幻想雪恋歌 9 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

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自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)



顔合わせの席に集まったのは「Labyrinth(ラビリンス)~雪の華~」の主要人物の役者達。

そして裏方は撮影班、メイク班…などの各部門の責任者。「TRAGIC MARKER」を担当したのと同じスタッフが全体の4分の3を占める。

「…それではまず私の方から挨拶させて頂きます。監督の近衛です。今回は「Labyrinth(ラビリンス)~雪の華~」制作の為にお集まり下さりありがとうございます」

「前回の「TRAGIC MARKER」の大ヒットは役者さんを始め、ここにいるスタッフ皆さんのお蔭だと思っています――…。」

監督が少し照れながら頭の後ろに手を置き、ペコリとお辞儀をすると…関係者達から一斉に拍手が沸き起こった。

「…そして…同時に謝罪しなければならない事もあります。BJ役を演じた謎の日系イギリス俳優カインヒールを実は敦賀君が二重に演じていたのを秘密にしていた件です――…。」

「京子さんは敦賀君と同じ事務所の後輩という事もあって、彼のマネージャーとして妹の雪花役を演じてくれていました。」

「二人の想像を遥かに上回ったクオリティーの高い演技に驚かされた事が何回もあって…「TRAGIC MARKER」が成功したら次は“ヒール兄妹”で映画を作るぞ!と心に決めていました…!!」

近衛監督は少し興奮したように顔を赤らめながらイキイキとした表情で、嬉しそうにその驚かされたエピソードをいくつか熱く語った。

「…それでは主演の二人を紹介します!まずはカインヒール役の敦賀君から――…。」

名前を呼ばれた蓮はスタッフからマイクを受け取り、席から立ち上がる。

会場に居るスタッフ達には あの怖いカインヒールと今ここにいる爽やかな敦賀蓮が本当に同一人物なのかイマイチまだ信じられない人が多く、会場内が緊張感に包まれた。

その緊張した雰囲気を感じ取った蓮は…無言のまま前髪をカインのように少しボサボサに前に垂らし、瞬時にカインヒールの役に入り込み、鋭い目付きでゆっくりとスタッフ達を見回していった。

「………………………。」

「…何だコイツらは…?敦賀蓮がカインヒールだと監督が紹介したのに…まだ疑っているのか――…?」

不機嫌そうにカインの低い声で呟いた後、蓮は無言で隣にいるキョーコの瞳をじっと見つめた。

瞳で合図を受け取ったキョーコも瞬時に雪花の役を憑けて立ち上がる。

「…ふふふ…。兄さんの演技力があまりにも凄いから…聞かされただけではイマイチ理解出来ないのよ…きっと。流石アタシの自慢の兄さんだわ――…。」

そう言うと雪花になり切ったキョーコは、カインである蓮の頬にそっと手を伸ばした。カインも当然のように雪花の腰に両腕を回して二人だけの世界を作り出す。

「……………。おぉぉぉーー!!本物のカインヒールだ…!ヒール兄妹だ…!!」

「すげえ!!京子ちゃんも同一人物とは思えなかったけど…本当にあの妹だぞ!姿は違っても醸し出す雰囲気と声が一緒だ…!」

いいぞ…!これは期待出来る…!!と会場じゅうから称賛の声と拍手の嵐が沸き起こった。



「…改めまして敦賀蓮です。まずは謝罪の言葉からさせて頂きます。「TRAGIC MARKER」の撮影中にカインヒールが好き放題に色々と問題を起こして…大変ご迷惑をお掛けしました。遅刻やボイコット、そして揉め事など――…。」

蓮は本当に申し訳なさそうに深々と頭を下げた。数秒間そのまま下げ続け、頭をゆっくりと元に戻した先で村雨と目が合う。

「……全く…。敦賀君は本当に凄い役者だよ――…。」

腕を組みながら尊敬の眼差しでそう言った村雨の言葉に、周囲のスタッフ達も同意して頷いた。

「あくまでも…あれはカインヒールの役作りの一環です。今回は本番中がカインで、撮影外は敦賀蓮ですので…どうか皆さんご安心下さい」

「皆さんと仲良くやっていきたいと思っていますので、カインの時とは違って気軽に話し掛けて来て下さいね…?これから撮影期間中よろしくお願い致します」

爽やかに春の日差しのような笑顔でにっこりと微笑むと…会場内の女性スタッフと一部の男性までもが、蓮の持つ魅力に虜になり顔を赤らめた。



そして蓮の挨拶が穏やかな雰囲気で終わった後は続いてキョーコの番になり、彼女の方にもざわざわ…とスタッフの注目が一気に集まった。

「今回 妹の雪花役を演じさせて頂く事になりました京子です。あの…っ私の方からも改めてこの場でまず謝罪させて頂きたいです…!!」

目をきつく閉じたまま…何回も何回も頭を下げて丁寧に繰り返し謝罪の言葉を口にしていく女優京子の姿に、スタッフ一同がその礼儀正しさに感心をする。

「…大丈夫だよ…!!京子ちゃん!演技だったんだから…。気にしない!気にしない…!!」

メイクスタッフの一人がそう声を掛けると、村雨や周囲のスタッフ達も京子を優しく励まし始め、キョーコの気持ちも少し楽になる。

「…ありがとうございます――…。」

思わず横にいる蓮の顔を見ると とても優しい瞳でキョーコに微笑みながら、大丈夫だよ…という表情で蓮が頷き、彼女の心は安心感に包まれていった。

「私自身 雪花の役には思い入れが凄くありまして…。まさかこの役で映画を撮って頂ける事になるなんて想像もしてなかったので、とても光栄です…!!精一杯頑張りますので皆様これから是非宜しくお願い致します」

挨拶の終わりに仲居仕込みの綺麗なお辞儀をしたキョーコ。

そして…その後に華が綻ぶような可愛い笑顔を見せ、キョーコは無意識のうちに男性スタッフ達と一部の女性スタッフの心を鷲掴みにした。




続いて監督がロイの紹介に入り、静かに立ち上がった彼はゆっくりとスタッフを見回しながら挨拶し始めた。

「Hi everyone, I'm Roy Williams. Nice to make your acquaintance. 初めまして皆さん。ロイ・ウィリアムズです。大好きな日本で映画出演が出来て最高に幸せです…!」

うわぁ…日本語がとても上手…発音もかなりキレイ…!と会場じゅうのスタッフがロイの流暢な日本語に感心をする。

「…7歳の時に日本に興味を持って…高校、大学でも日本語を専攻していたんですよ」

爽やかな笑顔を見せるロイ。そして…彼が持つ穏やかで独特な雰囲気と麗しい容姿に会場内がうっとりし始める。


ざわざわ…とスタッフ達がイギリスのロックスターで昨年に全米デビューも果たしたロイの話で盛り始め…再びマイクを握った監督が語り始めた。

「実はロイ君は…何とあのクー・ヒズリの紹介で今回この映画に出演が決まったんですよ…!!」

“クー・ヒズリ”という名前に蓮、キョーコ、村雨がピクリ…と反応をした。

「いやー、カインの親友“レヴィン”役を探すのに実はかなり苦労しちゃってね…。“出来ればイギリス系、日本語が堪能でベースが弾ける人物”が条件だったから――…。」

「なかなか決まらなくてLMEの社長に直接相談に行った時に、クーから社長に偶然電話が掛かって来て…!そこでロイ君の話が出てね。いやー良かったよー!イギリスのロックスターが出演決定してくれるなんて…!」

「いえいえ…/// Mr.クーには僕のバンドがアメリカデビューした時にお世話になったんです。僕も日本での出演の話を彼から聞いた時はとても嬉しかったですよ…監督…!」

ロイのその言葉を聞いて監督は少し照れながら嬉しそうに笑顔を見せた。そして次の瞬間、何かを思い出したかのようにイキイキとした顔で興奮気味に語り始めた。



「そうそう…っ!!今回サプライズといいますか…!!その事が切欠で…なんとっ! あのクー・ヒズリさんから 映画に自分も出演させて欲しいと依頼があったんです…っ!!」

「「「「「ええぇぇぇーーー!!!クー・ヒズリからっ??!!」」」」」

会場全体が今までに無い位にざわざわ…と驚きで盛り上がっていく。

「うぉぉぉーーー!!俺の憧れのクーがっ!!恭紫狼がぁっ!!」

「…うそ…まさか…先生と共演出来るの…っ?!」

憧れで大好きなクーの事を思い浮かべて、キョーコの顔は嬉しさでぱぁぁ…っと明るい笑顔になっていった。そのキョーコを見ながら監督が訊ねる。

「京子さん!!君はあのクーと 一体どういう繋がりなの…っ?!彼に電話で“私の可愛いキョーコが出演するなら是非私も出させて欲しい”って熱く語られたんだけど?!」

「えぇぇぇーーーー?!せっ先生がまさかそんな事を仰ったのですか?!」

キョーコは会場のスタッフ達にLMEの大先輩で 彼が前に来日した時に自分がお世話係を担当し、演技の稽古もつけてもらった事を説明した。

「へぇーー!!そんな繋がりがあったんですね…!! 」

「皆さん!クー・ヒズリさんには映画の後半からドクターの役を演じて頂く事になりましたので…!!よろしくお願いしますね!!」

「「「「「分かりました…!!!」」」」」

会場じゅうがクーヒズリの友情出演で興奮に包まれていった。

しかし…蓮のみは笑顔を浮かべているものの…心中複雑そうにしていた。だが当然ながらそれに気付く者は誰もいない。

社長…?俺…今回の父さんの件何も聞かされていないんですけど…と、蓮は心の中で社長につっこみを入れ、これから何か他にも予想外の事が起こる可能性に覚悟をし始めた。

* * *

その後も貴島、村雨…と役者やスタッフの紹介は続いていった。

看護師役で出る予定だった女優が妊娠の為に役を降り、代わりに琴南奏江にオファーを出していると伝えられた時にはキョーコの瞳がキラキラと輝いた。

そして役者とスタッフ達の挨拶が終わると次は今後の撮影予定の説明に入った。

映画の前半は物語の舞台がイギリスになる為、その撮影は都内から車で一時間と少し掛かる●●県にある海辺のイギリス村で行う事。

後半はバンドが日本デビューを果たし舞台が都内になるので、撮影も都内に変わる事。

撮影の始めは子役の二人を使い、その間にバンドメンバーは都内のスタジオで練習をしていく。

また…曲の提供と音楽プロデュースはロイが担当するので、バンド練習も彼を中心に進めていく事を担当者が説明していった。



「それでは皆さん…!!これから「Labyrinth~雪の華~」の撮影が始まりますので、宜しくお願い致します!!」

「「「「「「はい!!宜しくお願い致します――!!」」」」」」



こうして初顔合わせは無事に終了をし、これからいよいよ本格的に映画の撮影がスタートする事となった――…。




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今回話のネタが多過ぎて、かなりこれでも削りました。入り切らなかった小ネタの一つは拍手ボタンの中に入れたので興味のある方は覗いてみて下さいね。
ちなみにロイ君は本来ギターヴォーカルですが、ギターを弾ける人はベースも大体皆弾けます♪