スワロフスキー・ワーグナー | 恋、ソープ嬢こばとの愛され組曲

恋、ソープ嬢こばとの愛され組曲

アマデウスレコード
9thブログ
    SP音源で聴くモーツァルトはじめました。

ワーグナー録音史上に名高いスワロフスキー

スワロフスキーはウィーンの伝統を根っこにしっかりと保持しながら、その上でスワロフスキーならではの造形を見せてくれます。その特徴は、同時代の巨匠たちのワーグナー演奏と較べてみればはるかに明晰です。

ワーグナーが理想としたバイロイトの歌劇場のオーケストラピットは蓋で覆われているように、ワーグナーは自らの音楽は全ての楽器の響きが渾然一体となる事を望んでいたことは間違いありません。

故に、ウィーンの劇場において「ワーグナーというものはこういうふうに演奏するものだ」という継承の枠の中に己を留まらせながら、ワーグナーの音楽の中に差し込む光と、その光が生み出す影を強調するのではなく、明暗に微妙な濃淡をつけることによってワーグナーの音楽が持つ重さとスケールの大きさを保持しています。

A面に、リエンツィとタンホイザーの序曲。B面の、トリスタンとイゾルデ前奏曲の終結部を、パルジファルの前奏曲への繋がりは、ウィーン生まれの作曲家シューベルトの未完成交響曲を思わせる。

「我が恋の終わらざるが如く、この曲も終わらざる」

グラデーションの響きの中に浮き上がる明るいトランペットの和音は、希望を託したジークフリートの音楽を思い出させ、結ばれぬ禁断の愛の男女の死も、ロンギヌスの槍の矛先に救われるのだ。

Wagner Overtures & Preludes by Richard Wagner

Orchester Der Wiener Staatsoper; Hans Swarowsky Parliament (PLP-109)