「二人の再会にかんぱーい!」
心地のいいワイングラスの重なる音がした。
今日もヤンスンは全身派手な服装で現れた。
しかし決して下品ではなかった。そして指につけているダイヤモンドの輝きに負ける事なくワインを飲む姿も様になっていた。
ヤンスンがどうやってここまで成り上がったのかどうしても気になったキョンミは悩んだ挙げ句、結局連絡をしてしまい、ヤンスンの泊まっているホテルのレストランで食事の約束を交わした。
「必ず連絡くると思っていたわ」
ヤンスンは少し意地悪そうに笑った。
「ジェジュンと別れたと聞いて避ける必要もないと思った途端すごくなつかしくなったの」
それは本当の気持ちだった。利害関係もなく対等に接してきたのはヤンスンだけだったと、仕事をはじめて特にそう感じていた。
「キョンミの気持ちわかる。私も正直ずっとキョンミの事を憎んでいたと思っていたけれど、顔を見た途端懐かしさしかなかったわ」
「ほんと恨まれて当然の事をしたわ。あの時は本当にごめんなさい」
キョンミは素直に謝った。
「あら、お姫様のキョンミが素直に謝るなんて、びっくりだわ」
「ヤンスンの言う通りあの頃の私は自分の事だけ考えていた。私に言った最後の言葉ヤンスン覚えてる?」
「忘れたわ。何か言ったっけ?」
「凄く怖い顔をして《お前ほんと最低な奴だな。二度と顔見たくないわ》って」
「え、ちょっと待って?私そんな事いった!?私完全不良娘じゃない!怖っ」
「私お前呼ばわりなんてされた事なかったし、本当トラウマになりそうだったわ」
「それはそれは失礼しました!お嬢様」
二人は顔を見合せ大声で笑った。
お互い謝罪したのをきっかけに二人はすっかり打ち解け昔話に花を咲かせ、気がつけばワインを3本開けていた。
「ユノ、帰らなくていいのか?」
久しぶりに会った二人は肌を重ね愛を確かめ合った。
「ん、何時?何時でもいい。ずっとジジとこうしていたい・・・」
ユノは目をこすりながらジェジュンを抱きしめた。
ユノの体温がダイレクトにジェジュンの肌に浸透していき、ジェジュンは満たされた気分になりユノに抱きついた。
人は身体に飽きてもその人のぬくもりには飽きないと誰かが言っていたがまさにその通りだとジェジュンは思った。
(もちろん身体も飽きる事はなく、むしろ怖いくらい溺れていってる)
時折自分でもびっくりするような嬌声を上げてしまう事もあり
「ジェジュンはますますかわいくなる」とユノに言われ、耳まで真っ赤になったことがあった。
(この身体を独り占めしたい。ずっと待っている覚悟はできていたが、何週間も会えない日々が続くと情緒不安定になってしまう。そしてこうして抱かれるとまた心が落ち着く・・・)
「帰らなくていいよ。ユノヤ、今日はここで泊まろうよ、」
「ん・・・そだな・・・」
そう言いながら二人はしばらくして着替え始めた。
「ジジ、これからもっと時間取れるようにするよ」
着替える時のジェジュンの寂しそうな背中を見てユノはたまらなくなりジェジュンを後ろから抱きしめた。
「いいよ、仕事忙しかったんだろ?」
「実は・・・仕事もそうだけど、流産したことをキョンミやっぱり忘れていて・・・」
(忘れてた?!嘘だろ?信じられない)
ジェジュンは驚いた。
「俺は安堵した気持ちと同時にやはり寂しかった。キョンミはその事をすごく気にして次の日から仕事を早く切り上げて家に帰ってきた日が続いて…」
「そう・・・」
(女性は男と違い子を宿した時から母性に目覚めると思っていた。
最後は子供を捨てたヤンスンでさえあの時はお腹に宿した我が子を守ろうと必死だった・・・だから気持ちも離れてしまった俺との結婚も強く望んでいた。あんなに好きだったユノとの赤ちゃんなのに、その子の存在すら忘れるなんて、ユノはずっと忘れられなくて苦しんできたのに・・・そんな嘘みたいな話…嘘?キョンミが?まさか)
考え込んでいるジェジュンを見てユノは哀しんでいるように見え思わず抱きしめた。
(まさか…妊娠したことも嘘?いや、いくらなんでもそれはない、日々の忙しさで忘れただけ、きっとそうだ)
「ジェジュン?」
「あ、うん。正直に話してくれてありがとう」
何度も振り払おうとしたが疑惑の滴がジェジュンの心に波をたて続けた。