幸せのカタチ。
マサルと言う名の友人がいる。
高校時代に知り合い、未だにその腐れ縁は続いている。
マサルはとても勉強の出来るヤツだったが、オレみたいな劣等生とも嫌な顔一つせずに連んではパチンコだとかナンパだとか、まぁとにかく、ろくでもないコトを一緒にしてきた言わば悪友だった。
マサルには特技があった。
とにかく、ギャンブル全般に対する恐ろしいほどの強運を持っていた。
じゃんけんはもとより、パチンコで負けてるのを見たことも無かったし、マージャンでもまるで悪魔でも乗り移ってるのかと思うほどの引きの強さを見せ、いつも一人勝ちを収めた。
そんな中でもっともオレ達を驚かせたのはトランプの強さだった。
昼飯を賭けたポーカーだとかブラックジャックは最強で、オレは何度ヤツにカツ丼を奢ったコトだろう・・・。
マサルの勝率は8割を越えるほどだった。
ここで特筆すべきは、ババ抜きに対するマサルの最強伝説である。
オレの記憶する限り、ヤツがババを引いたことは一度だって無い。
まるでカードが透けて見えてるのか?と疑いたくなるほどに、ババ抜きに対して神懸かり的な強さを持っていた。
コレに関しては、マサルの勝率は100%であったと言うことは過言ではない。
あの頃からもう15年以上の時が経過し、オレはオレなりにいろんな出会いがあり、様々な人々と関わってきたが、マサルほどギャンブル運が強いヤツ、特にババ抜きで負け無しってヤツには未だ出会っていない・・・。
先日、そんなマサルから寿マークの切手が貼ってある手紙が届いた。
それは結婚式の招待状だった。
そう言えば久しくアイツの顔見ていなかったなぁと、オレは返信用のハガキの出欠確認の欄の 「出席」 に丸をつけてポストへ投函した。
6月の花嫁は幸せになる。
そんな言葉なんて似合わないような、アウトローな感じのマサル。
この時期に結婚式を挙げるなんてらしくないなぁと思いながらも、オレは旧友の祝いの席に感慨深く付きつつ、彼の幸せの時を半笑いで見守った。
披露宴が始まり、新郎の紹介が行われた。
新郎のマサルさんは、昭和50年○月○日、○○県に生まれ・・・。
お決まりの文句で、出生から学歴そして現在の仕事について司会者から紹介された。
そんなことはどうでもよかった。
マサルの経歴なんぞ今更聞いてもしょうがないもんね。
それより花嫁がどんなヤツなのか興味があった。
激しく興味津々だった。
続いて花嫁の経歴が紹介される。
新婦ヨシコさんは、昭和35年○月○日、○○県に生まれ・・・。
え?
オレは耳を疑った。
今、昭和35年生まれって言わなかった?
うそーん!?
15歳も年上の嫁さんなの?
いや、確かにどう見ても年上だとは思ったが、一回り以上だとは思わなかった・・・。
今日ここでマサルのババ抜き不敗神話は幕を下ろした・・・。
愛の形は様々であります。
オレが、オレなんかがとやかく言うことではありません。
そして君に、いや君たちに幸せあれ!
以上。