海外で大型M&Aが進む中、薬価「毎年改定」議論が浮上 | ☆___________「財界」日本経済を斬る!!!

海外で大型M&Aが進む中、薬価「毎年改定」議論が浮上

製薬メーカー、医者、患者で相応の負担を



政府・経済財政諮問会議で民間議員が提案した薬価の「毎年改定」が波紋を広げている。



民間議員は、2004~10年度で毎年、薬価を改定していれば「累積で国民負担額7500億円を効率化できた可能性がある」と試算データを提示。だが、製薬業界は「とんでもない提案」(日本製薬団体連合会会長・エーザイ社長・内藤晴夫氏)と猛反発。製薬業界は、2年に1回の改定で約5000億円を〝拠出〟しており、それ以上の負担を求められれば「国が成長戦略の柱に据えるような医薬品産業のグローバル化は望めない」(内藤会長)と主張している。



毎年改定案は、05年にも「頻回改定」の名で厚労省が提案、09年まで断続的に議論が行われたことがある。「市場実勢価格が下がっているのに、2年間も放置しておくのは患者・納税者の立場からは許されない」との問題意識が背景にあったからだ。



だが、大病院、大手調剤チェーンなどバイイングパワーに勝る買い手が、医薬品卸との価格交渉を引き延ばし、安い提示価格を引き出そうと年度末まで粘るため、信頼度の低い市場実勢価格データしか揃わないなど、業界独特の悪しき流通慣行が障害となり、厚労省は頻回改定の実施を断念した経緯がある。



今後の行方について、内閣府関係者は「安倍首相の具体的指示があり、6月の骨太方針に盛り込まれるかどうかがポイントだろう」と解説する。



14年度の薬価改定は、医者への診療報酬は引き上げ、薬価は今回も引き下げとなった。



新薬の開発が困難になる中、米ファイザーは約11兆円で英アストラゼネカの買収交渉を進め、独バイエルは米メルクの市販薬事業を約1兆4500億円で買収する独占交渉を開始。またスイスのノバルティスファーマは英グラクソ・スミスクラインの抗がん剤事業を約1兆6400億円で買収するなど、新薬の特許切れを前に、激しい買収合戦と再編が進んでいる。



製薬メーカーへの負担だけを大きくしては、日本の産業競争力の低下も避けられない。製薬メーカーだけでなく、医者、患者の三者が相応に負担する議論を真剣に進めなければならない。