内膜症に良い食事は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、子宮内膜症の食事療法による効果を検討したものです。

 

Hum Reprod 2023; 38: 2433(オランダ)doi: 10.1093/humrep/dead214

要約:2021〜2022年に病理あるいは画像検査で子宮内膜症と診断された女性で、生理痛・性交痛・慢性骨盤痛のVASスコアで3/10以上の痛みスコアを提示した62名を対象とし、食事療法群(低FODMAP食群、子宮内膜症食群)、食事療法をしない群(対照群)の3群に分け、半年間の治療効果を前方視的に検討しました。食事療法群は栄養士から指導を受けました。なお、低FODMAP食群は、低発酵性オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオールの摂取としました。検討項目として、排尿障害、膨満感、疲労感など全ての痛み症状のVASスコア、QOL(EHP30スコア)、胃腸症状(G1QLIスコア)、食事遵度をアンケートによって調査しました。FODMAP食群22名、子宮内膜症食群21名、対照群19名です(ただしランダム化ではなく患者さんによる選択式)。食事療法群では、ベースラインの疼痛スコアと比較して、半年後に6つの症状のうち4つで痛みが有意に軽減し、11のQOL項目のうち6つでスコアが有意に向上しました。また、対照群と比べ食事療法群で、半年後の腹部膨満感が有意に減少し、11のQOL項目のうち3つでスコアが有意に向上しました。


解説:子宮内膜症は、生殖年齢の女性の10%が罹患しており、生理痛や排尿困難など周期的なものと、慢性骨盤痛や性交痛や不妊など非周期的なものがあります。腹部膨満、腹痛、背中の痛み、疲労などの症状もしばしばみられます。子宮内膜症の治療では、ホルモン療法、手術療法、疼痛管理、ART治療(体外受精、顕微授精)などがありますが、通常の子宮内膜症治療では不十分な場合や副作用を伴う場合があり、必ずしも全ての方に満足した効果が得られるわけではありません。そこで、子宮内膜症の女性の間では、瞑想、呼吸法、鍼治療、大麻、食事療法などの自己管理戦略に対する関心が高まっています。そのような方には、低FODMAP食や子宮内膜症食が用いられることがあります。低FODMAP食は、オーストラリアの研究者によって開発され、子宮内膜症関連の痛みの症状を軽減するのに効果的であることが報告されています。子宮内膜症食は、子宮内膜症の女性が開発した、経験に基づいた回避食(こちら)であり、オランダでよく使われていますが、子宮内膜症食の有効性については明らかではありません。また、子宮内膜症の食事療法に関するガイドラインは存在しません。これまでの研究から、子宮内膜症の方には、フルーツ、お魚、抗酸化物質(アンチエイジング)が良いとされています。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、低FODMAP食や子宮内膜症食は子宮内膜症による痛みの軽減やQOL向上に有効であることを示しています。本論文の問題点は、ランダム化試験ではないため選択バイアスの可能性があること、パイロット試験であること、長期的な影響のデータがないことです。 

 

下記の記事を参照してください。

2019.2.7「☆ビタミンDと生殖

2018.4.29「フルーツで子宮内膜症予防?

2013.5.22「レスベラトロールは内膜症の方にもお勧め

2013.8.13「子宮内膜症と環境ホルモンの関係

2013.3.19「お魚は内膜症の方にもお勧め