鮮血を2 , 3滴。 | 明け行く空に…。  ~ひねもすひとり?~

鮮血を2 , 3滴。

しかしさ、今年の夏の暑さっておかしくないか?
なんて言うのかな、もう少しこう、加減みたいなもんがあってもいいと思うよ。
 
ガリガリ君がめっちゃ売れてるらしいね。
あとビールの売り上げも凄いらしい。
つーかさ、ガリガリとかどーでもいいけど、ビールの売り上げ急増には一言物申したいことがある。
きっとこの秋には、大手ビール会社が還元イベントとか何とか言い出して、訳の分からない懸賞とかやっちゃうことは目に見える。
まぁそれはいいんだけど、ちょっと待てよって話。
オレなんて、暑かろうが寒かろうが、年中ビール飲んでるからね。
自他共に認めるビール党。
政権が交代しようが知ったこっちゃ無い。
自民でも民主でも、あんたが大将でもなく、オレはもう何年もビール党支持なんだよ。
それがなんだよ、ちょっと暑いからって他の党に浮気しちゃったヤツらには還元しちゃうのに、年中ビールラブのオレには何も無しかよ。
言っとくがな、1杯2杯目ビールでその後は焼酎とか言っちゃうやつらと一緒にしてもらっては困るんだよ。
オレとか初志貫徹、猪突猛進に一晩ビールだからな。
いいかビール会社、どうせならオレを表彰しろ。
そこんとこヨロシク。
ここんとこご無沙汰。
 
閑話休題。
 
マイカー通勤のオレは、昼休みになりランチを済ませると、決まって駐車場に止めてある車へと向かい、そこでわずかばかりの仮眠を取り午後の任務への鋭気を養う。
決して昼休みにまで電話を取らされるのが邪魔臭くてオフィスから逃げ出してる訳ではないので、そこんとこヨロシク。
だが昨今のこの猛暑、日中の車内は正に生き地獄。
朝に車をそこに駐車した際、全ての窓を少しだけ開けておいたくらいでは最早太刀打ちすら出来ないことは容易に想像がつくであろう。
それでもオレは、お昼になると我が愛車へと向かい、そこで我慢比べを始めながら汗だくで仮眠をつるのだ。
気がつけば汗だくとなり、午後の鋭気どころか体力の全てを失うことになろうとも。
 
 
今日もお昼の汗だくミッションを終えたオレは、帰宅の際また車に戻った時にいくらでも快適にエンジンを始動できるようにと、また少しだけ窓を開けてオフィスへと戻った。
が、本日の任務を終了し車へと戻り自宅へ向けて走り始めたとき、これが仇となったことに気がついた。
 
外はすっかり暗くなり、もはやクーラーも必要ないくらいに快適な車内。
颯爽とアクセルを踏みしめ車を加速させるオレは、いつものように高速道路の無料区間へと飛び乗り、帰路を急いだ。
車内に響くのはお気に入りの音楽。
否応無しにオレのテンションはあがった。
 
が、程なくして己の左腕に違和感を感じた。
か、痒い……。
 
時を措かずして、患部がぷっくり腫上がったのを感じた。
!!!
更に一箇所、今度は首筋から痒みを感じる。
オレは車内の音楽を消して耳を澄ます。
心地よいエンジン音に混じり、耳を劈くような嫌なモスキート音が響く。
 
「くっ、くそ!窓を開けていたから蚊が入り込みやがったか!」
 
場所は高速道路、移動速度は時速100km。
車を駐車して敵を排除するどころか、停車することすら許されない道路。
いやこれは緊急事態だ!
などと声を大にしても誰も聞いてはくれないことは容易に想像がつく。
何も出来ないオレに、敵は調子に乗って耳元でブンブンとホバリングを開始する。
ふざけんじゃねー、これでもくらえっ!
そう言ってオレは全ての窓を全開にし、ほんの少しだけ更にアクセルを踏み込む。
時速は100kmを越え、車内にはスピードに乗った風邪が吹き抜ける。
程なくして窓を閉めると、車内に静寂が訪れる。
 
「どうだっ!どうやら高速道路の塵と化したようだな」
 
が、安息の時は長くは続かなかった。
 
『ぶーーーん』
 
オレは落胆した。
そして視線を前方に向けたまま車内を手探りで物色する。
 
「ぶ、武器はないのかっ!?」
 
当然車の中には殺虫剤の類は常備しているはずは無い。
だがしかし、オレは己のシャツのポケットの中に強力な武器を発見した。
ぬははははーーー!
そしてオレはしっかりと窓を締め切り、徐に取り出したタバコに次々と火を灯し灰皿にそれを突っ込んだ。
 
「喰らえっ!人をも病に導く副流煙攻撃!」
 
 
車内に充満したタバコの煙は、目論見どおりモスキート野郎をスモーキーロビンソン状態へと落としいれ、オレはこの戦いに勝利した。
 
 
 
さて、帰宅完了し勝利の美酒に酔いしれようと、今日もビールの栓を抜くオレ。
うん、やはり美味い。
 
美味い酒と美味いタバコ、この組み合わせがオレに至福の時をもたらす。
だが、この組み合わせのひとつ、タバコが何処を捜しても見当たらない。
 
くそっ、たった一匹の蚊を始末するために、今宵のタバコを全て灰にしてしまった。
 
 
 
仕方が無いので今夜のお供を捜し冷蔵庫に首を突っ込む。
そしてオレは真夏のお供、ガリガリ君(ソーダ味)に手を伸ばし、今宵はそれにかじりつくことにした。
 
当たりが出るといいな。
 
 
そんな感じで。