<黒山レーシングの中古車販売/第2弾TYS140F→③> | 一郎のだまされ日記

一郎のだまされ日記

チーム黒山レーシング 黒山一郎でございます。

エンジンの力をアップしようと思えば、単純に排気量をあげる事です。例えば、50ccを65ccにとか、125ccを140ccにとか、250ccを280ccとかにです。エンジン(シリンダー)の中を上下するピストン外径の大きいサイズを、シリンダー穴径をその外径に合うようにボーリングして(穴を大きくして)入れてやればいいわけ。

 

でもこの方法は、穴径を広げるに限界がありまして、写真のシリンダーの穴を見てみれば分かりますが、この穴を広げすぎるとスリーブと言うパイプ肉厚が薄くペランペランになり熱膨張に耐えられなくなり、内部で上下する筈のピストンがかじりついて上下しなくなります。

 

だから、この単純明快な方法のボアアップの限界は初めに説明した通り「50cc→65cc、125cc→140cc、250cc→280cc」付近ですね。経験上、この方法の排気量アップは、キャブのセッティングや排気系の変更は何もする必要がありません。スタンダードのままのセッテングでパワーアップOKです。

 

日本のトライアル創成期にイの一番に国産トライアラーを市販したのはHONDAで、HONDA.TL125バイアルスです。この125に当時のナナハンのCB750Fのピストンを、シリンダーボーリングして入れるとぴったしに収まり142ccだそう。で、この、HONDA.TL125バイアルス→142ccバージョンで、日本のトライアル普及に貢献した西山俊樹さん、万沢安夫さん、成田省造さんの御三方がイギリスSSDT6日間トライアルに出場して完走した、という武勇伝を聞いています。

 

排気量が上がったんだから、キャブレターのセッティング変更をしてガソリン量を多くしたほうがいいんではないのか、は民間人の考え方で、やれば分かりますが「あっちが良くなったら、こっちが悪くなった」で収支がつかず、結果、「元のままが一番いい」になりますね。

 

で、これ以上の排気量アップをしようとすれば、「ピストンの上下動(ストローク)を長くする」ですが、この方法の欠点は「回転が上がらなく」なります。ショートストロークの50ccレーサーは14000〜15000回転付近まで上がり、ロングストロークのハーレーダビットソンは「ドッドッドッ」っと回転が上がらない事でわかります。

 

また、ピストンが内部を上下するスリーブ(パイプ)をもっと太いのに交換して、もっと外径の太いピストンを入れるをして排気量をアップする方法もありますが、これをやるに「クランクケース穴の広げ加工+シリンダーヘッドの段付き直し」などなど大変で、だったら最初から排気量の大きいバイクを買ったほうが安くつきます。

 

という事で、TY125Fの125ccのボアアップをしようと思えば、スタンダードのシリンダー穴径を広げるなんて必要なくしごく簡単で、今は倒産してKTMに吸収されてしまったけど旧Gas-Gas社オプショナルパーツとしてヨーロッパだけで販売している140cc Kitと交換すればいいだけの話です。

 

黒山選手がイタリアBetaMotor社契約の時の、メカニック長はポジ.リカルドと申します。このリカルドがBetaMotorを定年退職して「TOP.TRIAL」という用品メーカーを立ち上げて、そこからこのイタリアATENA製140cc Kitを送ってもらっているといういきさつ。でももう「もうすぐ無くなるぞ〜」の連絡があって「どうしょうかな〜」が今の状況。

 

TYS125Fの排気量は、当たり前ですが125ccです。で、この125を140ccに排気量アップして、10年以上長らく乗っておりました。オイル管理をきちんとしていたんでまだまだ使える140ccですが、これを機会にあっさりと、残り二つのうちの残1Kitの新品140ccに周辺の部品を含めてすべて新品交換しました。ちょっともったいない気もしますけどね。

 


もちろん、ハイカムもピストンリングもガスケットも新品交換しました。

 

ピストンとシリンダー壁の新品証拠写真です。

 

シリンダー壁のクロスハッチ模様も新品です。

 

2st車はシリンダー壁に大小のポート穴がたくさんあいていて、ボーリングして穴径を広げると「吸排気のタイミングが違ってくる」ので、大きなピストンを入れてボアアップは不可能な機構構造です。それに、荒っぽく4stのガソリンは上からシャワーのように降りそそいで入ってくるのに対して、2stはピストンの上側左右真後ろから吹き上げるように入ってくる構造。

 

という事で、ボアアップという言葉は4st車にしかない言葉ということを知ってくださいね。

 

より