前回、
水の接触角は指紋防止の評価には不適切
という記事をアップしました。
今回は、正しい評価方法について説明したいと思います。
指紋の付着は分子間力であるという説明を前々回の記事でいたしました。
指紋付着防止性については、
指紋に近い油脂成分を用いて、その付着力を測定する
ことが理に適っています。
具体的には 「滑落法 接触角測定」という方法が、最も良いと
いわれています。
滑落法とは、接触角測定の一つで、以下の手順で
「滑落角」
を求めます。
1.測定ステージを水平な状態にして、一定量の測定液を測定する表面上に
静置します。
2.測定ステージを一定の速度で傾けていきます。
3.液滴が滑り落ち始めましたら、その状態のステージの傾きが
「滑落角」となります。
滑落角は以下の2つの力のバランスを見ています。
液滴を下へ引っ張る力 ( =液滴の重量 * Sin θ )
液滴の付着力 ( 液滴と付着表面の間に働く力 = 分子間力 )
液滴を下へ引っ張る力 > 液滴の付着力 ならば、液滴が滑り落ちます。
液滴の付着力 > 液滴を下へ引っ張る力 ならば、液滴はとどまります。
すなわち、
滑落角が低いほど液滴は付着力が低い
= 汚れや指紋が付きにくく、除去しやすい
ということになるわけですね!
実際には滑落法接触角計という装置を使用して計測します。
滑落法接触角計では、これらの動作や測定をほぼ自動で測定できるよう
になっており、角度などは液滴の動き出した画像より専用アプリケーション
で算出します。
この測定で注意するべき点は、測定する液滴の重量によって滑落角が変わって
しまうため
測定に用いる液滴の量を一定化する
ことが必要です。
滑落法の接触角計には、液滴の大きさを計測する機能があるので、
これを用いて一定の液量で滑落角を計測することができます。
滑落角のデータを比較評価する場合は液滴量を必ず確認してください。
液滴量が異なるデータは比較することができません。
また、滑落法での測定においても、水で測定しては意味がありません。
指紋の皮脂成分に近い。ノルマルヘキサデカン、トリオレイン などが、
指紋防止性の計測に向いております。
前回の記事での計測例で滑落角を計測してみますと
ノルマルヘキサデカン (液滴量 5マイクロリットル)での測定結果は
上段のサンプルは 滑落角 25°
(水の接触角 117°)
下段のサンプルは 滑落角 10°
(水での接触角110°)
滑落角が低い方が防汚性が良好であることが
お分かりいただけると思います。。
次回は安価で簡単に評価できる方法をご説明します。