ギニアのジャングルとルーマニア人と水【石田ゆうすけさんインタビュー後記】 | NO INTERVIEW, NO LIFE.

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Interviewr Yohei hayakawa's Blog
(インタビュアー早川洋平の取材ノート)

 「この本に書ききれなかったことは何かありますか?」。

 僕は、「人生を変える一冊」のインタビューで
こんな質問を著者さんにすることが多い。

それは、えてして載せきれなかった(または載せられなかった)
エピソードの方が面白いことも少なくないからだ。

 「ページ数の都合」
「出来る限り多くの人に読んでもらえるようなネタにしたいという編集者の思い」
「タイトなスケジュールで書いたため、ネタそのものを忘れていた」

などなどの事情により多くのネタが世に出ていない……
こうした事情は、著者さんや出版社の方の多くから聞く話なので、
ほぼ間違いないと思う。

でも、そうしたカットされた部分ほど、実は面白い。

著名な映画で「ノーカット版」があるのも同じ理由からだろう。


今回インタビューした石田ゆうすけさん (旅行エッセイスト)は、
1995年~2002年末までの7年半をかけて、
世界9万5千キロをチャリで走破したという
聞き手にとっては「ネタの宝庫」ともいうべき方。

聞聴道(もんちょうどう)~著者インタビューとポッドキャスト配信の職人 キクタス早川洋平のブログ~
写真右が石田さん。


◆石田ゆうすけのエッセイ蔵 (ブログ)


番組でフォーカスした
『行かずに死ねるか!—世界9万5000km自転車ひとり旅』

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続編の『いちばん危険なトイレといちばんの星空—世界9万5000km自転車ひとり旅〈2〉』
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に数え切れないほどの「人」「エピソード」が書かれていたが、
だからこそ僕は思った。

 「2冊に書ききれなかったネタは絶対にまだあるはずだ」と。

インタビューから30分頃が経過した頃だろうか、
僕は石田さんに「書ききれなかったことはありませんか」とぶつけてみた。

 「う~ん、そうだなあ」

石田さんは両手で目を覆い隠すようにして
しばらく考え込んだあとこんな話をしてくれた。

石田さんがアフリカを旅していた頃、
4カ月ほどルーマニア人と一緒に自転車で走っていた時期があったという。

しかし、相性があまりいいとはいえず、ケンカすることもしばしば。

「ほんと自分勝手なヤツだと思っていました」という石田さん。

そんなある日のこと。

 「45度の炎天下の中、僕らはギニアのジャングルで自転車を押しながら歩いてました。
すると向こうから現地人とおぼしき男性と女性が歩いてきたんです。
彼らは皮膚が乾ききり、目つきもなんだかやばい感じ。
そして開口一番こう言いました。『水をくれ』と」

目的地まではまだ数十キロ以上先。
しかも、その目的地までの距離が「数十キロ」なのか「100キロ」なのか、
実は正確にはわからない─。

石田さんとルーマニア人のふたりは、酷暑のなか、
目的地までの水を数リットルずつ用意していたという。

数字的にいええば、だれかから水をもらう必要はあっても、
あげる余裕はないはずだ。

そんな行程のなか、水が0になり、
目的地に着くまでに消耗しきったら……

それは「生命の危険」を意味することは
世界一周したことがない僕でも想像にかたくない。

「僕はもちろん躊躇しましたよ。そもそも現地の人なのに、
こうした土地を充分な水を用意しないで歩くのはどうなんだろう、とも思いましたし……」

しかし次の瞬間、ルーマニア人は、
自分が持っていた2リットルの水をすぐにふたりにあげていた。

 「驚きました。と同時に僕は恥ずかしくなりました。
僕自身、多くの人に助けられて旅を続けてこられた。だからこそ、
その感謝の気持ちをまた(直接お世話になった人か否かを問わず)
返していきたいと思っていた。なのに、それができなかった。
対して、『自分勝手なヤツ』だと思って数ヶ月過ごしてきた
ルーマニア人の相方は頭ではなく、体で人のために動けた。
『本当の優しさとは何か』を考えさせられました」
 
だれも石田さんを責めることはできないだろう。
僕ならやっぱり石田さんと同じようにとまどうに決まっている。
水をわけてあげる自信も正直ない。 

僕は思った。

自分に余裕がないときに、
どれだけ自分以外の人のために行動ができるか? 
頭ではなく体が先に動くか。

もちろん、僕が今後の人生でここまで過酷な旅をする
ことはないと思う(たぶん)。

しかし、「裸」の自分を試される機会は、
場所や状況を問わず、今年も来年もその先もずっとあるはずだ。
30を過ぎて、かつて自慢だった八つに割れた
腹筋がかなり怪しくなってきた今日この頃。

久々に腹筋でもはじめて、
堂々と水着姿になれる体にしたいと思っている僕だが、
これからは「裸力」も高めていかなくては。

本には書かれていない「ここだけの話」はやっぱり面白い。
これだからインタビューはやめられない。

最後に石田さん。
著書名、ちょっと参照させていただきます。

 「聞かずに死ねるか!」


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Vol.106 石田ゆうすけさんインタビュー音声(mp3ファイル)

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■石田ゆうすけさんの著書

『行かずに死ねるか!—世界9万5000km自転車ひとり旅』

『いちばん危険なトイレといちばんの星空』



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