スプリント買収に米当局が承認も素直に喜べないソフトバンク | ☆___________「財界」日本経済を斬る!!!

スプリント買収に米当局が承認も素直に喜べないソフトバンク


当初は割安な中国メーカー機器で米国内での普及を狙ったが…



ソフトバンクによる米携帯電話3位スプリント・ネクステルの買収が確実になった。



中国・人民解放軍出身の創業者が起業した中国華為技術(ファーウェイ)など中国製の通信機器を排除したことでソフトバンクによる買収は、安全保障上の問題はないと米当局がお墨付きを与えた形だ。



米衛星放送大手のディッシュ・ネットワークはスプリントに対して、ソフトバンクを上回る金額での買収を提案したが、資金調達の目処が立たず、衛星放送と携帯電話のシナジー効果を明確には提示できなかった。


ただ、今回は米当局の介入によりソフトバンクが当初描いていた米国事業のシナリオの変更が余儀なくされた。ソフトバンクは、NECや富士通といった日の丸メーカーではなく、ファーウェイなどの安い基地局などを使ってコスト削減を進めた日本での成功体験を米国にも持ち込もうとしていたからだ。



そこで米当局は米国内で中国製機器を導入すれば米国の安全保障が脅かされるとして、阻止する動きに出たわけだ。



孫正義社長は米国でもLTEの本格展開に意欲を見せるが、スプリントが日米欧で一般的なFDDLTEを採用するのに対し、スプリントが完全子会社化を目指している米無線通信大手のクリアワイヤはTDLTEと通信規格はばらばら。



ソフトバンクは日本で「両方のノウハウを持つ」とはいえ、投資の分散は避けたい。中国移動通信(チャイナ・モバイル)や英ボーダフォンなどと共に普及を進めるTDLTEに集中したいのが本音だろうが、これも中国政府の後押しであることが気になるところ。



さらに、ソフトバンクの「生殺与奪の権」を握る米アップルの「iPhone」の新機種がTDLTEを採用するかどうかも不透明なままだ。



課題が多いソフトバンクの米事業だが、最大の懸念はスプリントを率いるダン・ヘッセ最高経営責任者(CEO)の存在。剛腕経営者で、どん底のスプリントを救った立役者だけにヘッセ氏の意向は無視できない。


孫社長の手綱さばきによっては対立の芽も出てきそうだ。