副部長と部長を倒した新入部員のスパ開始のゴングがなってから数分が経過した。しかし、お互いに有効打と呼べるものは決まっていなかった。初めて戦うサウスポーの選手に戸惑っている新入部員。新入部員の力量を見極めようとする副部長。
「(この人、見かけによらず慎重なんだな。それに、動きもすごく洗練されてる。でも、だいぶサウスポーの動きにも慣れてきた。実力はまだ分からないけど・・・いったん攻めてみるか。)」
「おまえ・・・。」
「?」
「またワイのこと“見かけによらず”って思っとったんちゃうか?」
「え!?いや、そんなことないッスよ。」
「動揺がばればれやでっと!」
スパーン!
「あがっ!?(しまった!?)」
「油断大敵~ってな。ほんならそろそろいくで~!」
「(来る!ガードを固めないと。)」
一瞬の隙を突きフックを決めた副部長。対して冷静に対処しようとする新入部員。しかし・・・
「ほれほれ!!」
「(ぐぁ・・・。なんて重いパンチなんだ・・・。ガードが・・・。)」
「その細い腕でどこまで耐えれるやろなぁ。」
決して一年生にしては細くはない新入部員の腕を軽く細いと言ってのけてしまう副部長。
「(確かにそんなにもたない。けど・・・。)」
「これでくたばれや!」
「(いまだ!)」
新入部員は大振りになった副部長のパンチを紙一重でかわし、部長を一撃で葬った渾身のボディブローを放った!
「油断大敵っすよ!」
ドズ!
「な!?」
「わるいなぁ。ちっとくらいハンデがあったほうがええと思とったんやけど・・・。お前のパンチじゃワイは倒せんわ。」
「そんな!?」
部長すらも耐えられなかった渾身のボディブロー。副部長といえどもただではすまないと思っていたにもかかわらず、全く効いていないことに戸惑いが隠せない新入部員。
「ま、一年坊主にしちゃぁなかなかいいセンいっとるかもなぁ。ワイを倒すんやったらもうチョイ筋肉つけなあか」
「でりゃ!!」
ドッゴォ!!!
「ぐへっ!」
「おりゃおりゃおりゃ!!!!」
ドスドスドスドスドスドスドスドスドス!!!!!!
「ぐおおぉぉぉぉーーー!!!」
完全に油断しきっていた副部長にボディのラッシュを叩き込む新入部員。先ほどの強度はどこへやら、次々とめり込む新入部員の拳。
「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃーーー!!!!!!」
「うぐぐぐぐぐ・・・・・・あんま・・・調子に・・・乗るなや、ガキが!!」
ドッボォオオオオーーーーーー!!!!
「がぼぇぇええぇぇーーーー!!!!」
部長のパンチを耐えた新入部員の腹筋。しかし副部長の前ではその自慢の腹筋は内臓を守る分厚い防壁としての役目を果たさず、深々と副部長の拳を包み込むようにめり込んでいた。新入部員の体はくの字に折れ曲がり、一瞬だが足がリングから離れたように見えた。
「(俺の、鍛えた腹筋が・・・!?)」
ググググメリィ!!
なんと!副部長はめり込んだ拳をそのままに新入部員を軽々と持ち上げてしまった。腹で全体重を支えている新入部員。自慢の腹筋も機能せず、どんどんめり込んでいく副部長の拳・・・。
「げぼぉ!!(やば、なんか・・・上がって!?)」
「おっと。」
どしゃぁ!
「うぅ・・・ぐっ・・・がはぁ・・・ぁう・・・。」
リングに落とされ腹を抱えてのた打ち回る新入部員。しばらく無表情で見下ろしていた副部長であったが。
「あ、あぁーー!またやってもうた!堪忍なぁ坊主!ワイ切れると手加減できんくなんねん。去年もそれで部長をリングに沈めてもうてなぁ。あ~大丈夫かぁ?ちょ、誰か保健室つれてったってーな!!てかちゃうわ。ワイがつれてったったらえぇねんな!すまんお前ら!あと片付けといてな!!」
そういって副部長はボクシングスタイルのまま部室から出て行った・・・。そして女子の悲鳴だか歓声だかが上がったのはちょっとした話題となった・・・。こうして進入部員達の洗礼は幕を閉じた・・・。
(完)?