びっくり箱みたいな旦那 No.6 | バリ島でオリジナルシルバーを作る、感じる。

バリ島でオリジナルシルバーを作る、感じる。

バリ島で暮らしています。
日々暮らして行く中、自然を見ていて感じるインスピレーションを
デザインし、オリジナルシルバーを制作しています。
そんな毎日に感じる事を綴ってゆきます。

狩りは毎日は行わ無いらしい。
普段は、生活に使う細々した木や、食べられる植物などを採取しに森に入り
森の動物を狩るのは、村の人用にストックしておいた
家畜が少なくなった時だけだ。

そう、旦那は槍を持って一緒に森に入ったが
イノシシを見かけても、鹿を見かけても、ウサギを見かけても
その槍を動物に向け無いで、静かに待っている男たちを見て
不思議に思っていた。

皆静かにしているので、話しかけるのは憚れる。

あ、又、イノシシが目の前に現れた.....が、誰も槍を向け無い。

隣の男に「どうして?」と小声で尋ねてみた。
すると男は「神が食料として差し向けてくれる動物を待てば良いんだ」と答える。
「もしも、差し向けてくれる動物がい無いのなら、家に帰るだけだ」


.........................????



旦那は頭の上に大きなクエッションマークが出てきたが
言われた通り、神が差し向けてくれる動物、を黙って待つことにした。



しばらくすると、鹿が目の前にやってきて
どんどんこちらに向かってきた。
一人の男が、その鹿のそばに行く。
固唾をのんで見守っていると、男はひょいっと、鹿を抱き寄せた。
鹿は暴れるでもなく、じっと男に抱かれている。
が、他の男が何かを言うと、鹿を抱いた男はその鹿を放した。



.......................?????



なんで?借りに来たんじゃ無いの?って言うか、
野生の鹿がどうして簡単に抱かれるの?
で、折角捕まえたのに、どうして放しちゃうの?



好奇心満々な旦那は、又近くの男にそのことを質問した。
「あれは、あの鹿はまだ死ぬには若すぎる。
まだまだたくさんの子供を産めるし、それが今の彼のやるべきことだ。」



なぁるほど。



そう言えば小さな頃、じいちゃんに聞いたことがある。
昔は、必要なもの以外は森から取り上げなかったものだが
今の時代は、必要以上に森から搾取する。
これから後の時代は、一体どうなってしまうんだ。
じいちゃんは、そう言っていたのだ。



うーん、なんて理にかなった生活をしているんだろう。


旦那は何か、こみ上げるものを感じた。


すると、又草むらがガサガサとし出し、今度はイノシシが現れた。
牙が大きく口から突き上げる、大きなイノシシだ。


男たちは、じっとそのイノシシを見ている。
イノシシは、近くに人間がいるにもかかわらず、こちらに向かってくる。
警戒心を全く感じ無いぐらいにリラックスし、
普通にみんなの前に立った。
男たちは、普通にそのイノシシのそばに行き、一人では持ち上げられ無いからか
何人かでそのイノシシを抱き寄せ、一人の男の肩に乗せた。

イノシシは全く、暴れもし無い。


今日の狩りは終わりだ。さぁ、村に帰ろう。


そのグループの長なのか、一言声を出すと、皆静かに村に帰って行った。


今目の前で見た光景は、一体何なのだろう。
イノシシは「さぁ、どうぞ連れて行ってください」とばかりにやって来て捕まった。


村に帰ると、グループの長は、柵の中で放されているイノシシが居る場所に
連れてきたイノシシを放し、グループは解散して各々の家に帰って行った。
槍は、もしもの時の為だけに使う道具で、
無理矢理に動物を殺す為の道具では無いらしい。


そういう風に連れてこられた動物は、丁重に扱われ
お祭りの時とかにしか、食べ無い。
お祭りで殺さなくてはなら無い時も、祈りを捧げられ
動物が殺しても良いよ、という返事をくれるまでは殺され無い。


村の長老はもちろんのこと、他にも何人も
動物の言葉のわかる人がいて、ちゃんと動物とコミニュケーションを
とった後で、お祭り用の肉となる。
解体された動物は、すべての部分を何かに使い、捨てたりし無い。
そうして、そうやって殺された動物たちのお弔いの祭りも行われる。



なんて、理にかなった生活をしているんだろう。
改めて、そう思う旦那。


帰り道、隣に住んでて(隣といっても、ものすごく遠いらしいけど)
親しくなった男性に、あの木のお椀に入って飲まされた赤い液体は
一体なんなのだ?と質問してみた。


「ああ、あれは、イノシシの血だよ。そこに香辛料(ハーブ)を入れる。
あれを飲むと、マラリアにかから無いのだよ。」と言う。


やっぱり、何か動物の血だと思っていたが、イノシシかーーー
俺、飲んじまったよなーーーって思ったが
そう言えば...........この村に来る前の何日間か
カリマンタンの蚊に辟易としていたことを思い出した。
ハエのように大きな蚊で、刺されると飛び上がるぐらいに痛いんだ。
マラリアなんて考えもしていなかったが、
この村に入ってから、蚊が近づいて来無いことに気がついた。



先人から受け継ぐ、生活の知恵を今の時代にもちゃんと受け継いでいる
このダヤック族と言う人達は、きっと世界が滅んでも
残っていける人達なんだろうな。



水牛に乗って川に行く途中で考えた。



人はいつから、弱い存在になってしまったのだろう。
人は、時代を経て強くなった、と思い込んでいるだけで
本当は、自然相手には何もでき無い弱い存在になっているのでは無いだろうか。
この人達を見て、現代人は遅れた人達だと思うだろう。
だが違う、退化しているのは今の現代人だ。
動物や森と話ができる現代人なんて、もう一人もい無いんじゃ無いか?





















この写真もお借りしました。
カリマンタンのどこかの村のダヤック族の長老とその奥さんです。



続く