あのときとかわらない俺の愛しい弟がそこにいた。
手をさしのべると、大きな瞳はより大きくなり、驚いた顔もあのときと同じ。
あれからもうどれくらいたったのだろう。
施設の前でおまえを見つけてから。
伸ばした手をあのときと同じようにチャンミンが握り返す。
「変わらないな。」
つい、心の声が口から溢れた。
チャンミンは何のことかわからずに俺を見つめた。
「行こうか。」
チャンミンの手をひいて、空港の出口へと向かう。
行く宛なんかない。
この少し前、俺はドンヒョンさんに少し時間をくれと頼み込んだ。
必ず、後から行くからと。
ドンヒョンさんが許してくれるとは思わなかったが大きなため息をつくと、
「いつかおまえの口からその言葉がでるだろうと覚悟していたよ。
後から行くからという言葉がついているだけ、ましか。」
「すみません。」
「いや、気にするな。最後まで私の我が儘に付き合おうとしてくれたこと、感謝してる。」
「本当に後から行きますから。」
「期待は時に人を傷付ける。だから、期待せずに待っているよ。」
「ごめんなさい。」
微かに笑った顔。
それは、とても哀しく見えた。
「どこ行くの?」
さっきまで泣いていたチャンミンが俺の顔をのぞく。
「どこ行きたい?」
「どこでもいいよ。」
行く宛も決まらず、電車に乗る。
空港からでる電車はほとんどが、観光客か旅行から帰宅の家路へと行くもの達だ。
多くのものたちが降りる乗り換えの駅で俺達も降りた。
あれから、チャンミンは何も聞かない。
そして、俺も何も喋らなかった。
降りた駅の近くは高層ホテルが立ち並んでいた。
そのうちのひとつへと入っていく。
「ツイン空いてますか?」
「あいにく、今いっぱいで、ダブルのお部屋なら。」
「そこでいいです。」
カードキーを渡され、エレベーターに乗り込む。
閉まる直前に乗り込んできたのは、仲良さげな恋人同士だった。
会話を聞かれまいとするせいか、顔を近づけて話している。
キスでも始まりそうなくらい近い距離だった。
ふと、横にいるチャンミンをみると、目線をそらしていたが、耳は真っ赤になっている。
俺はイタズラ心がわき、チャンミンの脇腹をつついてみた。
「なっ!」
大きな声に二人は後ろを振り返る。
ばつが悪そうに俺達は頭を下げた。
先にその恋人達が降りていく。
男性が女性の腰に手をまわし、エスコートしている姿はとても自然だった。
「何で突然、脇をつついたの?」
口を尖らせて俺に抗議をする。
「同じこと考えてたから。」
「同じことって?」
エレベーターが部屋の階にとまり、俺達は降りた。
チャンミンの質問には答えず、部屋まで行き、鍵を開けた。
そして、扉が閉まる直前にはチャンミンを抱き締めた。
「え?」
「こうしたかったろう?」
チャンミンの少し開いた唇を塞ぐ。
※亀更新すみません。
やはり、二人の萌がないと妄想が( ;∀;)