諏訪「さぁ、始めるか」
岩田「今回は系図の話で頼むぞい」
諏訪「OK!」
神崎「今回で終わりですか?」
諏訪「う~~ん、終われないんだな」
ケン太「延長料金、取るわよ」
諏訪「…なんの商売だ?」
犬千代「ニャー」
…
諏訪「さて本題。 朝倉家の系図ってのは、実は前に説明した織田家の系図より、ある意味特殊でね…」
ケン太「そりゃあ、教景だの氏景だの貞景だの孝景だのが、系図上でローテーションしながら何人も現れるからね」
岩田「ローテーション言うなや」
諏訪「いや、それもそうなんだが……」
神崎「他に何かあるんですか?」
諏訪「実は…朝倉家は系図上のルーツとされる天皇が3人もいる、変わった家なんだよ」
神崎「えっ!?」
岩田「そんなバカな!」
諏訪「これは言い換えれば、朝倉系図が最低でも2つ以上あった事を示している」
ケン太「2つ以上?……3つじゃないの?」
諏訪「2つ以上だ。 その天皇とは以下の3人だ」
1、開化天皇
2、景行天皇
3、孝徳天皇
神崎「なんで3人もいるんでしょう?」
諏訪「ま、実際は開化天皇を祖としている朝倉家系図は、皆無なんだけどね」
ケン太「?? …言ってる意味が分からないよ」
諏訪「朝倉家のルーツとされている日下部氏の祖が、開化天皇の三男彦坐(ヒコイマス・ヒコマス)王なんだよ」
孝元天皇
┃
開化天皇
┣祟神天皇━垂仁天皇
┗彦坐王……日下部氏
岩田「あぁ、じゃからルーツが3人、系図が2つ以上と言ったのじゃな」
諏訪「そう。 『朝倉叢書』の著者須永金三郎は、孝徳天皇の子孫説を否定した上で、朝倉家が日下部氏を名乗る以上は開化天皇がルーツだと展開している」
ケン太「引用は?」
諏訪「…すまん。 8ページに渡って長々と解説している為、書写引用してたら正月が明けるから、遠慮させてくれ」
神崎「では、必要になったらそこだけ引用しましょう」
ケン太「…次は?」
諏訪「次は、景行天皇だ。 これは今言った開化天皇と彦坐王のそれぞれ曾孫にあたる人」
開化天皇
┣━祟神天皇━━━━━━垂仁天皇
┃※※※※※※※※※※※※※┣景行天皇
┗彦坐王━丹波道主命━日葉酢媛命
神崎「これは、どんな史料に載ってるんですか?」
諏訪「『越州軍記』の【越前國朝倉累代守護之事】に…
景行天皇ノ苗裔 日本将軍ノ後胤
…とある」
ケン太「日本将軍?」
諏訪「おそらく、景行天皇の子の日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の事だと思う」
神崎「この系図は…どういう謂れでできたのでしょう?」
諏訪「ちょっと原典までは追えなかったが、英林孝景の弟の慈視院光玖の発案で作られたそうな」
ケン太「 ま た お 前 か 」
諏訪「この系図も現存していないけど、俺がある程度は復元できる自信があるから、次回挙げるよ」
岩田「さすが歴史探偵じゃな」
諏訪「最後が孝徳天皇をルーツとする系図だね」
神崎「…出処は?」
諏訪「今回の依頼者である朝倉義景が、『赤淵大明神縁起』を上程した際に作ったのが原典だ」
ケン太「これが一般的な奴?」
諏訪「そう、現在世の中に出回っている系図は、99%これがルーツだ」
岩田「言い切れるんかいの?」
諏訪「任せなさい」
ケン太「なんでそんなに強気?」
諏訪「例えば、『寛永諸家系図伝』や『朝倉始末記』では、人皇三十七代孝徳天皇とあるし、他にも…
『朝倉家録』【朝倉家由来之事】
抑前代越前国主朝倉御屋形乃家系□人王三十七代孝徳帝…
…と言った史料もある」
ケン太「なんでこんなんで言い切るの? たまたまじゃないの?」
諏訪「………実は、孝徳天皇は人皇36代が正しい」
ケン太「えっ?」
諏訪「人皇37代は斉明天皇(35代皇極天皇と同一人物)で、この系図を引用したものは、全部判で押したように孝徳天皇=人皇三十七代で統一しているからだよ」
神崎「ちょっと調べれば判りそうなものですけど…」
岩田「本当じゃな…」
諏訪「須永金三郎は、孝徳天皇系図の3代目(系図によっては有馬皇子の弟)の日下部表米の『表』の字が、『来』という字に近い事に注目した」
神崎「…はい」
諏訪「そして『米』が(め)と読める事から、『目』の転訛と見て、日下部表米を、聖徳太子の弟で、征新羅将軍であった来目皇子(クメノミコ)に見立てたとある」
表米皇子
↓
来目皇子
岩田「………」
諏訪「さらに、縁のある神社の祭神が来目皇子という事から、日下部表米の活躍を来目皇子から偽作したと見ている」
神崎「…先生のご意見は?」
諏訪「…割と当たってる気もするね」
ケン太「100年も前の説なのに、合ってるの?」
諏訪「むしろ100年も前の人の研究にしては、現代でも通用する…というより、ここらの考察に関しては、昔より現代の方が退化している気もする」
…
ケン太「先生~、教景は~?」
諏訪「とりあえず、ここまでは覚えておいてほしかった。 次回、改めて系図の事は説明するよ」
岩田「それ、前回も言ったぞい」
諏訪「今回は、ここまで。 もうちょっとだけ続くぞい」
3人「は~~い」
犬千代「ニャー」
~続~