一郎のだまされ日記

一郎のだまされ日記

チーム黒山レーシング 黒山一郎でございます。

 

やっと前後のホイルが付くところまできました。

元から付いている保安部品の、例えばライトとかウインカーの交換取り付けは簡単です。でも、まったく保安部品のないバイクに、ライトやウインカーをいちからすべてを取り付け、そして配線をシンプルに引き回すのは時間がとてもかかります。

はい、かかり切りではないにしても電気系だけで1週間かかりました。

 

DID520スーパーハードゴールドチェーン+前後スプロケット+前後リムハブ、すべて新品です。

 

このバイク、なんとかクリスマスまでには完成して販売価格公表、晴れてお嫁に行ってもらうつもりでしたけど、だけど間違いなく年を越して'24年になります。お金をいくら積んでも、もう新車で手に入れることは不可能なバイクですが、新品同様どころかそれ以上の仕上げを目指して頑張ります。

スタンダードのTYS125Fですが、限りなくこれに近づけ、そして性能はそれ以上を目指しています。

 

保安部品付きのカイダック製後ろフェンダーを、ただ置いただけの見せかけ写真。エキパイは4stだと一番パワーの出るチタンエキパイをつけました。

 

機械部品ばかりをいじっているメカニックには、電装関係、特に保安部品の取り付け配線は、日頃使わない頭の回路部分を使いますので疲れ果ててしまいます。

 

見ての通り、チタンエキパイが光っています。

 

より

 

 

自動車も同じですが、メカニックにとって「これが分かったら一人前」という技能は「電気系」です。理由は至極簡単で「見えないから」で、無線の電波が見える装置を発明したら「ノーベル賞」ものは、大昔から言われています。

 

前後ホイルが付き、エアークリーナーBOXとサブフレームを仮付けして電気系統の配線に進みます。


エンジンはまだかかりませんので、とりあえずはバッテリーを大元線につないでエンジンがわりに使います。すべての保安部品を取り付け動くかや点燈するかの確認。ヘッドライトは点灯しました。

 

 

TYS125Fは「第2種原動機付自転車」ですので、販売証明なんかの書類を市役所に持ち込んで登録しますと、その場ですぐにナンバープレートがもらえます。やっぱり125以下のトライアルバイクは、年間2,000円と少しの税金を払って正々堂々と公道を走れるのは魅力ですよね。

のっぴきならぬ他のお仕事が入り、そちらの方にうつつを抜かしていたんでTYS125Fのお嫁入り化粧直しがストップしていましたけど、やっと少しだけ手が入りました。

 

 

後ろホイルをゼロから組み立て開始、スポークとハブをリムに組み付けるところから始めホイルの振れ取りして、新品ダンロップD803GPタイヤをはめ込んでやっと完成しました。

 

 

見ての通り、前も後ろもタイヤを含めてホイル関係はすべて新品です。リアクッションもオイルシール新品交換して、セッティングも日本人向けに上下動きをセッティング変更しています。おっと、先ほど注文していたカイダック製の真っ白な後ろフェンダーが届きました。こう、ご期待ですね。

 

より

 

孫1番の黒山陸一(りくと現在15歳)さんは国際B級でしたけど、今年の近畿選手権全戦全勝で近畿チャンピオンを決め、見事に全日本を経験せずに国際A級昇格達成。これはお父さんの二郎も、同じ道筋で国際A級に昇格しました。これで証拠の6人のライセンス写真の通り「黒山さんち、皆ぃ〜んな国際A級」です。

 

今年で13度のチャンピオンを成し遂げたガッチ小川くんの影に隠れていますが、この黒山ファミリーライセンスの中のライダーだけで、合計「全日本最上級クラスチャンピオン13度、全日本勝利数112勝を挙げています。

 

うちのレベルからするとスカですが、以下も誉めてあげてやってくださいね。

 

・黒山二郎→国際B級近畿チャンピオン

・黒山陸一→国際B級近畿チャンピオン

・黒山陣(中2)→グランドチャンピオン国内A級チャンピオン、国際B級近畿チャンピオン、国際A級全日本チャンピオン

・黒山太陽(たお小5)→何にもなし

 

ガッチ小川くんも健一も陣も、そのトライアルは「求道者的考え方」のトライアルです。つまり、クリーンが出ても「今のクリーンはクリーンではない、もっときれいなクリーンでないとだめ」的な考え方。藤波君と太陽は「何でもいい、クリーンさえ出ればいい」的な考え方。

 

それにガッチ小川くんも健一も陣も「そんなには人前でエエ格好しなくてもいい」的な考え方だけど、藤波君と太陽は「まずはエエ格好が一番、女にモテたい」的な考え方。はい、この違いは一発勝負の世界では大きいのです。

 

 

孫4番の黒山夢結(めい)は、まだ「幼稚園年中さん」だから7人目達成はまだ遠い先のお話ですね。

 

「黒山さんのところは、みんなが皆んなトライアルやっているというレベルでなくて、全員が全員、頂点目指していて、どういう教育をしているんですか」という質問をよく受けます。

 

答えは簡単で「皇室に生まれた男子は生涯皇室だし、歌舞伎家系に生まれた男子は生涯歌舞伎役者だし、イギリス.ランプキン家に生まれた男子は親戚一同全員トライアルライダーで、その親戚一同の順位序列は毎年SSDT(スコットランド6日間トライアル)に出場して決めている」というか、血筋というか生まれた時からそう決まっているんで「いつ頃から何で始めたの」のの質問に答えはありません。「生まれた時からそう決まっている」が、お答えです。

 

イチローさんが今から37年前の'87年、白バイ警察官を辞して世界選手権に挑戦する時にホームシック防止用に健一(当時小2)を連れて行ったのが、今はこうなってしまったののスタートラインのような気がする。別に健一に世界の頂点を見せて、将来はウンヌンなんてまるでなし。健一が向こうで勝手に自転車トライアルを始めて、次にトライアルに転向して「ブラック団という仲間(ライバル)を集めて」こうなったのが、お答えの正解かもしれない。

 

「人生、塞翁が馬」で、何がどうなるか分からないし、一つ言えることは「長く続ける、継続は力なり」でしょうね。イチローさんが駆け出しチンピラの頃の先輩トップライダーで、今でも神と崇拝しているお三方。トライアルの最前線で文字通り「継続は力なり」を見せつけているのが、成田省造さん、近藤博志さん、木村治男さんです。

 

トライアルス成田オーナーの成田省造さん

 

エトスデザイン経営者の近藤博志さん

 

ライダースオーナーの木村治男さん

 

「継続は力なり」の生き字引ですね。イチローさんもおじいさんになり、進駐軍司令官ダグラス.マッカーサーの言葉「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」の現在、悪ガキ孫ども4人ををよろしくお願いいたします。

 

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リアクッションとスイングアームが付きました。リアクッションは、スタンダードよりも日本人向けに「伸びを少し早く」にセッティング変更をしています。もち、リアクッションのオイルシールは新品交換しました。

 

キックは使い古しで真棒と穴がガタガタグラグラでしたので、こすれて摩耗した真棒の部分をアルゴン溶接で肉盛りして丸く研磨復活させ、動きだけはガタがなくなり新品同様になりました。

 

 

やっとバイクらしくなりました。

 

 

ハンドルも左右グリップも新品です。

 

 

現在、後ろホイルを部品すべて新品でいちから組み上げ進行中。

こう御期待のほどを〜♪

 

 

<クラッチの大改良>

 

スタンダードのTYS125Fのクラッチは「切れるか、つながるか」しかありません。一番大切な「半クラッチ」部分がないのです。それはそうで、油圧クラッチ全盛時代なのに縄文式時代の「ワイヤークラッチ」なの。

 

いつもはペッタリとくっ付いている「クラッチコルク板とクラッチ鉄板」を「引っ張るか、押すか」して隙間を作り広げてやるからクラッチは切れるのです。この「引っ張るか、押すか」の差は体感出来まして、今のバイクに最初から付いています油圧クラッチはすべて「押す」タイプです。縄文式時代の「ワイヤークラッチ」は、見れば分かりますが「引っ張る」タイプです。

 

「押す」は押す力がダイレクトに伝わりますが、「引っ張る」はワイヤーのたるみ分だけどうしてもタイムラグ(時間のズレ)が出てしまう欠点があり「いつ切れて、いつ、つながったか」という一番大切なクラッチワーク部分に難しいところがあります。

 

ということで、多くのショップが販売していますTYS125F用油圧クラッチは「引く」ですが、お嫁に出すうちの油圧クラッチは「押す」ですね。写真のようにマスターシリンダーから出てくるロッドが直接クラッチシフトレバーを押す構造。

 

 

Gas-GasやScorpaのクラッチ機能は「3枚クラッチコルク板」で、押したり引いたりは「皿バネ方式」のいわゆる最新型ダイヤフラム方式。でも、HONDA/RTLやBetaは古典的な「6枚クラッチコルク板」で、、押したり引いたりは「巻き巻きコイルスプリング6本方式」の古臭いけど確実な機能。

 

TYS125Fのクラッチ方式は、HONDAやBetaと同じ方式で「5枚クラッチコルク板+巻き巻きコイルスプリング4本方式」です。スタンダードのこのクラッチのバイクに乗ってみればすぐに分かりますが、まさに「切れるか、つながるか」だけ。「半クラッチでパワーを出す」「微妙なクラッチワーク」という言葉は存在しません。

 

この理由は「5枚クラッチコルク板」にありまして、このバイクは「6枚クラッチコルク板+5枚クラッチ鉄板」に改良変更しています。本当は6本の巻き巻きコイルスプリング方式」にしたいんだけど、町工場レベルでは不可能な改造。で、4本の巻き巻きコイルスプリングを強化タイプにして対応しています。

 

「強化スプリングにしたら重くなるんと違うの」はご心配なく、押す方式の油圧クラッチシステムでクラッチレバーの重さはそうは変わりませんから、ご安心を

 

 

クラッチホースの取り回しも、出来るだけ内部のオイルの移動がダイレクトに出来るように直線的に設定しています。「閉じ込められた空間の液体の移動は、どの方向にも同じ力が加わる(パスカルの原理)」と、おっしゃいますのはフランス人ブレーズ.パスカルのおじさんです。この場合「静止している液体」というのが条件で、液体が動き始めるとやっぱり直線的なのが一番早く伝わる(伝導する)ので、ホースの取り回しもなるべく直線的にですね。

 

次は、スイングアーム取り付け、リアクッション取り付け、後ろブレーキシステム取り付けへと進んでいきますよ。

 

より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっとフレームに乗りました。

 

ステアリングもサンドブラストして磨き上げ、もち耐水グリスで組み上げています。

 

フロントフォーク、左右オイルシール新品交換で、必然的にオイルはMotulフロントフォーク用#2.5オイルを入れています。

 

前ホイル,、タイヤもチューブもスポークもリムもハブも左右ベアリングも新品です。

 

ゆっくりと丁寧に組み上げていきます。

 

新車ではもう手に入らないTY125Fですが、新車同様仕上げまでしてお嫁に出すのはもったいないんで、うちで乗ろうかなんて考えますけど、ツートラに出る計画がないんでやっぱりお嫁に行ってもらいます、の心で組み上げています。

 

白内障の手術で、やたら両目だけが若返ったイチローさんより

エンジンComp(組み立てた状態一式)完成しました。

 

シリンダー&ピストンとリング&ハイカム&ガスケットは新品、他、シリンダーヘッド内部やバルブの擦り合わせ、クランクケース内部の6枚クラッチやギア関係は新品同様です。アンダーガードもピカピカに磨き上げました。

 

参考までに

①Comp (コンプ)とは組み立てた状態を言いまして、プラモデルなら完成したものをいいます。

②Assy(アッシィ)とは組み立てていないバラバラの状態をいいます。プラモデルなら、箱入りを買ってきた状態です。

 

 

さてエンジンが完成しましたが、乗せるべきフレームがありません。いよいよここからフレーム完成へと進んでいきます。

 

もともとは青色でしたけど、カーボンの少し入っている黒色粉体塗装が一番強いという事で、黒色塗装で仕上げました。塗装のコツは「何回にも分けて塗る事」ですね。塗装が本職の人に言わせると「最低でも4回塗りをしろ」と指導してくれます。

 

左右のステップも「薄い赤色」で仕上げました。

 

 

全体像が見えてくるまでもう少し

 

 

 

 

 

元、ヤマハ発動機(株)社員の木村治男さんは、TTR125Fエンジンを開発テストした人です。「木村さんの頭の中は、一にエンジン、二にエンジン」で、そしてそのエンジンは「4サイクル」ですね。一時期、社命で2stトライアラーの開発に携わっていたこともありますが、本命はやっぱり4stです。

 

ロードの神様「ポップ吉村さん」というお名前は今だに健在ですが、吉村秀雄さんも同じで「4st命」で2stには見向きもしません。そりゃそうで、戦争中の飛行機は「すべて4st」で、2stなんて存在しない時代のエンジンの神様です。

 

黒山レーシングはトライアルを初めて以来、ずっと2stでしたけど、黒山選手が「もう世界チャンピオンにはなれない」と判断してBetaMotor契約で11年間やった世界選手権を終了、全日本に専念するためにヤマハ発動機(株)と契約して、初めて4stに乗り始めたといういきさつ。以後、黒山レーシングをお世話いただいたのが木村治男さんなもんで、身も心も頭の中も「4st一本」に染まってしまいました。

 

メカニックの観点から言えば、2stエンジンなんて単純明快な構造でバラし組み朝飯前で、4stはシリンダーヘッド周りが複雑で機械をいじっている体感あり。2stなんて誰が組んでもその性能差はあまり出ませんが、4stのシリンダーヘッド周りは組み手の技量次第で2〜3馬力の差はすぐに出ます。

 

特にその出力を左右するカムの取り付けが勝負の分かれ目で、カムの取り付け部分は勘に頼らずトルクレンチを使って正しく均等に締め付けます。でも腕のいいメカニック(戦時中の言い方で機関士)になると、絶対にトルクレンチで締めないといけないこの部分こそ「手加減勝負」の出番で、締付ける部分のボルトと雌ネジの誤差を見、耐熱グリスの塗る量を調整したりして「感と度胸の手作業」の世界です。

 

はい、機関士の腕が悪いと戦闘機は落ちますし、メカニックの腕が悪いとロードレースやモトクロスはぶっ飛びます。トライアルだとリタイアです。落ちる戦闘機と、たかがトライアルのリタイアを比較する方に無理がありますが、やる機関士とメカニックの気迫に、今も昔も差はありません。

 

という事で、お嫁に出す予定のTTRのエンジンのクランクケース周り部品を綺麗にクリーニングして組み立ての真っ最中。2stにはない「バランサーとかオイル吸い上げ循環装置」とかありまして、面白いもんです。

 

 

クランクケース付属部品や、4st命のシリンダーヘッドもキレイに耐熱塗料でお化粧直しです。

 

クランクケースが組み上がりました。このクランクケースの上下横に組み付ける部品も、きれいに並べてスタンバイです。

 

組み上がったクラッチComp(組み立てた状態一式)が見えていますが、このエンジンのクラッチですが「クラッチコルク板」が5枚です。で、乗ってトライアルをしてみますと「切れるか、つながるか」しかなくて、とても普通の半クラッチワークは無理。という事で1枚プラスの「6枚クラッチコルク板」に改良しています。

 

6枚クラッチコルク板にすると、当然、時代遅れのワイヤークラッチから油圧クラッチに改良でしょう。まだお化粧直しができていませんので証拠写真はありませんけど、もち油圧クラッチ方式に変更です。この油圧クラッチですがレバー部を「引くと押す」がありまして、引く方が割と簡単に作れて取り付きます。でも、引く方式は伝達にタイムロスが出て、細かいクラッチワークは、押す方式にはかないません。ですので当然、黒山レーシングの油圧クラッチは「押す」方式にしています。その証拠写真を待たれい。

 

 

4stエンジンは面白いんで、なかなかフレームに進みませんね。

そうそう、このTYS125Fをお嫁に出す時は「保安部品すべてを取り付け」て出しますので、あなたは書類を持って「市役所」に行ってナンバーを取得してバイクに取り付けるだけ。その瞬間から「街乗り」OKです。

より