───銀行ってところはお堅いイメージだけど…もちろん信用第一でお堅い仕事なんだけど、何かとイベントが多い
社員旅行はもちろん、全店を地域別に分けた支部によるバレーボール大会やソフトボール大会………
僕は来月行われる支部別バーベキューの
支店代表の実行委員に任命されていた…
「……チャンミンさん!
食材の下見…次の休みに行かない?」
同じく実行委員で同期のリナと終業後、
休憩室であーでもない、こーでもない、
と支店対抗のゲームの参加者や食材リスト作り、車の配車などで頭を悩ませていた………
「~~ん………やっぱ下見した方がいいよね………」
今度の休みはヒョンに空けておくように
言われてるけど…………しょうがないか
………これも仕事なんだし?
なんて考えていたら……その本人が外回りから帰ったらしく、
「………何してんの?」
って休憩室のドアから顔だけ出して聞いてくる
「ユノさん!!!!
今、バーベキューの打ち合わせしてるんです~~!
もし、お時間あったら相談にのってください!!!!!」
えっ……!!
リナ……余計な事言うなよー
ってリナに何とか合図を送るけど、半オクターブ声の高くなってるリナには全く通じそうにない
「………ふぅーん?…見せてみな…?」
入口近くのリナの隣に座り、肩が触れるくらいの距離でリナの前に置かれたレジュメを覗き込むヒョン
思わず赤くなるリナに構わず
「…なっ?このゲームって男女混合?」
「こんなに肉、いらなくね?」
とか、最強の笑顔でリナの照れていっぱいいっぱいになってる顔を覗き込むーー
──────根に持ってるな……ヒョン
──今朝もちょっと油断するとやたら触れてきて、
まぁ、いいか、なんて甘い顔するとすぐキスを仕掛けてくるヒョンに
平日お触り禁止令を出したばかりでーー
すっごいふくれっ面してたから………
本当……子どもかよ…!って思うけど、
このヒョンの仕返しは僕には効果抜群だったようで……
苛々を超えて胸が痛くなってきた………
「………ごめん、リナ…
急用思い出したから……今日はこれで…
食材の下見は土曜日って事でよろしく」
目の前にあるレジュメや何やらをバタバタと手早く片付けて、
「ユノヒョン、お先に失礼します。」
素早く支店を出て、早足で地下鉄への道のりを歩いていく
こんな事で嫉妬する自分が情けなくて
馬鹿馬鹿しいって…………
胸の痛みを誤魔化すようにどんどんスピードをあげて歩いていく
───「………チャンミン…!!!」
いつか来た紫陽花の綺麗だった公園脇で
思いっきり走ったのか、肩で息をしているヒョン……
「……チャンミン……ごめん!
俺……………大人げなかったよな?」
ヒョンの手に自分の手を一瞬だけ重ねる
「…………僕も……ごめんなさい…」
ヒョンが何よりも先に僕を追いかけてきてくれた………とか、そんな些細な事でさっきまでの痛みはすっかり拭われていて………
初めての痛み………初めての感情に……
目眩がするほど翻弄されている僕……
ユノヒョン…………これも……好きって気持ち?