夏の夜の風物詩。 | 明け行く空に…。  ~ひねもすひとり?~

夏の夜の風物詩。

夏の風物詩と言ったらそれは海!山!花火!
それぞれ違った意見もあるでしょうが、まぁ大まかに言えば大体こんなとこでしょう。

それに付随するキャンプだとか海水浴だとか、はたまた肝試しだったりスイカ割りだったりと、夏限定のお楽しみってのは挙げたらキリがないですね。


そんな中で、オレのハートをがっちりキャッチして離さない夏限定のイベントがある。
それはアレですよ、蚊。
蚊との対決ですよ。

奴らは夜な夜な人々が寝静まる時間に寝室にやって来て、ぷぅ~んだったり、ぶぅ~んだったりする独特のサウンドを響かせて、その音色を聞くもの全てを恐怖のどん底に叩き落してくれる。
撃退用の線香だとか電子機器を用いて退治したつもりでいても、いつのまにやら第2陣3陣と次々に刺客を送り込んでくる彼らとの対決は、正に夏の風物詩と言ってよいのではないかと思うのである。



先日も命知らずのモスキート野郎が、オレの安眠を妨害しようと羽音を響かせてやってきた。
案の定、蚊撃退用の電子機器が奏でるデスメタルをものともしない、強靭な肉体を誇るシマシマ模様の精鋭部隊が、着々とオレとの距離を縮めながら接近してくるのが分かった。
音から推測するにその数は1匹ではない。だが詳細は不明だ・・・。

オレはゆっくりと体を起こし臨戦態勢を整える。
そして編隊を組んで攻撃の機会を窺っているだろう見えない敵に対し、耳をすましてその大まかな位置を捕捉しようと試みる。
敵もなかなかのモノで、こちらのレーダーに捕らわれてなるものかと、一度組まれた編隊を拡散させるという頭脳プレイに走る。
縦横無尽に飛び回る敵が奏でる死の協奏曲は、こちらの戦意を着実に奪っていく。
敵の作戦により聴覚レーダーは使い物にならなくなったが、こちらにはまだ視覚という最強の捕捉手段がある。奴らがいかに優れた飛行能力を持つとしても、聴覚視覚の2つのレーダーを駆使したこのオレ様から逃れることなど出来るはずなどない。
オレは早速視覚レーダーの機能を使用するため、蛍光灯のスイッチを引っ張り明かりを灯した。



ちょっと、眩しいでしょ!



隣で寝ている嫁さんが物凄い剣幕で怒りをむき出しにする。
思わぬ新手の強敵出現にいささか怯んでしまった・・・。
仕方なくオレは最小限の状態まで明かりを絞る。
大丈夫だ、これならいける!
音のするほうに視線を向けてみる。
いた!1匹目をロックオン。
緊迫したこの状態を保ちつつ、さらに音を追ってみる。
2・・・3・・・3匹!敵は3匹だ!
敵の姿が丸裸になってしまえばもう怖いものなどない。
オレは枕元にあった新聞紙を丸め、利き腕にそれを握り締めて攻撃のチャンスを窺っていると、ロックオンした1匹が柱にとまった。
間髪入れずに伝家の宝刀を振りぬく。



バン!



よぉ~し!1匹目を捕獲!!
この勢いに乗じて2匹目を捕捉にかかる。
ロックオンを完了して攻撃のチャンスを待つ。



ぷぅ~・・・・ん



なかなか着陸しようとしない敵機、しかしながら空中戦となるとこちらはあまりにも分が無さすぎる。
業を煮やしたオレは、ついに禁断の兵器に手を伸ばすことになった。
右手に伝家の宝刀、左手にリーサルウエポン(殺虫剤)を握り締め、その銃口を2匹目の強敵に向けて発射の態勢を整える。



ちょっと待てぃ!



その声のする方を振り返って見ると、3匹目の刺客がこちらを睨み付けて叫んでいた。



この娘がどうなってもいいのか!?武器を捨てろ!



我が最愛の愛娘の足にすがり、その鋭利な口先を今にも突き刺そうとしている第3の刺客。



分かった!分かったからそれだけは勘弁してくれ!!



オレは泣く泣く武器を手放した。
その様子を含み笑いで見つめるヤツは、勝利を確信したような表情を浮かべていた。
そんな切迫した状況に全く気が付かずにすやすやと眠る娘。
すると、暑さに不快感を覚えたのだろうか、彼女は突然寝返りをうった。



ぶち・・・。



そして第3の刺客は永久の眠りについた。
このチャンスを逃してなるものかって具合に手放したリーサルウエポン、いや面倒くさいや。つーか単なる殺虫剤を手に取りさっさと2匹目の強敵、いや残った蚊にぶしゅっと吹きかけ、はいさようなら・・・。



ちょっと!こんなところで殺虫剤使わないでよ!



再度嫁の叱咤を浴びる。
本当の敵は他でもない・・・。
ここにいた。



まぁそんな感じで、アレもコレもひっくるめて夏の風物詩ってコトですよ。




以上。




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