営業利益4割減の武田薬品 大型買収が負担に | ☆___________「財界」日本経済を斬る!!!

営業利益4割減の武田薬品 大型買収が負担に

「過去の成功体験を過信」



武田薬品工業の前期営業利益が、近年にない低水準に落ち込んだ。スイスの製薬企業ナイコメッド買収(買収金額約1兆円)にかかわる費用やのれん償却費の増加に加え、グローバル製品の特許切れが打撃となった。一方で開発投資に見合う新薬の創製や国内営業体制の強化も課題として浮上、収益性の改善が経営上の最大テーマになっている。



予想される営業利益は、11年度の4割減となる1600億円。過去10年で最低となることが確実だ。ピークだった06年度の4585億円から見て、およそ3分の1のレベルにとどまる。売上高は1兆5500億円の見込みで、営業利益率も10・3%に低迷。他産業との比較ではまだ高いものの、高収益を誇る製薬産業の国内トップとしては、いかにも物足りない数字である。



その最大ともいえる要因は企業買収に伴う費用だが、もう一つは世界展開する大型品の減収だ。米国で昨年8月、糖尿病治療薬「アクトス」の特許が満了し後発品が参入。国内市場での不振も手伝って、前期売上高は11年度2962億円の5割程度に減少する。他の大型品も軒並み減収を余儀なくされている。



こうした状況を打開するには、新たな成長ドライバーが必要だ。しかし、国内の研究開発から生み出される新薬には、まだ高血圧や高脂血症といった生活習慣病関連が残る。世界規模の製薬企業には、がん領域をはじめとして医療上の満たされないニーズに応える新薬開発が求められるが、完全にはその軌道に乗りきれていない。これまで生活習慣病のコア領域で業績を牽引してきた武田だが、これら製品の収益性は、今後低下すると指摘されている。



「過去の成功体験からの脱却」「成功体験を過信していた」──。社長の長谷川閑史氏は、こうした発言を繰り返す。



国内市場では販売計画未達の主力品が目立つ。強力といわれてきた営業体制にもテコ入れが必要になりそうだ。中期経営計画では前期を営業利益のボトムとしているが、その後の上昇予測は緩やか。当面の目標は営業利益率20%台の確保。そこに向けてクリアすべき課題は少なくない。