【茂木健一郎さんインタビュー後記】書いてみました | NO INTERVIEW, NO LIFE.

NO INTERVIEW, NO LIFE.

Interviewr Yohei hayakawa's Blog
(インタビュアー早川洋平の取材ノート)


聞聴道(もんちょうどう)~著者インタビューとポッドキャスト配信の職人 キクタス早川洋平のブログ~


「早川さん、来週の月曜日のお昼前後、時間が取れますか? 

もしかしたら、茂木健一郎さんにインタビューできるかもしれません。

取れても時間は30分程度だと思いますが……どうしましょう?」


懇意にしている編集者のIさんからそのメールが来たのは、今秋のある水曜日のことだった。


『脳をやる気にさせるたった1つの習慣』(ビジネス社)を読んで以来、

ずっと茂木さんにインタビューしたかった私にとって願ってもないチャンス。


超多忙な茂木さんだけに、当日100%インタビューできるという保証はない。

しかし、そういう状況こそ燃えてしまうのが元新聞記者の性か。


私は、間髪入れずに「よろしくお願いします!」と、Iさんに返信していた。


当日の待ち合わせは、12時45分に赤坂TBS本社1階ロビー。

TBSラジオの収録後にインタビューを受けてくれるよう、Iさんが取りはからってくれたようだ。


かくして待ち合わせ時間から2、3分ほどしたころだろうか、

Iさんとともに茂木さんが現れた。


「はじめまして」


そういって私の手を握ってくれた茂木さんは、

テレビで受ける印象よりもずっと、エネルギーに満ちあふれていた。


よし、いよいよインタビューだ。

TBS内にある喫茶店へ茂木さんを案内しようとしたそのときだった。


「すみません。実はこのあと有楽町のニッポン放送へ

打ち合わせに行かなくてはならなくなってしまったんです」


この日は、茂木さん自身も想定していなかった予定が

相次いで入ってしまっているようだった。


Iさんが「打ち合わせは何時からなんですか?」と問うと、

「13時45分頃からだったと思います」。


とすると、次の打ち合わせまではあと1時間弱。

ここは赤坂、ニッポン放送は有楽町。タクシーで飛ばしても15分はかかる。


もちろんこの状況では、収録場所の見当もない。

別日程でお願いするしかないのか。


しかし、超多忙な茂木さんだ、この次にまた会える確証はまったくない……


私が弱気になった瞬間、茂木さんは大きな声でこう言った。


「よし、とにかく一緒にタクシーに乗って」


私は願った。


この言葉の後ろに続くのが「インタビュー受けられるよう何とかするから!」

というひとことだということを。


茂木さんが超多忙だということは何となく想像していたが、

まさにこの日はイメージ通り。


タクシーに乗るやいなや茂木さんはノートPCを開き、

メールを書いていた。


これは、話しかけたらまずいだろうな。


精一杯空気を読んだ(つもりの)私とは裏腹に、

茂木さんが口を開いた。


「早川さんはいま何歳なの?」

「これまでどんな仕事をしてきたんですか?」……

メールを打ちながら「逆インタビュー」をする

茂木さんの「脳力」に圧倒されるうちに、

あっという間にニッポン放送前についていた。


時計の針は13時ちょうどを刺していた。

ニッポン放送につくやいなや、

茂木さんは「打ち合わせ前にスタジオを開けてもらえるよう頼んでみる」と、

受付の女性に交渉。


しかし、担当した方がまだスタジオに来ていないため、

それは難しいということになってしまった。


確かに担当の方にしてみると、まだ40分前。

当然と言えば当然だ。


しかし茂木さんは、笑顔を絶やさない。


13時5分。「まだ、手はあるよ」。


茂木さんは、ニッポン放送を出て、

行きつけの喫茶店へと僕らを案内してくれようとした。


とそのとき、「茂木さ~ん」。


先ほど対応してくれたニッポン放送の受付の女性が

私たちの後を追いかけてきた。


「スタジオ、事前に入ってもOKにしてもらいました」


13時10分。


ニッポン放送●階、●●スタジオ。


茂木さんの心遣いとスピーディーな行動により、

「人生を変える一冊」のインタビューは、スタートした。



ドタキャンされてもしかたない─。

この日TBSへ向かう電車の中、わたしはそう思っていた。


Iさんから「取材できない可能性もある」ということを聞いていたし、

茂木さんが超多忙なことも別の方からうかがい知っていたからだ。


事実、過去に「多忙な有名人」に

インタビューをドタキャンされたことは少なくない。


けれど、茂木さんは嫌な顔ひとつせずに、

「自らの手で」インタビューを実現してくれた。


収録時間30分という番組始まって以来の短さだったが、

内容の濃さは、歴代トップ5に入るものといってもいい。


どんなに有名になっても、どんなに忙しくても、

どんなに周りから持ち上げられようとも、

相手がだれであっても、「人との約束は守る」。


この当たり前でありながら、守れない人も多いルールを、

茂木さんは、「急なスケジュールに追われる典型的なドタキャンパターン」に見舞われるなか、

「当たり前」に守った。


「だれにでもできる当たり前のことを当たり前にやり続ける人が成功する」


最近世の中で多くの人が言うことや、

ビジネス書に書かれていることを「一度疑う」ようにしている私だが、

この真理はどうも疑いの余地がない。


茂木さんと共有したわずか1時間で、確信した。



●Vol.103 茂木健一郎さんインタビュー音声(mp3ファイル)

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■茂木健一郎さんの著書『脳をやる気にさせるたった1つの習慣』(ビジネス社)