彼と彼の梅雨明け・3 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

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苦手な方はお気を付けください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大野さん?」

 

 

楽しい妄想がいい感じにまとまっても、俺の手からボールペンが離れる様子は無い

 

 

「もっと細いほうがよかったですか?」

 

 

長い願い事が書きたいのかもしれない

 

色紙はまだ余ってるから、すぐに大きな短冊を用意出来る

 

 

「新しい紙を…」

 

 

ボールペンを笹の横に置いて、引き出しからハサミを出そうと手を伸ばした

 

 

「今日って…」

 

 

呟いた大野さんは願い事を脳内で練っている風でもなく、キッチンにある小さな窓に目を向けている

 

 

「あいにくの曇り空でしたね、織姫と彦星、こっそりと会えてるといいですね」

 

「……え?」

 

「地上から天の川は見えないけど、そのぶん誰にも邪魔者されずに会えてるかなーって」

 

 

彼等にとっては年に一度の逢瀬だ

 

こっち側の恋人は仲良くやってるから、そっち側の恋人達も仲良くやれてるといい

 

 

 

「…七夕」

 

 

大野さんが吐くように言った

 

 

「はい、今日は七夕です」

 

 

曜日や日付けに意識を向けていられない日々だからこそ、この作戦に意味がある

 

 

「新しい短冊作りますね」

 

 

色紙にハサミを入れた瞬間、ゴンッという鈍い音がした

 

それは大野さんが冷蔵庫のドアに後頭部をぶつけた音だった

 

 

「大丈夫ですかっ?!」

 

 

疲れが足に来ているのかもしれない

 

顔色も悪い

 

今にも倒れてしまいそうだ

 

今朝も、帰宅した時にも気付けなかったけど、相当疲れが溜まっているのかもしれない

 

 

作戦は一時中断

 

 

「ソファまで行きましょう」

 

 

身体を支えるように腕を掴む

 

 

「…ごめん」

 

「こっちこそごめんなさい、少しだけ歩けますか?」

 

 

顔を覗くと、ハの字になった眉が見えた

 

 

「ほんとにごめん…」

 

「謝ることじゃないですよ、短冊は後で書きましょうね」

 

 

大野さんの忙しさは俺の比ではない

 

願い事の二枚目は健康祈願にしたほうがよかったかもしれない

 

 

 

「今日は早く寝ちゃいましょう、着替えとか用意してきますねっ」

 

 

ソファに腰を下ろした大野さんに言って、寝室へ向かおうとすると

 

 

「ニノの…」

 

 

泣きそうな声が聞こえた

 

 

「え?」

 

「ニノの誕生日…」

 

「俺の誕生日がどうかしました?」

 

「過ぎてる…」

 

「あー」

 

 

俺の誕生日は確か週頭だった

 

大野さんは当たり前のように早朝から深夜まで仕事が詰まっていて、非常に珍しく「おめでとう」が無かった

 

自分から「誕生日です」という主張もしなかった

 

 

長く一緒に居ればこんな時もあるよ

 

大野さんの仕事が落ち着いたら、のんびりおうちデートをしよう

 

 

そんな風に思っていたから少しも悲観しなかったし、自分でもすっかり忘れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく