彼と彼の梅雨明け・23 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

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苦手な方はお気を付けください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

働くことは嫌いじゃない

 

お金を稼ぐことも重要だ

 

でもこれからは、ニノと過ごす休日を積極的に作っていきたい

 

突然ショートしたように使い物にならなくなってしまったのは、慢性的なニノ不足が一番の原因じゃないか?と、今は思う

 

この数日間、ニノと少しも離れずに過ごせたことで、全てのエネルギーが満タンになっているのがはっきりと分かるから

 

 

 

 

 

「いってきます」

 

「いってらっしゃい、いってきます」

 

「いってらっしゃい、気を付けてね」

 

 

充実した連休が終わって、二人一緒に玄関を出ると

 

 

「わっ、まぶしい…」

 

 

青い空が目に飛び込んできた

 

 

「雨、止んでるね」

 

「えっと…明けたのは認識してますか?」

 

「ん?なにが?」

 

「梅雨です」

 

「…いつ?」

 

「二週間くらい前かな?」

 

「そんなに前?!」

 

「はい、そんなに前に、です」

 

 

梅雨が長かった

 

太陽が顔を出さない日も多かった

 

だから今日も当たり前のように曇り空で雨が降っていると思っていたのに

 

随分前に明けていたんだなぁ

 

 

「やっぱり気付いてなかったですか」

 

「うん、全く」

 

「じゃあ、プロジェクトを無事に終えたことは?」

 

 

あのプロジェクトのこと?

 

そういえば何回か打ち上げがあったような気がするけど

 

 

「んー、それは…なんとなく?」

 

「なんとなく?!あの仕事をなんとなく?!うわー、すごいなー、それは予想外だったなー」

 

「予想外って?」

 

「会社に行って難しい仕事をすれば必然的に必死になって自然に元に戻っちゃうかもー?とか思ってた俺の予想の外側でした」

 

「必死…だったような気はするんだけど…うーん、あんまり覚えてないなぁ」

 

「もちろん必死だったと思います、終わった端から忘れていかないと成立しないほど大野さんが頑張ってたってことですから」

 

「そう…なのかな?」

 

「そうです!でも、すごいなー、やっぱりすごい、ぼんやりしてない時は当然だけど、ぼんやりしてても大野さんはかっこいい!」

 

 

ニノが笑ってる

 

今はそれが一番嬉しい

 

 

 

 

「暑いですね~」

 

「そうだね」

 

 

朝日に焼かれたアスファルトがジリジリと熱を発している

 

 

「もう夏ですねぇ~」

 

「そうだね…」

 

 

夏を迎える前に、梅雨明けをニノと一緒に笑って迎えたかったな…

 

 

 

「今日が梅雨明けってことにしませんか」

 

 

大通りでタクシーを待っている時、額の汗をハンカチで拭いながらニノが言った

 

 

「でも二週間前ってさっき…」

 

「本日、二人の梅雨が明けましたことを宣言いたしますっ なーんて、どうですかね?」

 

 

…二人の、梅雨明け

 

 

「うん、そうなったらすごく嬉しい」

 

「じゃあ、そういうことにしましょう!ふぁー、今年の梅雨はほんとに長かった!明けてよかった!俺も嬉しいですっ」

 

 

ニノは俺のことをすごいとか格好いいとか言ってくれるけど、ニノのほうがすごくて格好いいんだ

 

とても強いのに、いつでも優しい

 

俺も、そう在りたい

 

 

 

 

「ニノ」

 

「はい?」

 

 

タクシーを降りた所でニノの手を握る

 

 

「例の宣言は今日の夜でもいいかな」

 

「もちろんいいですけど…?」

 

「今日はきっちり定時で帰るから、宣言をする前にニノのお誕生日をお祝いしたい、ちゃんとおめでとうって言いたい」

 

 

これからも長く一緒に生活をしていくから、また大切な日を忘れることがあるかもしれない

 

そんな時は「ごめんね」も必要だけど、そこでぐずぐず落ち込まないで、遅くなったとしてもちゃんと「おめでとう」を贈ることが大事なんだよね?

 

 

「えー!嬉しい!やったぁー!」

 

 

いつもより早い時間で人影も少ないとはいえ、ここは会社の目の前で、手も繋いでしまっているのに

 

ニノはぴょんと跳ねて喜んでくれた

 

初めからこうやって言えていたらよかったんだね

 

 

 

「大野さんっ もしよかったらなんですけどぉ」

 

「うん、なに?」

 

「宣言の前に七夕もどうですかっ?」

 

「いいね!やりたい!」

 

「やったーっ」

 

「笹と短冊は…まだある?」

 

「あります!役目を果たす前に捨てるのはなんだか可哀想で…実は、こっそり隠してあるんです」

 

「よかった、ありがとう」

 

「帰ったら用意しておきますね、お願い事、決めておいてくださいっ」

 

 

短冊に書きたい事は

 

 

「うん、決まった」

 

「もう?!」

 

「ニノ大好きって書く!」

 

「…ぷっ…あははっ」

 

 

 

今夜、二人の長い梅雨が明ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わり