2021年11月11日(木曜日)~11月14日(日曜日)に東京都荒川区東日暮里にある劇場・日暮里d-倉庫でVACAR ENTERTAINMENT(劇団オモテナシ)による演劇『碧い湖に住むニーナ』が公演されましたので鑑賞致しました。

 主演は舞台女優のきみと歩実さんです。きみとさんが出演される演劇を観劇するのは劇団アルファーによる公演『五・五合目の海』(於いてシアターグリーン BIG TREE THEATER。開催日2018年9月12日(水曜日)~2018年9月17日(月曜日))以来です。実は『五・五合目の海』の終演後にきみとさんのチェキを撮影した(今回の公演では物販はありませんでした)時に

「チェキをブログに載せていいです。公演期間中にブログを書いてください。」

と言われたのに3年経っても書いていないのでお詫びに『碧い湖に住むニーナ』についてのブログを執筆する次第です。

 

 会場となる日暮里d-倉庫は住宅街にあり、私は夜に真っ暗になってから訪問したので、どこから敷地内に入ればいいのか分かりませんでした。

 

 本作の粗筋は、以下の通り。

 人間の間で「誰も立ち入ってはならない」と言われている深い森の中の湖に住む人魚の少女・ニーナは人間に変身して正体を隠しながら高校生活を送っていた。或る日、急病で倒れたクラスメイトに対し、人魚しか持っていない薬の水で治療したことがきっかけとなり、「この町に人魚がいるのではないか」という噂が広がり、騒動となってしまう・・・。

 

 人魚役のきみとさんは、人魚の姿の時は下半身が魚となって湖に浸っているのですが、本当に水槽に浸ってピチャピチャやっています。演劇的には水槽に浸らなくても「見立て」で湖にできそうですが、敢えてリアリティーを追求するところが立派であります。

 この人魚の姿なんですが、流石きみとさんは長年に亘ってコスプレイヤーとして活躍されているだけあって、見事なクオリティーでした(私が初めてきみとさんのコスプレ姿を拝見したのは2015年~2016年のどこかでした)。きみとさんがコスプレイヤーとして活躍されているからこういう役が回ってきたのか、それとも偶然なのかは不明ですが、きみとさんに相応しい配役であったと言えます。

 無論、外見だけが立派なのではなく、「人間が人魚の話をしていると人魚の名誉の為に反論したくなるが、しかしあまり具体的に反論すると自分の正体がバレてしまう」というジレンマを抱えた姿が観客の胸に迫ってまいりました。

 

 ところで私は大変申し訳ないことに開演直前ギリギリに入場するという失態を犯した為、前説している最中に入場したのですが、前説によれば、公演中、合図をしたら観客はスマートフォンで公演中の様子を撮影しハッシュタグを付けてインターネット上に投稿せよと言うのです。演劇の或る場面で公演中の様子を撮影しハッシュタグを付けてインターネット上に投稿せよと言われた事例は、劇団コレカラクルーズによる公演『魔紅蛇螺城の悪姫』(於いてシアター風姿花伝。開催日2017年4月13日(木曜日)~2017年4月23日(日曜日))以来です。

 ↓という訳で、こちらが撮影タイムの写真であります。

 女優陣が観客に向かって手を振っているのは、決して撮影タイムだからではなく、ストーリー展開の中で手を振る場面だからです。恐らく撮影タイムの為に観客席に向かって手を振るストーリー展開にしたのでしょう。一石二鳥を実現した上手い脚本です。

 ↓こちらは湖畔で水鉄砲を発射し盛り上がっている場面。

 帝国劇場のような巨大な劇場で水を使った作品があるという話は聞きますが(私は観劇したことはありません)、小劇場でこんな大掛かりな仕掛けを施した例はないのではないでしょうか。流石前売り9800円だけあって仕掛けに予算が投入されています。

 因みにこの場面は、登場人物が湖で溺れるというシリアスな場面の次の場面です。さっきまで登場人物が湖で溺れていたのにこれだけびしょ濡れになって盛り上がっているというのは、ストーリー展開の整合性よりも観客を楽しませる娯楽性を重視していることであり、これはつまりインド映画の作劇手法です。つまり本作はインド映画と同じ手法で作られた作品であったと言えます。

 最後に余談ですが、脚本家の言葉遣いの中で、「盥回し」という言葉の意味を間違えて使っているのではと思い、ちょっと気になりました。