“Labyrinth～雪の華～” 　scene １


…セツ――…。

もう…例え二度とお前に逢えなかっとしても

俺は…いつまでもお前の幸せを願い続けている


お前が生まれたイギリスのこの町で

この命…尽きるまで……。

いや…例え尽きたとしても

お前の幸せだけをずっと永遠に――…。



…だけど…今日みたいに

静かな雪がはらはら…と舞い落ちるような日は

お前と過ごし…幸せだった日々が鮮明に脳裏に浮かび

切ない程に…何だか無性にお前に逢いたくなる……。



望んでもいいのだろうか

まだ希望を持ち続けても――…？

いつかまた再びお前と出逢い…愛し合える日々を――…。




…セツ…愛してる――…。

…俺だけの…たった一輪の…“雪の花”――…。




＊　＊　＊



セツ…お前が生まれた日の事は今でも鮮明に覚えている…。それは俺が四歳の時だった。

義母が入院している病院でまだか…まだか…と家族が待っている間の眠れない夜明け――…。

窓から見えた初雪に…俺は思わず外へと飛び出した。



そして そこで目にしたのは…その土地で冬を越す小鳥の優しいさえずりに合わせて、風に揺られる見事な花畑だった――…。



“凛として美しく…気品溢れる真紅の冬薔薇”

“冬には珍しい…華麗に咲き誇る純白の百合の花”



その花畑の上に夜明け色の空から はらはら…と華麗に舞い踊るたくさんの真っ白な雪の花弁。

あまりの美しさに…俺は興奮しながら山の方に続いている百合と薔薇の花畑の中を夢中になって走った――…。



掌を伸ばすと、ゆらりと落ちては…消えて無くなる雪の結晶の花。

俺を探して後から追って来たgrandma(祖母)が、そのあまりにも神秘的な光景を目の当たりにして…



“まるで雪の花の精霊でもいるのかしら…” と



感動で身震いしながら…そう呟いたのを覚えている。


「………………………。そうだね！！グランマ…！」

「きっと…精霊が…新しい妹の誕生をお祝いしてくれているんだ――…。」


…それから数十分後…お前はこの世に生を受けた――…。



だから…お前の名前は“雪花”

雪と花の精霊の祝福を受けながら…誕生した――…。


そして…同時に俺は…その神秘的な空間でその精霊に向かって１つの誓いを立てた。


“何があってもこの先…その新しい妹を守っていくんだ”と――…。







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