美しい思いを出来るだけ傷つけぬように。 | 明け行く空に…。  ~ひねもすひとり?~

美しい思いを出来るだけ傷つけぬように。

日記ってのは、元来毎日綴ってなんぼであると常々思っている。
その日の出来事を取りとめも無く書き記す。
ただそれだけでいい。
たとえば今日の朝何を食ったか、今日の昼何を食ったか。
そして今晩の酒の肴が何であったのか。
それだけでも、後に読み返したときにその時の記憶を呼び起こしてくれる。
 
ところがどうだ、オレの日記は。
ダラダラと殴り書いているのはいいが、頻度があまりにも低すぎる。
一体毎日オレは何をしとるんだ!と、思わざるを得ない。
なぁ、なんか書くことあるだろうよ、オレ、と過去の日記を読み返すと言いたくなる。
 
だが、オレが日記を書き記すのは、後に自分が読んで楽しむため……と言う事実も否定できない。
それなのに、今朝は納豆と味噌汁とお新香だとか、昼はいつもの日替わり弁当だとか、夜はビールとロッキンチェアーとか書いてあったところで「ん?意味がわかんねー」と困惑するのは間違いない。
でもでも、あることないこと、早い話が日記に嘘を書くわけにはいかないしなぁ……。
と、思う今宵である。
 
 
閑話休題。
 
 
先日のことだが、オフィスに着きいつものようにメールチェックと一日のスケジュール確認をしていると、上司がオレを呼んでいるのに気がつく。
おいおい、朝から何の用だよ……と頭を掻きながら声の主の下へと歩み寄る。
そうすると、上司は昨日オレが作成した先の会議の議事録を机の上に広げ難しい顔をして呟く。
 
「なぁ、この議事録だけどさ、よく出来ているけどお前の主観が大分織り込まれているように取れるのだが、本当にこんな風な会議だったのか?」
 
オレはまた頭、そしてケツを掻きながら面倒臭そうに答えた。
 
「会議の流れと趣旨、そして結論に至るまでの過程は性格に記したつもりです。ですが言葉、単語のチョイスは確かに私の主観によるものであることは否定できません」
 
上司は眉をしかめて言う。
 
「いいか、議事録というのはありのままを記すのが大前提であるのはお前も知っているだろ。これじゃまるで英国紳士同士の口喧嘩じゃないか。書き直せ!」
 
ちょっと何を言っているのか分からなかったが、まぁオレも大人なもんですから命令に従い書き直した。
 
 
※以下、訂正後と訂正前の一意部内容を発言ごとに記す。
 
 
役員A(訂正前)「今の事務局の説明によると、我が社の7月の総売り上げ金額から想定される純利益は、昨年同期と比較すると13%減少していると言うことになるが、その後の説明からではその減少比率を今後4半期で解消するためのプランからは具体性を感じ取ることが出来ない。そのことについて販売担当役員はどのような見解をお持ちなのでしょうか」
 
役員A(訂正後)「おめだずのはなすだど、おらいのすづがづのもうげがきょねんなより13%もすぐねってごったげっと、あいっだべ?なじょすてほいづくろずさもっていんかって決めっぱぐってんだべ?ほんで販売のやぐいんすたず、なんじょに考えでんのっしゃ?」
 
役員B(訂正前)「前年同期の実績と比較すると、確かに売り上げは減少という結果を示しているが、先ほど説明した資料に記されたグラフに示されている損益分岐点からも読み取れるように、この後の数ヶ月で巻き返しは十分に可能である。秋からは我が社の主力商品の販売が開始され、今年はそれに対する販売促進に係る経費を10%上乗せしている。この猛暑による影響で夏の売り上げは下降線を辿ったが、それを埋めるだけの十分な準備はしてある。恥ずかしい結果には決してしないつもりだ」
 
役員B(訂正後)「きょねんなはおもしぇっくれ売れだんだでば、なんだがしゃねげっと。ほいっとくらべっがらわげわがんねぐなんだげっとも、さっきなかだったみでに、とっけすごどでぎっがら大丈夫だでば。ほれ、秋なっとだまっででも売れるやづ店さだせっがら問題ねーでば。あいったど、こどすはそいっちゃぜんこかげで宣伝すんだがら。すかすなんだなや、こどすはあっつすぎっから誰もこったらものくでぐねーがすてはっぱり売れねがったげっとも、ほんでもほの分あぎがらとっけすがら大丈夫だがら。結局おしょすぐねー結果になっからみでらいん」
 
 
もはや何を言っているのか分からないであろう事は言うまでもなかろう。
 
A4の用紙10枚にも及ぶ議事録を、オレは全てこのように書換えて再度上司に提出した。
関東エリアから、ここ東北の田舎町へとやって来た上司には理解することは出来ないだろうことは容易に想像がつく。
だが、ありのまま記せと言ったのはあんただ。
 
ま、結局もう一度書き直せといわれたのは言うまでもありませんけどね。
 
 
そんな感じで、時には有ること無いこと書く事も必要なのかなぁと思う今宵でした。
 
だ、だめ?