黒山レーシングの中古車販売/第2弾TYS140F→④ | 一郎のだまされ日記

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チーム黒山レーシング 黒山一郎でございます。

元、ヤマハ発動機(株)社員の木村治男さんは、TTR125Fエンジンを開発テストした人です。「木村さんの頭の中は、一にエンジン、二にエンジン」で、そしてそのエンジンは「4サイクル」ですね。一時期、社命で2stトライアラーの開発に携わっていたこともありますが、本命はやっぱり4stです。

 

ロードの神様「ポップ吉村さん」というお名前は今だに健在ですが、吉村秀雄さんも同じで「4st命」で2stには見向きもしません。そりゃそうで、戦争中の飛行機は「すべて4st」で、2stなんて存在しない時代のエンジンの神様です。

 

黒山レーシングはトライアルを初めて以来、ずっと2stでしたけど、黒山選手が「もう世界チャンピオンにはなれない」と判断してBetaMotor契約で11年間やった世界選手権を終了、全日本に専念するためにヤマハ発動機(株)と契約して、初めて4stに乗り始めたといういきさつ。以後、黒山レーシングをお世話いただいたのが木村治男さんなもんで、身も心も頭の中も「4st一本」に染まってしまいました。

 

メカニックの観点から言えば、2stエンジンなんて単純明快な構造でバラし組み朝飯前で、4stはシリンダーヘッド周りが複雑で機械をいじっている体感あり。2stなんて誰が組んでもその性能差はあまり出ませんが、4stのシリンダーヘッド周りは組み手の技量次第で2〜3馬力の差はすぐに出ます。

 

特にその出力を左右するカムの取り付けが勝負の分かれ目で、カムの取り付け部分は勘に頼らずトルクレンチを使って正しく均等に締め付けます。でも腕のいいメカニック(戦時中の言い方で機関士)になると、絶対にトルクレンチで締めないといけないこの部分こそ「手加減勝負」の出番で、締付ける部分のボルトと雌ネジの誤差を見、耐熱グリスの塗る量を調整したりして「感と度胸の手作業」の世界です。

 

はい、機関士の腕が悪いと戦闘機は落ちますし、メカニックの腕が悪いとロードレースやモトクロスはぶっ飛びます。トライアルだとリタイアです。落ちる戦闘機と、たかがトライアルのリタイアを比較する方に無理がありますが、やる機関士とメカニックの気迫に、今も昔も差はありません。

 

という事で、お嫁に出す予定のTTRのエンジンのクランクケース周り部品を綺麗にクリーニングして組み立ての真っ最中。2stにはない「バランサーとかオイル吸い上げ循環装置」とかありまして、面白いもんです。

 

 

クランクケース付属部品や、4st命のシリンダーヘッドもキレイに耐熱塗料でお化粧直しです。

 

クランクケースが組み上がりました。このクランクケースの上下横に組み付ける部品も、きれいに並べてスタンバイです。

 

組み上がったクラッチComp(組み立てた状態一式)が見えていますが、このエンジンのクラッチですが「クラッチコルク板」が5枚です。で、乗ってトライアルをしてみますと「切れるか、つながるか」しかなくて、とても普通の半クラッチワークは無理。という事で1枚プラスの「6枚クラッチコルク板」に改良しています。

 

6枚クラッチコルク板にすると、当然、時代遅れのワイヤークラッチから油圧クラッチに改良でしょう。まだお化粧直しができていませんので証拠写真はありませんけど、もち油圧クラッチ方式に変更です。この油圧クラッチですがレバー部を「引くと押す」がありまして、引く方が割と簡単に作れて取り付きます。でも、引く方式は伝達にタイムロスが出て、細かいクラッチワークは、押す方式にはかないません。ですので当然、黒山レーシングの油圧クラッチは「押す」方式にしています。その証拠写真を待たれい。

 

 

4stエンジンは面白いんで、なかなかフレームに進みませんね。

そうそう、このTYS125Fをお嫁に出す時は「保安部品すべてを取り付け」て出しますので、あなたは書類を持って「市役所」に行ってナンバーを取得してバイクに取り付けるだけ。その瞬間から「街乗り」OKです。

より