アレも滴る女性の恐怖。
先日の仕事帰りのことですがね、いつもならば地下鉄~電車~軽ナンバー1・・・ってパターンで帰宅するのだが、その日は翌日の勤務内容に合わせて、自宅まで会社の車を利用して帰ることになったんです。
野暮用があったのでいったん北へ北へR45を走り、それを済ませたあと高速道路へ飛び乗り帰路に付くつもりだったが、急に肉を食いたい病が発病する。類似品として、ラーメン・すし・牛丼などの食べたい病がありますが、その日はあくまで肉が食いたい病が発症。
さて、どうしたモンかなと思いつつR45を北上しておりましたら、おあつらえでもしたように見えてきたのがファミレスっぽいステーキ専門店の看板。
もうね、間髪いれずに方向指示器を左に出すオレであります。
店内に入り、何の躊躇もなく「サーロインステーキ200g」を単品で注文。
店員の「ライスやパンは?」の問いかけは、そんなもの要らんと一蹴。
今日は肉が食いたい病なのであって、肉と一緒にライスやパンが食いたい病ではないのである。
焼き方はいかがなさいますか?
この問いに対しての答えはいつだって同じ、ミディアムであって他ならない。
高級店でめっちゃ高い霜降肉でも食うのならレアでいきたいところだが、いかんせん安いのが最大の武器であるファミレスっぽい店でありますので、レアで食うことに対して幾分抵抗があるのは否定できないからだ。
まぁいいや。
そうこうしていると、オレの後に続いて若い男2人が来店し、同じくサーロイン200gを注文する。
くそっ!オレの真似しやがって。
焼き方はいかがなさいますか?
お決まりの質問に対して、2人はちょっと悩んでつぶやく。
どうやら2人ともレアには抵抗があるらしいことは、隣の席についているオレの耳にも届いてきた。
当然注文を聞いていた女性店員の耳にも届いていただろう。
そして2人は決断し店員の女性に伝える。
じゃあ、頑張って焼いてください。
もう一人は
僕は一生懸命で。
いるんだよ、こういうしょーもないことをいうヤツが。
オレは今時流行らんことを言ってるなぁと思いつつ、そんなやり取りを聞き流していた。
店員は再度聞き返す。
焼き加減はいかがなさいますか。
今度は焼き方ではなく、焼き加減と言い直す店員さん。ちょっと加減を強調して。
オレなら間違いなくイラッとした素振り満点で聞き直すのに、この女性は終始笑顔で対応。
鏡だな。
んじゃ、店員さんの好きな焼き加減でいいですよ。
面倒になったのか知らんが、とにかく客の方が折れたようだった。
かしこまりました。少々お待ちください。
注文を繰り返すでもなくそそくさとその場を立ち去る店員さん。
もちろん満面の笑みです。
やはり鏡です。
注文入ります。サーロインステーキ200gのセット、超レアで2つお願いします。
やっぱ怒ってんじゃん!!
とにかくオレはおいしくお肉を頬張り、ご満悦で店を後にしました。
隣の席に血だか肉汁だか分からん液体がだらっだらと滴るステーキが届いていたのを尻目に。
以上。
水不足なんてありえない。
今朝起きたら雪が降ってましてね、もう朝から憂鬱だった訳なんですよ。
このところの学生さんの就職前線は異常なしで、正にバブル期を彷彿させるような好景気みたいですが、東北地方の寒冷前線は異常アリアリで、今年は雪が多いらしい…。
まったく持って迷惑な話であります。
そんな訳で(どんな?)、夏を忘れられないオレは暑い季節の日記帳をめくってみる。
そうしますとココに記載していなかったモノがいくつかありましたので、夏よもう一度!ってな思いを込めてそれをUP!
手抜きじゃねーからなっ!?
【平成19年7月2日】
21時03分の電車へ向かって、小雨降る仙台の街をダッシュ!
傘もささずに鬼の形相で走る31歳(まもなく32歳)サラリーマンの姿は、傍目にはキチガイ以外の何物にも映っていないだろうことは、十分過ぎるほどに理解している。
だが走るのだ。
どんなに濡れてブラジャーが透けて見えようがかまってる余地など1ミリもない。
これを逃すと次の電車まで52分間もホームに放置されてしまうからだ。
正に放置プレイ。
透け透けの放置プレイ。
まぁね、言うまでもありませんが、タッチの差で乗れなかったんですけどね。
さて、めでたくプレイ開始となりました放置タイム、オレはとりあえず行き着けのそば屋(standing)へトボトボと、そしてバンツの中までびしょ濡れ(changed BVD)で向かい、永遠と続くんじゃねーかと錯覚してしまいそうな52分間と言うプレイタイムを潰しにかかる。
雨に奪われた体の熱を取り戻すため、オレは熱いそばをすする。
滴る雨つゆなど気にせずにムサボり食っていると、隣でうどんをすするおデブちゃんの額からも流れ落ちる光が。 あぁ、こいつもきっと雨に打たれながらダッシュしたんかな?なんて思っていると、どうも様子が違う。
その光は明らかに内から沸き出しているようだった。
よく見ると、尋常ではないその汗の量はまさに滝のようと表現するにふさわしく、ヤツの回りには今にもアメンボでも飛んで来てもおかしくないんじゃねーか?ってくらいの水溜まりが自然発生しておりました。
オレがトンボだったら確実にそこに産卵するわ!ってな具合いだ。
特筆すべきは、ヤツが鬼神のごとく喰らっていたのは、冷やしうどんだったということ。
オレは思った。
梅雨入りしたにも関わらず関東地方には雨が降らず、この夏深刻な水不足に頭を悩ませるような危機的状況にあると言うことだが、彼がいれば、そう彼さえいればノープロブレムだと。
これで滝に撃たれる荒行に身を捧げる修行僧も安泰だと。
まぁそんな感じだ。
追伸
彼が熱いうどんなんて喰らった日にゃ、日本なんて沈没だぜ。
An office worker in new yo-ku a place.
特殊任務遂行の為、現在山奥にある小さな公共の施設を根城にする生活を続ける日々。
そんな変則勤務体制の中、午前と午後の任務の合間を縫って寂れた温泉地へ車を走らせてみる。
たどり着いたのは、きっと一昔前は観光客で賑わい活気があったに違いない、そんな雰囲気漂う町並み。でも今となっては寂しさを醸し出し閑散としている…そんな場所…。
日曜日だというのにこんな有様では、平日に訪れればきっとさらに哀愁を漂わせているに違いないと悲しいかな思ってしまう・・・。
オレは近くの駐車場に車を駐車し、まるで時が止まったように静まり返った町を歩いてみることにした。
いたるところから温泉地特有の硫黄の香りが漂っている。
十分すぎる風格を持った老舗の温泉宿が多く立ち並ぶ路地を歩いていると、その一角にこじんまりとした公共の入浴施設が混じっているのが目に付いた。
入浴料150円。安い!
せっかくだから一風呂浴びて帰ろうと、オレは駐車場まで戻り車に積んであるタオルを掴み、またいそいそと浴場へと向かう。そうそう、小銭も鷲掴みにして。
立て看板の指示に従い隣接する雑貨屋から入浴券を購入し、『男』の暖簾がかけられた入り口から中へと入る。 無造作に置かれた箱の中に入浴券を放り込んで脱衣所へと向かう。
狭い脱衣所を見渡してみると、作られてからいったいどれだけの年月が経過したのか想像もつかないくらいいたるところが傷んでいるのが目に付き、さらには手入れが行き届いていないのか、若干黴臭さが鼻につく。
オレはさっさと衣服を脱ぎ捨て、タオル片手に浴場へと向かった。
桶で湯船からお湯をすくい、何度か体に浴びてから入浴する。
若干熱めではあるが、体にまとわりつくような重めのお湯は思いのほか心地いい。
オレの他に客はいなく、広い湯船は貸切状態であったので、思いっきり体を伸ばし極楽気分を満喫した。
ふと見ると、男湯と女湯を仕切る壁が目に入る。
温泉や銭湯ってのは、お決まりのように天井付近は仕切られてなく、双方の声なんかが筒抜けだったりするんだけど、ここの仕切りの壁は天井どころの話ではなく、それ以上にヤケに低く見える。
オレは湯船から這い出し、そんな壁の近くまで歩いてみた。
ん?何だコレ!?壁の高さがオレの肩くらいまでしかねーじゃねーか!!
コレは即ちあと数歩壁際に歩み寄れば、向こう側が丸見えだって事を意味している。
幸いなことに今このとき、この空間に存在しているのはオレ一人。
何食わぬ顔で壁に近づく、いや、堂々と近づいたところでその姿を誰かに見られることも無い。
いや、ちょっと待て。もし女湯に誰かが入っていて、そいつと目が合ったりしたらどうする?
しかしさっきから壁の向こう側からは物音ひとつ聞こえてはこない。
そうだ!決してやましい気持ちで覗いてみるんではない。
ただ向こう側がどうなっているのか気になるだけだ。
やましい気持ちなんてこれっぽっちも無い・・・。
でもやっぱ誰かいてくれたらうれしいよねー。
そう、ちょっとだけ、ちょっとだけならよしんば誰かがいたとしても気が付かれることも無いだろう・・・。
そんな葛藤があったが、やはりいい年こいた大人がのぞきなんて悪趣味なことをするわけにはいかないと、オレはまた湯船に浸かった。
そうこうしていると、大学生風の3人組が脱衣所からコチラへ向かってきた。
せっかく貸切だったのになぁと彼らの到来を鬱陶しく思っていると、そのうちのひとりが口を開く。
おっ!向こう側丸見えじゃね?
そうすると、どれどれと3人が一斉に壁際へと近寄る。
何の躊躇もなく壁の向こう側覗き込むヤツラ。
そして・・・。
ギャー!!
3人は何やら見てはいけないおぞましいものでも見たような断末魔の叫びをあげて、それから一切口を聞かなくなった。
間違いを犯さずによかった。
本当によかったと、オレは浴場を後にした。
以上。
美の追求を喰らう。
朝から机の上に積み重ねられ、その頂上は霞んで見えないほど山盛りの仕事と、鳴りやまぬ地獄の底から響きわたる断末魔の叫びを彷彿させるような電話の対応に追われ、就業の頃にはヘトヘトのとほほ…状態で事務所を後にした本日。
いつもなら徒歩15分ほどの駅までの帰り道。
今日はとほほ…で30分ほどの長い道のりとなった。
とほほ…。
命からがらと言うに相応しい状態で駅についたオレは、今日も条件反射のようにそば屋(standing)へ向かおうとする。 その姿たるや正にパブロフ(not 頭痛薬)。
そりゃもう、それほど腹も減って無くても向かう。
慣習ってのは恐ろしいものです。
だが、こう毎日そばばかり啜っていたのでは、さすがの我が腐れストマックの野郎といえどもご機嫌を損ね悲鳴をあげる始末ってことで、気まぐれオレンジ☆ロード・ピックのまどかよろしくってな具合で、珍しくラーメン屋なんぞに足を向けてみた。
そう、ジャッキーチェンが来店したことでお馴染の、仙台じゃ超が付くほどに有名なカウンターだけのあの店に・・・。
※仙台在住だけど知らないよ?的ニュアンスの発言は不要です。
早速店内に入ると、既に夕飯時を大きく過ぎていたこともあり、店内は極めて閑散としている。そんな中でコの字型のカウンターに座る先客はふたり。
仕事帰りっぽいおっさんと、これまた仕事帰り風のOLっぽいお姉さん。
特筆すべきは、向かい側に座るお姉さんが極めてオレ好みの清楚なオーラ満点だったということ。
そりゃもう妖艶なレインボーオーラ大放出。
こんな場末の飲食店で、彼女のような素敵な女性を見かけることが出来るなんて、今日という日は実は凄く良い日だったのかもしれないと、ちょっとだけ嬉しい気持ちがこみ上げてきた。
そうしていると、おっさんの所へねぎ味噌ラーメンが届く。
そしてオレはいろいろと迷った挙句、焼そばを注文することにした。
程なくして、今度はお姉さんの所へチャーハンが届く。
あらっ!お上品なチョイスですこと(not ojousama)。
この店のチャーハンは程よい塩味が効いた極めて品のよい逸品なのだ。
さすがはオレ好みのお姉さんだ!と、オレは小さくうなずいた。
うんうん。
五目ラーメンお待ち!
威勢のよいオヤジの声が店内に響く。
あれ?まだ注文の品が届いていないのはオレだけのはずだが?
オレは五目ラーメンの行方を気にしていると、あろうことかそのラーメンはお姉さんの前に、目の前の厨房からカウンターを飛び越えて来て見事に着地した。
コレで姉さんの目前に並んだ品はラーメンとチャーハン、共に一人前です。
半チャンじゃないですからね。
まぁここまではいいんですよ。
姉さん相当腹ぺこだったんだろうと言うことで、オレの脳みそ内は強制的に整理が付けられましたから。
はい!焼そばお待ち!!
そうこうしていると、オレの注文した焼そばも出来上がったみたいだ。
オレはここで焼そばもネーさんの前に置かれたら相当面白いのになぁと思いつつ、半笑いでカウンターの中から手渡される焼そばを受け取ろうとして腰を浮かせると、そのタイミングを図ったかのように姉さんの前に焼そばが置かれた。
オレは三流コント並みのオーバーアクションと共に椅子からズッコケた…。
ドリフ万歳!とっくに8時は過ぎちゃってるよーってな具合でズッコケた。
そしてその時、姉さんはこちらを見ながらウフッと品良く笑った。
良く見ると、口からナルトを半分出しながら品良く笑った。
何なんだ、コイツは…。
大食いにも限度ってもんがあるでしょが。
はい!今度こそお兄さんの焼そばお待ち!
余計なオヤジの台詞と共に手渡された焼そば。
姉さんはそれを見てまた笑った。
口から半分紅しょうがを出しながら品良く笑った…。
でも姉さん、それはそれで可愛いんだけど、紅しょうがの使い方はちょっと違いますよ。
紅しょうがってのはさ、極めて薄い股上から見え隠れするケツの割れ目の隙間
に納めるためにある食物ですから!?
そしてオレは可愛く微笑みながら鬼神のごとく飯を喰らう、清楚なお姉さんを眺めながら可もなく不可もない平凡な味の焼きそばを頬張った。
ケツの割れ目に紅しょうがを挟んでいるお姉さんの姿を想像しながら・・・。
以上。
夏の夜の風物詩。
夏の風物詩と言ったらそれは海!山!花火!
それぞれ違った意見もあるでしょうが、まぁ大まかに言えば大体こんなとこでしょう。
それに付随するキャンプだとか海水浴だとか、はたまた肝試しだったりスイカ割りだったりと、夏限定のお楽しみってのは挙げたらキリがないですね。
そんな中で、オレのハートをがっちりキャッチして離さない夏限定のイベントがある。
それはアレですよ、蚊。
蚊との対決ですよ。
奴らは夜な夜な人々が寝静まる時間に寝室にやって来て、ぷぅ~んだったり、ぶぅ~んだったりする独特のサウンドを響かせて、その音色を聞くもの全てを恐怖のどん底に叩き落してくれる。
撃退用の線香だとか電子機器を用いて退治したつもりでいても、いつのまにやら第2陣3陣と次々に刺客を送り込んでくる彼らとの対決は、正に夏の風物詩と言ってよいのではないかと思うのである。
先日も命知らずのモスキート野郎が、オレの安眠を妨害しようと羽音を響かせてやってきた。
案の定、蚊撃退用の電子機器が奏でるデスメタルをものともしない、強靭な肉体を誇るシマシマ模様の精鋭部隊が、着々とオレとの距離を縮めながら接近してくるのが分かった。
音から推測するにその数は1匹ではない。だが詳細は不明だ・・・。
オレはゆっくりと体を起こし臨戦態勢を整える。
そして編隊を組んで攻撃の機会を窺っているだろう見えない敵に対し、耳をすましてその大まかな位置を捕捉しようと試みる。
敵もなかなかのモノで、こちらのレーダーに捕らわれてなるものかと、一度組まれた編隊を拡散させるという頭脳プレイに走る。
縦横無尽に飛び回る敵が奏でる死の協奏曲は、こちらの戦意を着実に奪っていく。
敵の作戦により聴覚レーダーは使い物にならなくなったが、こちらにはまだ視覚という最強の捕捉手段がある。奴らがいかに優れた飛行能力を持つとしても、聴覚視覚の2つのレーダーを駆使したこのオレ様から逃れることなど出来るはずなどない。
オレは早速視覚レーダーの機能を使用するため、蛍光灯のスイッチを引っ張り明かりを灯した。
ちょっと、眩しいでしょ!
隣で寝ている嫁さんが物凄い剣幕で怒りをむき出しにする。
思わぬ新手の強敵出現にいささか怯んでしまった・・・。
仕方なくオレは最小限の状態まで明かりを絞る。
大丈夫だ、これならいける!
音のするほうに視線を向けてみる。
いた!1匹目をロックオン。
緊迫したこの状態を保ちつつ、さらに音を追ってみる。
2・・・3・・・3匹!敵は3匹だ!
敵の姿が丸裸になってしまえばもう怖いものなどない。
オレは枕元にあった新聞紙を丸め、利き腕にそれを握り締めて攻撃のチャンスを窺っていると、ロックオンした1匹が柱にとまった。
間髪入れずに伝家の宝刀を振りぬく。
バン!
よぉ~し!1匹目を捕獲!!
この勢いに乗じて2匹目を捕捉にかかる。
ロックオンを完了して攻撃のチャンスを待つ。
ぷぅ~・・・・ん
なかなか着陸しようとしない敵機、しかしながら空中戦となるとこちらはあまりにも分が無さすぎる。
業を煮やしたオレは、ついに禁断の兵器に手を伸ばすことになった。
右手に伝家の宝刀、左手にリーサルウエポン(殺虫剤)を握り締め、その銃口を2匹目の強敵に向けて発射の態勢を整える。
ちょっと待てぃ!
その声のする方を振り返って見ると、3匹目の刺客がこちらを睨み付けて叫んでいた。
この娘がどうなってもいいのか!?武器を捨てろ!
我が最愛の愛娘の足にすがり、その鋭利な口先を今にも突き刺そうとしている第3の刺客。
分かった!分かったからそれだけは勘弁してくれ!!
オレは泣く泣く武器を手放した。
その様子を含み笑いで見つめるヤツは、勝利を確信したような表情を浮かべていた。
そんな切迫した状況に全く気が付かずにすやすやと眠る娘。
すると、暑さに不快感を覚えたのだろうか、彼女は突然寝返りをうった。
ぶち・・・。
そして第3の刺客は永久の眠りについた。
このチャンスを逃してなるものかって具合に手放したリーサルウエポン、いや面倒くさいや。つーか単なる殺虫剤を手に取りさっさと2匹目の強敵、いや残った蚊にぶしゅっと吹きかけ、はいさようなら・・・。
ちょっと!こんなところで殺虫剤使わないでよ!
再度嫁の叱咤を浴びる。
本当の敵は他でもない・・・。
ここにいた。
まぁそんな感じで、アレもコレもひっくるめて夏の風物詩ってコトですよ。
以上。
第一印象で決めろ!
人を見た目で判断しちゃいけないよってのは世の定説であります。
いや、一概にそう言い切ってしまうのはちょっと危険な気もするが、ここは敢えて言い切ってみる。
理由は特にないが・・・。
朝の通勤電車内での出来事なんですがね、ガラガラの電車に途中から乗ってきたパンツスーツに身を包んだスラッと背の高い、それでいてインテリ(not インリン)チックなメガネ使用という激しくオレ好みな女性がね、ガサゴソと鞄から何かとりだそうとしてたから、あぁ読みかけの小説とか哲学書あたりがぱんぱかぱーんと飛び出し、ちょっと斜に構えたくらいにして読み出すのかなぁなんて思っていたら、そこから出てきたのは 「激烈バカ」 というモロギャグマンガの単行本だったんです。
そんでそのインテリ(not インリン)チックなメガネ使用のお姉さんは、声こそ出さなかったけれど、その表情から察するに、確実にハラワタ煮えくり返るくらいに爆笑してましたからね。
そんなこと言ってはみても、その女性が見せる実はオレの予想を激しく覆す姿に、これまた不本意ながら萌えちゃうんですがね。
詰る所、パンツスーツ・長身・インテリ(not インリン)チックなメガネ・・・って組み合わせが好きだって話なんですよ。
願わくば、真っ赤な下着を着用していてくれって話なんですよ。
そんな感じ。
んなこと言ってるオレですが、見た目はそりゃあ真面目っこそのものらしく(苦情は受付ません)、初対面の人間と一度腹割って話をすると、そのギャップに大変驚いてくれて、オレとしては非常に楽しくてしょうがないんですよね。
まぁ中身がどんなんかと言えば、こんなん…。
今更言うまでもないが、こんなん。
まさにヘドロ野郎。
閑話休題。
先日、疲れた体を引きずって飛び乗った最終電車での話。
既に満席の電車内、席を確保出来なかったオレは残り僅かとなった体力を何とか帰宅完了するまで温存しようと、仕方なしに車両と車両の境目にある扉に体を委ねつつ、電車が動き出すのを今か今かと待っていた。
席を確保したくたびれたサラリーマン共の大半は、皆脱力した状態で肩を落としながら仮眠をとっている様子。
そこへ小学校低学年くらいの孫らしき女の子を連れた、70歳くらいのおばあちゃんが乗ってきた。
時間は間もなく午前0時、子供は相当眠い様子で半べそ状態になりおばあちゃんに寄り添っていた。
あぁ心優しい誰かが、きっと誰かが席を譲ってあげるんだろうなぁ…と様子をうかがっていたが、誰一人としてその気配を見せるものはなかった。
多分気が付かないふりをしてる人もいただろう。
だけど誰もそれを咎めることなど出来やしないことも、オレは嫌と言うほど分かってる。
オレだって酷くくたびれた状態で席を確保したならば、同じことをしたかもしれない。
今日はたまたま立っている。
ただそれだけ。
ふと見ると一人の男が目を開き、おばあちゃんと子供の様子を見つめていて、程なくして席を立った。
彼の風貌といったら正にアレ。
ヤ●ザ、もしくは893(ヤ●ザ)…。
確実に2~3人は人殺したことあります!みてーなオーラ全開。
で、そんな彼が眠くてぐずってる子供のとこまで近寄って
お嬢ちゃん眠いんだろ、そこ座って寝なよ
なんて言うじゃありませんか!
そんな光景を目の当たりにしたオレは、子供がビビって大泣きって展開をちょっと期待してしまう。
正にヘドロカズマイヤー…。
でもね、そんなオレの期待に反して
おじさんありがとう!
と無邪気に返事をしながら満面の笑みを浮かべ席に座る女の子。
そうしましたら、先程まで隣に座る893(ヤ●ザ)の存在にビビりながら、隣で肩身を狭くしていた学生風のお兄ちゃんも席を立ち、おばあちゃんに席を譲った。
そしておばあちゃんと女の子は仲良く並んで席に着くことが出来たのだった。
オレは反省した。
2~3人殺したことがありそうだとか、もう一人のお兄ちゃんがバナナマンの日村にそっくりだな…なんて思ったことを深く反省した。
その場に溢れた何だか温かい雰囲気。
きっとその一部始終を見守っていた者全ての心も、何だかほのぼのとしたに違いない。
だが、そんな心温まるホカホカの状況を覆す出来事が発生する。
発生源は他でもない、席を譲られた子供とおばあちゃん…。
席に着いた子供は靴のまま座席に飛び乗り、窓の外見ながらキャッキャキャッキャと大はしゃぎ。
ババァはババァで携帯取り出して大はしゃぎ…。
よしこさん、30分位で駅に着くから迎えに来ておくれよ。
そうそう!あいちゃんったらはしゃいじゃって・・・(エンドレス)。
もうね、一瞬で電車内が氷ついたのは言うまでもない。
そりゃ893(ヤ●ザ)も苦笑いですよ。
ホント、世の中ヘドロだ。
オレはこのガキとババァが、893(ヤ●ザ)の次の犠牲者になりゃいいのにな…と思いながら、兄さんやっちゃってくださいよ! ってな思い満載で彼を見たら、彼ったら立ったまま「金田一少年の事件簿」読んでましたからね。
893(ヤ●ザ)、むしろ326(ミツル)の野郎が事件簿って・・・。
つーかまたマンガかよ!
願わくば、じっちゃんの名にかけて、この凍りついた車内を暖めてほしかったですよ。
そんな感じで、人を見た目で判断したらいけないってことを、改めて学んだってことでした。
以上。
セミ。
街を歩くと木々の葉は力強くその存在を主張し、だけど高層ビルが立ち並ぶオフィス街の風景に穏やかに溶け込んでいる。
不規則に伸びた枝や青い葉の隙間を縫って差し込む日差しは、まだ梅雨明けの宣言を耳にしてはいないけれど、既に真夏のそれと遜色がない程の眩しさと力強さを孕んでいるようだ。
渋滞する車、そして雑踏から溢れ出す騒音に混じり、遠くのほうからセミの鳴く声が聞こえる。
どうやらまた、暑い季節がやってきたみたいだ…。
茹だるほど暑さを感じる休日の午後は縁側に腰を下ろし、木陰を忍び足で通り抜けた時に、本来の穏やかさを思い出した爽やかな夏の風を火照った体に浴びながら、ふと思い出したかのように読みかけの小説など捲ってみる。傍らにはうまくバランスを保ちながら浮かぶ氷が2つ3つ入った麦茶なんぞ置いてあって、グラスを持ち上げた時にカラカラ~ンなんて奏でる。
汗ばんだ体が時に悲鳴を上げることもあるが、それ以上にそんな夏の何気ない一時を愛して止まないのだ。
そんな時間を満喫しているならば、それは暑ければ暑いほどいい。
そしてじりじりと焼けるような日差しが焦がす、土やアスファルト、草木の香りはどこか懐かしく、時に少年の頃の暑かった日を彷彿させてくれたりもする。
夏が好きだ…。
台風一過の休日、朝から滝のように降り注いだ大粒の雨が上がり、一気に気温が上昇してきた午後の事。
我が家の庭先に、その登場はまだ幾分早いんでないんかい?と思えるトンボの群れが迷い込んで来た。
アスファルトから立ち込める水蒸気が作り出した透明のカーテンの合間を縫うように、ゆっくりと羽ばたきながら近づいてくる。
夏の終りから秋だって、オレの頭の中で勝手に相場が決められている彼らの到来は、何だか季節感を狂わせてくれるなぁと思いつつも、庭先の草木にその体を委ねながら正に羽を伸ばす彼らの姿をぼんやり眺めていると、頭の中に幼い頃の記憶が蘇ってくるのに気が付き、オレはくわえ煙草で紫煙を燻らせつつ、その記憶をゆっくりと辿ってみた。
トンボってヤツはコツさえ掴めば思いの外簡単に、それこそ素手でも捕まえられた。
気配を殺しながらそぉ~っと近づき、指先で優しく羽をつまむ。
今思えば可哀想な行為ではあるのだが、そうやって次々に捕まえられたトンボは、狭い虫かごの中に押し込まれ、そして彼らの一生はそこで終える…。
子供ってヤツは時にとても残酷な生き物だ・・・。
でも、そうやって命の尊さ、重さってヤツを学んでいくのだろう。
少年は同じようにセミの捕獲にもトライしてみる。
だが、コイツの注意力っていうか、危険察知能力っていうのか良く分からないが、とにかくトンボのそれとは比較にならないくらい鋭くて、なかなか思うように接近を許してはくれないし、ましてその体に触れるなど至難の技だったりする。
結局素手で捕まえた記憶がオレの脳裏に刻まれることはなかったように思う…。
オレは揉み消した煙草の代わりに手に取った麦茶をすすりながら、そんな幼い頃の思考を蘇らせていた。
そうしていると、青い空の彼方からひとつの黒い点が乾いた歌声を轟かせながらこちらへ近づいて来て、オレの足元にフワリと舞い降りた。
セミだった。
どのくらいの時間が経過しただろうか。
オレは気配を殺しながら、目の前に舞い降りた黒い点を見つめていた。
そしてオレは思った。
あの頃触ることさえできなかったその体に、何だか今なら触れることが出来るかもしれないと…。
あの頃の自分より、良いことも悪いことも比較にならないくらいに経験を積んだ今のオレなら、何だか触れられる気がした。
全くその場から飛び立とうとしない黒い点。
オレはそっと手を伸ばしてみる。
まもなく届きそうになったとき、オレは思わず躊躇した。
何だかコイツに触れてはいけないような騒動に駆られたのだ。
引っ込められたその手に、近くに無造作に置かれていた携帯を掴み、カメラを起動してみる。
接写モードに切り替え、至近距離まで接近しシャッターを切った。
それでも微動だにしない被写体からは、既にその場から飛び立とうという意志はどうやら微塵も感じられなかった。
ほんの数日間という短い命を全うしたセミは、どうやらここを死に場所に選択したみたいだ・・・。
かごの中に押し込まれるでもなく、外敵の血肉となるでもない。
その短い生涯をオレの目の前で終えようとしているセミ。
何を思い、そして誰にその意志を伝えようとしているのかなんて分かりはしないし、きっと彼自身そんなことなどどうでも良くて、ただ静かにこの場で一生を終えようとしているだけなのかもしれない。
でも、その生き様がオレって一人の人間に、確実に何かを伝えたってことはどうやら確かなことのようだ。
当のオレだって、実際は何を考え何が伝わったのかなんて上手く言葉に表すことなんて出来やしない・・・。
でも、なんか暖かいモノが胸の奥で走り抜けたってことだけは確かだ・・・。
以上。
夏が来れば思い出す。
梅雨はまだ明ける気配を見せてはくれないけど、既に季節はすっかり夏ってな具合いでして、仕事と言えども外出するのはちょっと抵抗がある。
まだ本気モード突入前の太陽でありますが、その破壊力は、オレみたいなちょっと気になり出した腹を所持する中年サラリーマンに対しての殺傷力を充分に兼ね揃えている。
もうね、ダラダラ…。
ちょっと外歩いただけで汗だくってヤツなんですよ。
おーい!誰かこの書類届けてきてくれー。
なんて上司の叫び。
はいはい、オレに行ってこいってんでしょ?どうせオレが一番年下だしね。
分かりましたよ、行きゃいいんでしょ…。
まぁどんなに外が暑いっていっても、クーラー全開の車だったら別にへっちゃらだしね…。
なんて思いつつ、帰りには喫茶店にでも寄り道して、冷たいものでも飲みながらちょっとおさぼりしようかなと、車の鍵を取りに行きながら企てていると上司が口を開く。
んじゃコレ、○×商事の吉田さんまでお願いね。
○×商事…。
オレは落胆した。この会社は街中の一等地にオフィスを構える商社なのだが、我が社からの距離が極めて微妙なのだ。
歩くにはちょっと遠いし、車だと近すぎる上に来客用の駐車場がない。
路駐をすれば即お縄頂戴の昨今だし…。
仕方がないのでオレは一度掴んだ車のキーをまた所定の位置へ戻し、書類を片手に渋々外へと飛び出した。
思った通り外は灼熱地獄と化しており、オレはパンツの中までびしょ濡れだ(changed BVD)ってな具合いに汗だくになる。
さて、用事も済んだしせめて喫茶店で冷たいコーヒーでも飲むか…なんて思っていると、会社に財布を忘れると言う間抜けっぷり炸裂で、己はサザエか!?むしろマスオだろがっ!
ってな自分にほとほと愛想も尽きてしまうのである。
とほほ…。
でもね、なんだかんだと言っても、オレは夏が好きなんです。
春夏秋冬のなかで一番夏が好きなんです。
楽しい思い出を掘り起こそうとすると、探り当てるのはいつも夏の思い出なんだ…。
あれはそう、今から15年前、オレがまだ17歳なんて粋も甘いもよく分からない程に純朴で、それはそれは可愛い高校生だった頃の夏休みの話だ。
その日は部活も休みで朝からすることもなく、さてどうしたもんかなー?と暑さに耐えるための手段として、パンツ一枚というスタイルで扇風機の前を占領していると、今は懐かしい黒電話が雄叫びを上げる。
じりりりりーん じりりりりーん♪
もういっちょ、じりりりりーん じりりりりーん…♪
もうね、メンドクセーから無視を決め込むんだけど、敵もナカナカのヤツでして、あきらめる素振りを見せやしない。
じりりりりーん じりりりりーん…♪
ええーい、分かった分かったと重い腰を上げるユキオ17歳。
メンドクセーオーラ全開で、はいはい…なんて呟くと、受話器の向こうからは、今日のアホみたいな猛暑を1ミリも連想させないような、穏やかな春の陽射しを彷彿させるさわやかな声が聞こえてきた。
おーい、何してた?暇なんだろー?釣りしてたから海パン持って来いよー♪
電話の主は、既に社会人の仲間入りを果たしている先輩だった。
一歳違えば糞同然という、恐ろしい上下関係が存在する我が地元。電話の主が一歳どころじゃすまされないくらい年上の先輩だったワケですから、オレの背筋には一気に緊張が走る。
うわー!先輩からの電話なのに、こんな格好で電話に出ちゃった~!?
ヘタこいたぁ~。
気分的にはこんな感じですね。(そんなの関係ねぇ♪)
まぁね、実際は鼻くそほじりながら電話してたんですけどね・・・。
とにかく絶対的な権力を誇る、先輩と言う名の悪魔から召集命令が発動させれしまったので、NOといえないオレはいそいそと支度を開始する。
えーと、海パンどこにあったっけかな・・・ん?なんかおかしくねーか?さっき先輩は釣りしてたって言ってたよなぁ・・・。ということは、必要なのは竿だとか釣りに必要なグッズであって海パンじゃねーよな?
でも先輩の指示だから仕方がない。
オレは何とか海パンを探し出し、自転車にまたがり颯爽と目的の場所へと向かったのだった。
おーい、遅かったなぁ コッチコッチ♪
相変わらずの爽やかな歌声でオレを手招きする先輩とその仲間たち。
どうやら既に釣りを始めてやがる。
さて、釣果はいか程かとバケツの中を覗き込んでみるが、そこに魚の姿はまだ見ることができなかった。ざまーねーな。このヘタッピ共が・・・。
で、結局オレは竿すら持ってこなかったので手持ち無沙汰なもんだから、どーすっかなーとブラブラしながら、今頭の中にある疑問を先輩にぶつけてみた。
先輩、海パン持って来いってことだったんすけど、この後海水浴にでも行くんすか?
オレの問いかけに対して、は?コイツは何言ってんだ?みたいな表情を浮かべてオレを見る先輩。
そして開いた口から発せられた台詞にオレは耳を疑った。
海水浴?行くわけねーだろ。
ほら、ここで朝から釣りしてたのに全然釣れねーから、もしかしたらここには魚いないんじゃないかと疑問が浮上してきたところだったんだよ。
だからお前に見てきてもらおうかなと思ってさ。
オレは理解ができなかった。
お前に見てきてもらおうと思って・・・この言葉が意味するモンが一体何なのか理解ができない。
そうこうしていると、先輩が車の中から水中眼鏡を持ってきてオレに手渡そうとする。
ほら、コレ使っていいからここに魚がいるか潜って見てきてくれ。
もし魚がたくさんいる場所があったら、そこに釣り針移動しておいてくれよ。なんならお前が捕まえて針に引っ掛けてくれてもいいからさ。
もうね、鬼とか悪魔とか人間が創造した生き物には当てはめることができないほどの、闇だったり負だったりのオーラ全開ですよ。
いいから早く行けって!
そしてオレは海へと飛び込んだ。
おーい、魚いたかぁー?
いませーん!
見つけるまで帰ってくるなよー♪
なんだかんだと言いながらも、オレは海水浴を楽しみ涼を得ることができたのだ。
やっぱ持つべきものは心優しい先輩だなぁと思ったのでした。
いやーマジで死ねばいいのに・・・。
でもね、なんだかんだと言っても、オレは夏が好きなんです。
春夏秋冬のなかで一番夏が好きなんです。
楽しい思い出を掘り起こそうとすると、探り当てるのはいつも夏の思い出なんだ…。
さて、上司の依頼によるおつかいを無事終了し、事務所に戻ってきたオレはやっとコーヒーにありつける。
ユキオ君お疲れ様、コーヒー飲むでしょ?
今日ばかりは宇宙規模の尺度で、さらに3重くらいのフィルターを通して見れば美人といえなくもない事務員さんの言葉がとても優しく聞こえてきた。
あぁ、やっと冷たいコーヒーにありつける。
おまたせー♪
まぁ言うまでもありませんが、激烈に熱いコーヒーがオレの机の上に運ばれてきたんですけどね。
とにかく、オレは熱い夏が好きなんだ。
以上。
注文を聞き流す料理店。
いつものコトではあるんですがね、今日も朝からやる気なんてあるはずもなく、ただダラダラと時が過ぎるのを待っていた。
ただひたすら、それこそ直向きに就業時間終了の鐘の音がオフィスに鳴り響くのを心待ちにしていた。
時は午後5時を過ぎ、オレは今日も頑張って苦痛極まり無い時間をよく我慢したなぁと己に言い聞かせ、同時にそのガッツ溢れる肉体を労うかのようにすごすごと帰宅準備を完了させ、ドロンする準備を整える。
さぁ帰ろっかな!?なんて鼻歌混じりで席を立とうとすると、上司のウンコヤローが口を開く。
おーい!ユキオ君。お願いしていた資料完成したかなぁ・・・?
あのね、出来てるはずが無いでしょ?だってアンタ、来週までにやっとけって言った仕事でしょうが・・・。
心配しなくとも大丈夫!来週までにはちゃんと完成させますから。
いやー急遽明日の会議で使うことになったんだよ。つーわけで明日の朝までには作っといてネ。
そんなワケで、オレは今日も残業組の仲間入りと相成った・・・。
クソがっ!
先輩、飯どうしますか?
夜8時を過ぎると、残業組の誰かが夕飯の出前を注文する。
腹が減っては会議資料作成もままならぬって寸法だ。
腹の虫が騒ぎ出すのを堪えきれなかった輩は、まさか自分の分だけ出前を注文するわけにはいかないので、その時残業している人に一緒に何か注文しますか?なんて一応声をかける。
オレは注文の取りまとめ、精算などと言うめんどくさいことはしたくないので、どんなに腹が減ってようが、この後激しく残業しなくてはならない状況だろうが、自ら出前など絶対にしない。
どうしても我慢ならないくらいに腹が減ったら、こっそりと一人でラーメンでも食いに出掛ける。
それこそ誰にも見つからないようにひっそりと・・・。
つーかさ、メンドクセーのヤダもんね。
でも今日は後輩が声をかけてくれたので便乗することにする。
でかしたぞ後輩!本当は腹減ってたんだよね、オレ。
で、お前は何を頼むんだ?
最初に出前を取ろうと決意し、注文の取りまとめや精算を引き受けようとする勇者のみが、本日の夕飯を頼む店をチョイスすることが許される。
どうやら今日は中華料理が選択されたようだった。
俺はあんかけ焼きそばにしようと思います。
本当はそばが食いたかったオレは、中華などというヘドロのような選択をしでかした後輩に軽めのプレッシャーをかけてやろうと企んだ。
そっか、んじゃオレもあんかけにしてくれ。ただし、粒あんね。
渾身の出来だと思った嫌がらせも、当の本人には伝わらなかった様子だった。
は?意味分かんないんですけど?
いいからお前はあんかけ焼きそば2つ!一つは粒あんにしてくれって言え!
分かりました・・・。でもね、もし無いって言われたらどうしますか?
普通に注文通る方が気持ち悪いってんだよ。
でもね、そこはアレですよ。オレも大人なもんですから、ごり押しはしませんよ。
そりゃアレだ、そん時はこしあんでいいよ・・・。
あぁ、そう言うことですか。分かりましたよ。
やっとオレの言わんとしたことを理解してくれた後輩。
程なくして電話で注文を開始する後輩。
エビチャーハンとチャーシュー麺と冷やし中華が1つずつ、それとあんかけ焼きそばを2つ、一つは粒あんにしてください。
よし、指令通りの注文をしたみたいだ。
さすがは我が後輩、先輩の命令は絶対だと言うことをよく理解している。
先輩、20分ほどで届くみたいですよ。
へー、意外と早いんだね。
ん?つーか、ちゃんと注文聞いてくれたんだ・・・粒あんかけ焼きそば・・・。
オレは待ちきれなかった。
粒あんかけ焼きそばが届くのが待ちきれなかった。
自分で言ったものの、麺の上に本当にあんこが乗ってきたらどうしようなんてドキドキしながら、注文の品が届くのを待った。
あぁ何て長い20分なんだろう・・・。
粒あんかけ焼きそば・・・。
一体どんな焼きそばが届くのだろうか・・・。
お待たせしました!
事務所のドアを威勢良く開けたのは、アルバイト店員らしき若い男だった。
どうやら注文の品が届いたみたいだ。
オレは期待に胸を膨らませながら、応接室のテーブルの上に並べられた注文の品々の中から粒あんかけ焼きそばを捜した。
だが、そこに置かれていたのはごくごく普通のあんかけ焼きそばが2つであった。
いやー、注文受けてくれたのが意外にノリのいいおばちゃんでしたよ。まぁ彼女にしてみたら、ちょっとふざけた注文なんて日常茶飯事、どうやらありふれた日常会話の一つだったんでしょうね、当たり前のように対応してくれましたから。普通に聞き流してましたよ・・・。
オレは黙ってあんかけ焼きそばを食いました。
750円、ちょっとリッチな夕食を何事もなかったかのように胃のなかにぶち込んだ。
作成途中の資料をどのように完結させようかなぁなどと、頭の中で考えながら味気なく夕食を摂取した。
その味はというと、普通に美味しかったコトを覚えています。
以上。
幸せのカタチ。
マサルと言う名の友人がいる。
高校時代に知り合い、未だにその腐れ縁は続いている。
マサルはとても勉強の出来るヤツだったが、オレみたいな劣等生とも嫌な顔一つせずに連んではパチンコだとかナンパだとか、まぁとにかく、ろくでもないコトを一緒にしてきた言わば悪友だった。
マサルには特技があった。
とにかく、ギャンブル全般に対する恐ろしいほどの強運を持っていた。
じゃんけんはもとより、パチンコで負けてるのを見たことも無かったし、マージャンでもまるで悪魔でも乗り移ってるのかと思うほどの引きの強さを見せ、いつも一人勝ちを収めた。
そんな中でもっともオレ達を驚かせたのはトランプの強さだった。
昼飯を賭けたポーカーだとかブラックジャックは最強で、オレは何度ヤツにカツ丼を奢ったコトだろう・・・。
マサルの勝率は8割を越えるほどだった。
ここで特筆すべきは、ババ抜きに対するマサルの最強伝説である。
オレの記憶する限り、ヤツがババを引いたことは一度だって無い。
まるでカードが透けて見えてるのか?と疑いたくなるほどに、ババ抜きに対して神懸かり的な強さを持っていた。
コレに関しては、マサルの勝率は100%であったと言うことは過言ではない。
あの頃からもう15年以上の時が経過し、オレはオレなりにいろんな出会いがあり、様々な人々と関わってきたが、マサルほどギャンブル運が強いヤツ、特にババ抜きで負け無しってヤツには未だ出会っていない・・・。
先日、そんなマサルから寿マークの切手が貼ってある手紙が届いた。
それは結婚式の招待状だった。
そう言えば久しくアイツの顔見ていなかったなぁと、オレは返信用のハガキの出欠確認の欄の 「出席」 に丸をつけてポストへ投函した。
6月の花嫁は幸せになる。
そんな言葉なんて似合わないような、アウトローな感じのマサル。
この時期に結婚式を挙げるなんてらしくないなぁと思いながらも、オレは旧友の祝いの席に感慨深く付きつつ、彼の幸せの時を半笑いで見守った。
披露宴が始まり、新郎の紹介が行われた。
新郎のマサルさんは、昭和50年○月○日、○○県に生まれ・・・。
お決まりの文句で、出生から学歴そして現在の仕事について司会者から紹介された。
そんなことはどうでもよかった。
マサルの経歴なんぞ今更聞いてもしょうがないもんね。
それより花嫁がどんなヤツなのか興味があった。
激しく興味津々だった。
続いて花嫁の経歴が紹介される。
新婦ヨシコさんは、昭和35年○月○日、○○県に生まれ・・・。
え?
オレは耳を疑った。
今、昭和35年生まれって言わなかった?
うそーん!?
15歳も年上の嫁さんなの?
いや、確かにどう見ても年上だとは思ったが、一回り以上だとは思わなかった・・・。
今日ここでマサルのババ抜き不敗神話は幕を下ろした・・・。
愛の形は様々であります。
オレが、オレなんかがとやかく言うことではありません。
そして君に、いや君たちに幸せあれ!
以上。