おなかのキズ、どう話す? | 胆道閉鎖症・乳幼児肝疾患母の会 肝ったママ’s

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 胆道閉鎖症の赤ちゃんは、胆汁の排泄を促すために「葛西手術」をします。一度の葛西手術で胆汁の排泄がうまく行かず、減黄できないと、「二度目」の葛西手術をすることもあります。また、葛西手術でも改善されなかったり、成長とともに合併症を繰り返したり、肝硬変が進んだりすると「肝臓移植」をします。こうして、1度だけでなく、何度も開腹手術を受けていると、おなかに手術の傷痕が残ります。

 保育園や幼稚園に入ると、夏場の水遊びなどで裸になって遊びます。また、身体検査や内科検診時にもパンツ一枚になったりします。小学校では、体操着に着替える時に、学校によっては下着なども脱いで体操着に着替えるように指導しているところもあります。まだ入園したての頃は、子ども達は集団生活に慣れることでイッパイイッパイなので、他のお子さんに目を向ける余裕はないのですが、慣れてくると違いに気づくことがあります。また、小学校では、同じ教室で皆着替えるので、お腹のキズに気づくお子さんもいます。夏のプール授業では、男の子は海パン一枚になるので、女の子よりキズをさらけ出す機会があるかもしれません。時には、他のお子さんに「◯◯ちゃん、おなかに大きなキズがある~」と指摘される可能性もあるでしょう。

 おなかのキズ、お子さんにどう話しますか?

 多くのお母さんからのお話では、おなかのキズは「がんばった勲章」と教えていると聞きました。「病気を治すために、◯◯ちゃんががんばった証なんだよ」と話しているお母さんが多いようです。中には、親がドナーになって肝臓移植したお子さんには、「パパ(ママ)と同じキズがあるね」と、「親子でがんばった証」として捉えているご家庭もおられます。一番大事なことは「前向き」に捉えることではないかなと思います。「キズがあるから恥ずかしい」という思いは、子どもが成長していく上で、なんのためにもならず、かえって子どもが萎縮してしまうことすらあります。しかし、物心がついた時から、「がんばった」という言葉で肯定し、前向きに捉えることで、自信を持っていいものとお子さんが感じ取ることが大切ではないかなと思います。

 親子で一緒にお風呂に入り、言葉がわかる頃は、お腹のキズについて親子で話し始めるいい機会です。キズが自分にはあるのに、ママにはない場合、どうして?と聞いてくるお子さんもいるかもしれません。そんな時は「お腹の中にある電池が壊れちゃったから、△△先生が修理してくれたんだよ」と子どもにわかるように「電池」や「修理」という言葉で「肝臓」と「手術」を置き換えてみてはいかがでしょうか?その時に、日頃から外来でお世話になっている主治医のお名前も出して、主治医との関係も子どもに理解させてもいいと思います。一見小さなことですが、この小さな一歩から将来の「移行期」について、準備していると考えてもいいかと思います。

 お腹の電池…という言葉で、ある程度子どもはそれが自分にとって「生きる」ためには大事なものと受け止められると思います。電池がないとおもちゃが動かない…、◯◯ちゃんもお腹の電池が壊れちゃったから、△△先生が修理したので、今元気なんだよと伝えたり、電池が壊れちゃったので、パパ(ママ)のを一個分けて取り替えた…と、肝臓移植したお子さんもたとえ話として、伝えられるのではないかと思います。そして、その修理した電池がずっと動くように、お薬で助けている…と「服薬」の重要性もからめてお話をすることもよいでしょう。


 子どもの理解力が少し深まってきたら、「電池」は「肝臓」という名前なんだよ。それを「修理」することは「手術」と言うんだよと、少しずつ言葉を教えてあげるといいでしょう。外来でエコーと撮っている時も、子どもに「これは先生が電池がちゃんと動いているか、確認しているんだよ」と、その検査の意味を教えてあげるといいでしょう。小児外科医や移植外科医の先生も、十分にそこを理解しているので、時には子どもの質問に答えてくださいます。そうした主治医とやりとりをすることで、「外来に来るのは、自分の身体のため」という認識が培っていきます。一番大切なことは、病気を持っているのはお子さんということです。外来は主治医と親だけで完結するのではなく、子どもの成長に合わせて、子どもも少しずつその中に取り組んでいき、思春期にさしかかる頃には、子ども自身と主治医の間で一定のやりとりができるようにしていくのが理想です。

 おなかのキズのお話をすること…。小さなことですが、ここから子どもは「自分の身体」「自分の病気・病歴」を認識する第一歩を踏み出します。これから一生子どもが付き合っていく上で、病気持ちでもポジティブな気持ちで生活をするのか、身体にトラブルが起きても、自分で周りの人(それが親であったり、主治医であったり、教師であったり、将来的には上司や同僚であったり…)に適切にSOSを出せるようになるのか、始めの一歩から、その未来に向けて、親も少し想像力を働かせるといいのではないかと思います。

 おなかのキズに対して、ポジティブに子どもが受け止めることを親がサポートしていけば、園や学校でお友達に指摘されても「これは赤ちゃんの頃に病気をしてがんばったんだ!」と胸を張って言えることができます。私たちのお子さんには、堂々とお友達にそれを話して「かっこいい」と言われたと、照れ笑いして話してくれたお子さんもおられます。お子さんの性格によっては、キズのことに関わらず、恥ずかしがり屋さんもおられるでしょう。でも、大事なのは「がんばった」という気持ちを持たせることと思います。

 皆さんも、どのようなたとえ話でお子さんに説明したのか、どのようにして子どもの疑問に答えてあげたのか、何か経験談やアドバイスがあれば、ご意見いただけるとありがたいです。