 
オレの言葉を聞いたザキは、高校時代に一度も触れたことが無かったが、社会人になり初任給で購入したまだ真新しい国語辞典を引き難しい顔をする。
 
「先輩、意味わかんないっす」
 
だめだこりゃ。
仕方が無いので、ヤツの言語に変換してニュアンスを伝える。
 
「いいかザキ、無礼講ってのはな、1年生が3年生にタメ口をきいてもいいってことだ。だがな、もしお前が3年で1年にタメ口きいてもいいぞって言ったからって、本当に1年がタメ口きいてきたらどうする?」
 
「いや、そん時はそいつボッコにしますね」
 
「ま、社交辞令ってのはそういうことだ。運動部での上下関係において3年ってのは神だ。この場合上司は3年の先輩だと思え。だけど先輩が無礼講って言ってるんだから、余りにも他人行儀なのもいただけない」
 
「分かったっす!2年のレギュラーが3年の先輩に接するような関係、それが無礼講っすね!」
 
「そうだ、それが無礼講だ」
 
 
 
そしてその日は訪れる。


「よぉーし、今日は無礼講だ!新入社員も管理職も関係ないから楽しく飲もうじゃないか!」
 
窓際上司の掛け声により宴が始まった。
およそ25人の大所帯となった酒の席は、和やかに口火を切る。
ザキを含めた新入社員は3名。
ひとりは隣の部署の大卒女子社員。
そしてもうひとりは逆となりの入社試験トップの男だ。
男の方は聞くもの全てがひれ伏すほどの高学歴でプライドが高く、どうやら所属部署で浮いた存在になりつつあるとザキが言う。
彼ら3人は仲良く並んで座っていた。
最も年下のザキは、女子新入社員よりも下座に着いた模様。
よし、オレの教えをしっかり理解しているな。
最早この席でオレが先輩風を吹かせることもないだろうと、ほっと胸を撫で下ろしグラスに注がれたビールを飲み干すオレ。
それを見たザキは即オレの元へ跳んできて、空いたグラスにビールを注ぐ。
 
「先輩、いい飲みっぷりですね、どうぞ」
 
オレは黙ったままその酒をグラスに受け、笑顔で言った。
 
「なぁザキ、こういう場合は先に部長の所に酒を注ぐのがセオリーだぞ」
 
ザキは全てを理解したような笑顔を見せると、ボソッと言葉を吐き捨てて席を立つ。
 
「先輩、偉いのは部長かもしれんですが、俺にここでの戦い方を叩き込んでくれてんのは先輩なんっすよ。俺がトライを決めれてるのは先輩のおかげっすから」
 
ザキのラグビー経験者らしい発言がオレに笑顔をもたらす。
 
「おいザキ、いつお前がトライを決めたんだ?得点はいつだってお前が無茶な攻撃で突っ込んだ時に拾ってきたペナルティーキックをオレが蹴った時に拾ってるんだぜ」
 
オレがそう言うと、ザキは左手にビール瓶を握り、右手の親指を立てたポーズで満面の笑みを浮かべて部長の元へと速攻を仕掛けに向った。
オレはザキの注いだビールの入ったグラスを少し高く掲げ、ちょっとだけそれを笑顔で見つめた。
 
 
その後、和やかに時が流れ皆ほろ酔いになってきた頃、新人たちの席からけたたましい声が聞こえてくる。
オレは若手女子社員たちとの宴席トークを満喫していたのに、水を差すような大声に舌打ちしながらもその発生源に視線と聞き耳を向けた。
 
「いいかザキ、そもそも哲学ってのはな……」
 
なにやらザキと入社試験トップの男が盛り上がっている。
おいおい、ザキに哲学論なんて、馬の耳に何とかだぜ……と一時聞き流すが、その後の大声にオレは咄嗟に立ちあがった。
 
「おいザキ、俺の酒が飲めないってのか!」
 
トップの男のその言葉にオレは2人の間に割って入ろうとした。
そもそもザキはまだ未成年。
このご時世、無理に飲ますのはさすがにそれは許されない。
 
だがザキは、上手いこと酔った相手を操るがごとく、その場を繕っていた。
 
「おいザキ、ちょっと煙草買ってきてくれねーか」
 
オレは先輩風を吹かせるような口調でザキにそういいながらポケットから千円札を取り出して、ザキを外に連れ出だす。
 
「先輩、あいつやっちゃっていいっすかね、さすがに年上だから我慢してるっすけど同期って言ったらタメみたいなもんっすよね」
 
オレは取り出したお札をポケットに押し込み、煙草に火をつけて言う。
 
「なぁザキ、お前が直接手を出しても損するだけだぜ。いいか、席に戻ったら無礼講だから部長んとこに酒注ぎに行こうってあいつを誘え。あいつまだ行ってないだろ、部長のとこ。いいか、無礼講って言葉を強調しろよ」
 
そう言ってオレは煙草をザキに勧めた。
 
「先輩、オレはスポーツマンっすから」
 
そう言ってザキは笑顔を浮かべた。
 
 
程なくして彼らは部長の元へと向った。
ザキは早々にオレの元へと帰ってきたが、入社試験トップの男はどうやら部長と激論を交わしているようだ。
 
そして中締めが行われ、一次会はお開きとなった。
オレは気の会う男女の仲間数人とザキを引き連れてその場を逃げるように後にした。
 
二次会は無礼講。
本来のその意味に反すること無く盛り上がった。
ザキが部長への生贄に捧げた男のことを気にしながら言う。
 
「あいつ、部長に連れられてどっか行きましたけど、どこいったんですかね?」
 
オレは女子社員とのセクハラ寸前の会話を楽しみつつ、ザキに言葉を返した。
 
「やっぱアレじゃねーか。先輩に牙を向いたヤツは体育館の裏にでもつれられて行ったんじゃねーか?」
 
それを聞いたザキは言う。
ココだけの話、ほろ酔いになってしまっていたザキが言う。
 
「それじゃ俺は、もう一人の同期の姉ちゃんを体育倉庫にでも連れていくことにしますか……」
 
 
 
そう言えば、その後の3次会の席にザキとその他新入社員の姿が無かったのはここだけの話。
 
 
そんな感じで。

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