東京都千代田区永田町。
政治にまつわる多くのニュースの発信地に、僕は降り立った。
行き先はもちろん国会……
ではない。
到着したのは国会議事堂から歩いて10分の距離にある「参議院会館」。
ミッションは、「人生を変える一冊」104人目のゲスト
松田公太さんへのインタビューだ。
ご存じの通り、松田さんはタリーズコーヒージャパンの創業者。
現在は参議院議員(みんなの党)を務めている。
番組でフォーカスする彼の著書は、『すべては一杯のコーヒーから』。
表紙がちぎれ、多くのページが黄ばんでしまうほど
繰り返し読んだ本書をリュックに、僕は会館に足を踏み入れた。
警備員による手荷物検査、
面会申込書の記入、
追跡無線が付いていると推測される通行証……
意識せずとも胸の鼓動が高まるなか、
僕は松田さんの議員事務所がある階へ向かった。
インタビュー場所は議員事務所の一室。
今年から自社で音声収録ブースを構えたため、
近頃はゲストの事務所やご自宅へ伺う機会はぐんと減った僕だったが、
やはり自社ブースとは緊張感が違う。
インタビュー相手は、もちろん「敵」ではないのだが、
このちょっとした「アウェー」感が、何とも言えず心地いい。
収録機材のセッティングをしながら待つこと5分。
松田公太さんがは現れた。
ジャストフィットしたスーツに、
品格を感じる黒縁のメガネ、
日焼けした顔と引き締まった上半身。
「ファッション誌の表紙もそのまま飾れるのでは」と、
男性の私でも感じてしまうほど、渋い。
確保したインタビュー時間は、約1時間。
「政治家に転身した理由は何ですか?」
「人の心を動かすために一番大切なことは何だと思いますか?」
「人生を変えた一冊は何ですか?」
「人材採用で失敗しないためのポイントはありますか」……
質問ひとつひとつに、
松田さんは目を閉じながら、ていねいにに答えていく。
そしてインタビューも半ばを過ぎたとき、
僕はこの日一番聞きたかった質問を彼にぶつけた。
「借金7000万円をするとき、恐怖は感じなかったのですか」
松田さんが創業時1号店に決めていたのは、都心の一等地銀座だった。
しかし開店には7000万円資金が足りなかった。
しかも、開店を決意した矢先に最大のライバル「スターバックス」が
一足先に銀座に出店したという。
僕なら間違いなくたじろいでいたと思う。
松田さんはやはり目を閉じて、静かに答えた。
「恐怖は感じませんでした。
むしろ行動を起こさない方が僕にとっては怖かった」
やはり、彼は僕らとは別次元の存在なのか。
そんな思いがよぎったが、
ここで「すごいですね」で終わらせてしまっては、
インタビューを生業にする資格はない。
「そうは言っても、リスクは大きかったはずです。
何かご自身の中で決断する引き金があったのでは!?」
僕は食い下がった。
「最悪の事態を想定したんです。事業に失敗して7000万円の
借金を抱えて事業をたたまざるを得なくなったとき、どうすればいいかのを。
すぐに僕は家の近くのコンビニに行きました」
松田さんは「いざとなったらアルバイトで借金は返してみせる」。
そう思ったのだそうだ。
その答え聞いて、思わず納得した。
かくいう僕も今からおよそ1年前、
彼同様「いざとなったらアルバイトしてでも」の覚悟を持って起業した。
「覚悟」という言葉だけをとると、何だか悲壮感漂うが、
要は「思い切り」を良くし、まだ起きてもいない「必要以上」の
恐怖を打ち消そうということ。
僕はそう実感している。
起業家の方なら共感していただけるかもしれないが、
大好きなことやワクワクすることをやっていると
「ストレス」
はほとんど感じない。
もちろんサラリーマン時代にあった会社の看板がなくなるわけで、
ダイレクトに生活がかかる
「プレッシャー」
はある。
でも、おそらく松田さんと僕が経験したように、
人は「覚悟」を決める(二人の覚悟のレベルは全く次元が違うが)と、
リスクをとってでも引き金がひけるようになる生き物なのではないだろうか。
「最悪を想定することで、行動は起こしやすくなる」
インタビューを通じて得た松田さんのこの教えを書いている今、
尊敬するある経営者の言葉が頭をよぎった。
「最悪を想定し、最善を信じ、中庸を行く」
「人生を変える一冊」で過去にご登場いただいた
103人のゲストのひとりの名言である。
さて、だれでしょう?
●Vol.104 松田公太さんインタビュー音声(mp3ファイル)
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■松田公太さんの著書