色々なパラレルを読んで来ましたが、意外?!にも
保育士の蓮さんは見た事がないなぁ~なんて思ってみたり…(`・ω・´)
蓮さん→保育園勤務5年目の24歳。
キョーコちゃん高校2年生で社さんと実の兄妹設定で。
ゆきひとお兄ちゃん1児の子持ち。LME勤務で多忙な毎日。
せつかちゃん→ゆき兄ちゃんの子。6か月。
っていう感じでもOKな人はどうぞ♪
* * *
毎晩のように…せっちゃんの夜泣きが激しい。
ゆき兄ちゃんは仕事で三日前から担当俳優と一緒にロケで北海道に行ってて…帰って来るのにはまだ数日掛かる。
「…お義姉ちゃんが突然いなくなってから…もう少しで一週間になるのね――…。」
ゆき兄ちゃんの愛するお嫁さん…。せっちゃんのママは突然ゆき兄ちゃんと6か月のせっちゃんを置いて家を出て行ってしまった。
…離婚届けをテーブルの上に残して。
離れて暮らしていた妹の私には二人の間に何があったかはよく分からないし…ゆき兄ちゃんも詳しくは話そうとしてくれない。
それに…お義姉ちゃんが出て行ってしまったからせっちゃんの面倒を見るのを手伝って欲しい…って言われた時のゆき兄ちゃんの表情があまりにも辛そうだったから…それ以上私は何も訊けなかった。
高校が夏休みに入ったばかりでまだバイトも決まっていなかった私は、お義姉ちゃんがいなくなった日の夜から ゆき兄ちゃんのお家に泊まり込んでせっちゃんの面倒を見ている。
今まで可愛い姪っ子のせっちゃんに会いに行く事はあっても…オムツ交換やミルクを飲ませた経験はほとんど無かった私。
っていうか…せっちゃんはほぼ母乳で育てていたみたいだし。
ゆき兄ちゃんが仕事で北海道ロケに行ってしまう前までの二日間…何とか仕事の調節をしたお兄ちゃんは私に赤ちゃんの面倒の見方を教えてくれた。
とは言っても…お兄ちゃん自身も今まで仕事で忙しくて育児はほとんどお義姉ちゃんに任せっきりだったみたいで、慣れない手付きで二人…何とか二日間を過ごした。
そんな状態でゆき兄ちゃんは仕事で約一週間 北海道へ出張。
申し訳なさそうな顔をするお兄ちゃんに、私は…友達に手伝ってもらうから全然大丈夫よ…と嘘をついてお兄ちゃんを少し安心させた。
モー子さんは劇団の稽古で毎日朝から晩まで大忙し。千織ちゃんは京都に家族と旅行に行くって言ってた。
…お母さんは弁護士の仕事でせっちゃんどころか私自身の事もずっとほったらかしだし。
せっちゃんを一人で見るのに不安はあったけれど、人見知りで泣かれるような感じでは無かったから、まぁ…何とかなるよね…と思っていたけれど…
その考えはあまりにも甘かった事に後で気付かされた――…。
* * *
ゆき兄ちゃんがいた時は慣れないミルクも…半分以上は何とか飲んでくれていたのに…。
私一人でミルクをあげようとすると…あまり飲んでくれない時の方が多い。
酷い時は哺乳瓶の乳.首を口に入れようとしただけで嫌がって大泣きをする。
あまり飲んでくれないから…またすぐにお腹が空いてぐずり出すせっちゃん。
夜中にまで泣かれるとこっちも眠れなくて体力を奪われる。
「…どぉして…っ?!ママの母乳じゃないからイヤなの…?せっちゃん…?」
ぐずぐず…とご機嫌斜めのせっちゃんは泣き疲れて眠りに付き、ようやく寝たわ…と思って 抱っこからベッドに降ろそうとすると、今度はそれで目を覚ましてまたぐずり出す。
「…もう……。腕が痛いよ…せっちゃん――…。」
お兄ちゃんには心配を掛けたくないからメールで大丈夫な事を伝えている。
だけど…実際は初めての事だらけでどうしたらいいか…もう睡眠不足の頭ではあまり何も考えられなくなって来た私。
もう眠ってくれる…と思っていたせっちゃんは結局眠ってはくれずに機嫌の悪いままぐずぐず…としていて抱っこから降ろせない。
そんな状態が続いた三日目の晩。とうとう私にも限界が近づいて来た。
相変わらずミルクをあまり飲んでくれなくてぐずぐずのせっちゃんと二人きりで部屋に閉じこもっているのが精神的に辛くなった私。
せっちゃんを無理矢理ベビーカーに乗せて外へ飛び出した。抱っこ紐は着けた事がないし、何かあった時に落としてしまいそうで怖くて出来ない。
* * *
外に出てみるとせっちゃん自身も気分転換になったのか、ベビーカーの中で泣き止み…近くの公園までの道のりは大人しくしてくれていた。
時間は夜の11時。少し遅くて怖いから…公園内の入り口の方でなるべく明るくて外灯があるベンチを選び、そこに腰を下ろす。
ふぅ…と深呼吸をしながら公園を見渡すと…奥の方にも人が一人いるみたいだったけれど、疲れ切った頭ではあまり気にはならずにベンチに凭れ掛かってボーっとする。
このまませっちゃんがずっと静かにして…出来ればそのままベビーカーの中で眠ってくれないかな…と考えていたけど、やはり現実はそうもいかなかった。
せっちゃんはやっぱりお腹が空いているのと…眠たいのに眠れない状態が続いていたのでふにゃふにゃと泣き始めた。
「……っもう!!お腹が空いているならちゃんとミルク飲んでよ…っ せっちゃん…!そうしたらぐっすり眠れるんじゃないの?!」
「…私だって疲れて眠たいんだから…いい加減にしてよぉ……。抱っこだらけで腕だって痛いんだからぁ…っ!」
一人で慣れない赤ちゃんの面倒を見始めて三日目。この状態があと数日間続くのかと思うと、本気でどうしたらいいのか分からなくて涙が出て来た。
「………っ 泣きたいのは私の方よぉ……っ!もう…どうしたらいいのよ……っ」
「………………………うぅ…っ」
…もう本当に限界――…。
そう感じながら私とせっちゃん、二人して泣いていると…公園の奥の方に居た背のとても高い男の人が心配そうに声を掛けに来てくれた。
「………………。君…大丈夫…?赤ちゃん…泣き止まないの…?」
大泣きのせっちゃんを抱っこしたまま私は彼の顔を見てコクンと頷いた。優しそうな顔をしている。
「………………。その子…人見知りする…?」
「………………………っ」
「…いえ…っ多分……」
「………………………っ大丈夫だと思いますけど…っ」
泣きじゃくりながら言う私の顔を、その人は心配そうに覗き込む。
「………………………。」
「そう…なら俺が抱っこしても平気かな…? 君…何だかとても疲れてるみたいだし。ちょっと代わってあげるよ」
そう言うと…男性は私からせっちゃんを受け取った。
本当は知らない人にお兄ちゃんの大切な一人娘をこんな簡単に渡してはいけないんだろうけど…自分の腕がもう痛くて限界だったし、それに何だか直感で悪い人では無い…と思ったから。
その人は穏やかな優しい表情でせっちゃんに笑いかけながら横抱きでゆらゆら…と彼女を揺らしていく。
「…ん…?どうしたの…?眠たいけど眠れなかったの…? ん…よしよし…」
時々せっちゃんのぷにぷにのほっぺたをつんつん…と指で優しく触り…揺らしながらあやしていく彼。
さっきまで大泣きしていたのが嘘のように…突然ご機嫌になって笑い出したせっちゃんは、その後うとうと…とし始めたかと思うとすぐにそのまま彼の腕の中ですやすやと寝付いた。
「…うそ……。あれだけ泣いてお腹も空かしていたのに…寝ちゃった」
「…うん。口をもごもごさせていたからお腹空いてるね。またきっとすぐに起きちゃうよ…。今寝たのは…たぶん眠さの限界だったんだろうね」
そう言うと彼はせっちゃんを優しく抱っこしたままベンチに腰を掛けたので、私も続くように彼の横に座った。
「…随分と若いママだね……?夜泣き…酷いの?」
「…あ…。違うんです…。その子は姪っ子で…。お兄ちゃん出張でママも居なくて……」
「…えっと………………………。」
「…………………………………。」
「………………………え…?ちょっと君…?大丈夫…??」
今まで三日間一人でずっと面倒見て来て…話相手も誰もいなくて…。
その上…酷い睡眠不足で…。
これまでの事を説明しようと思ったのに…私の身体は彼の膝の上にゆっくりコテン…と転がって…
そのまま眠りの世界に落ちていってしまった――…。