せっかく珍しい花を写真に納めたのに、ふと、横を見ると、
「ん?あそこにも、あれ、あっちにも山盛り同じ赤い花が咲いてる!」
つまりは、わざわざ写真に納めた花は珍しい花なんかじゃなくて、この辺りにはよく咲く花のようだ。
「何だ。」
ユノが少しがっかりしていると、
「でも、あの崖に咲いているのは、この一本だけなのですから、珍しい花なんですよ。」
と、チャンミンが笑顔で話す。
なるほど、心得ている。
こうやって、男心を擽るのだろうな。
いや~私には無理だわ。
無駄足だったねとか、信じる者は救われるんじゃないの?とか言っちゃうな。
ユノもチャンミンに笑顔で返した。
「どうせなら、二本で咲いてほしかったな。」
「どうしてですか?」
「一つはチャンミンでもう一つが俺。どこにいても、二人でひとつ。だろう?」
あ、チャンミンの顔が赤い。
こいつのこの技、私が習得したいわ。
これくらい、うまく照れることができたら、私もとっくに嫁に行けてたな。
いろいろあった旅もあっという間に終わり、帰宅する時がやってきた。
空港につくと、それぞれ違う便に乗るため、最後の挨拶となる。
また、しばらくお別れだ。
「じゃあ、お互いにがんばりましょう。」
「そうだな。」
二人は軽く握手を交わした。
以外にも二人はドライで、私の方が、うるうるしている。
「やだな。幸田さんが泣いてどうするんですか?」
「うるせー。泣いてないやい。」
鼻をすすりながら、涙を、腕でふく。
「人の心配はいいから。ユノ忘れ物ない?携帯は?パスポートは?お財布は?ちゃんと持ってる?」
「大丈夫。さっきチャンミンが確かめたから。」
おいおい、まだそこは、チャンミンが心配するのね。
「ユノ、時間になるよ。そろそろ行かないと。」
「そうだね。じゃあ、二人とも元気で。
幸田さん、チャンミンのことよろしく頼みます。」
「お!まかせとき!」
ユノの背中を見送りながら、チャンミンは小さく手をふった。
ユノは後ろ姿のまま、大きく手を振る。
どこか寂しげだ。
「チャンミンも大人になったね。」
「はい。」
「きっと、ユノの方が機内で泣いているな。」
「そうかな。」
「そうだよ。」
「そうかもですね。」
チャンミンも寂しそうに笑う。
泣き虫だったチャンミンは、泣くのを我慢するようになったし、泣くのを我慢してたユノは、涙もろくなってきた。
非対称の二人だけど、本当にいいコンビだわ。
少し空いた時間にコーヒーショップに入る。
チャンミンは携帯を見ながら、くすっと笑った。
「どうした?何がおかしい?」
「ユノが、チャンミン会いたいー!って。」
「会ったばっかりなのにね。」
「でも、わかります。会ったら、もっと、恋しくなりました。」
「おいおい、のろけか?」
チャンミンは、それに答えずに、うつむいた。
赤い耳が、照れてる証拠だ。
チャンミンは、残ったコーヒーを一気に飲み干すと、
「そろそろ僕達も行きますか?」
「そうだね。」
「楽しかったですね。」
「うん、楽しかった。」
「また、来年もこれるかな。」
「そうだね。来ようね。」
「来年もついてくる気ですか?」
「は?お邪魔虫だっていいたいのか?」
「うそですよ。幸田さんは、僕達の大切な仲間ですから。」
「わかってるなら、よろしい。」
「来年は、現地についたら、別行動にしましょうね。」
「チャンミン!」
チャンミンは、笑いながらも、寂しそうな瞳をしていた。
夏は、みんなに平等にやってくる。
だが、二人の小休止はしばらくないだろうな。
次の時は邪魔しないから、存分に楽しんでくれ。
「次くるときは、ダブルデートにしましょう。」
「あ、あん?」
「幸田さんに課せられた使命です。次の機会までに、恋愛をすること。」
「うるっせぇ。」
それは、無理なんだよ、チャンミン。
ユノやチャンミンのような素敵な男達のそばにいたら、よほどの人じゃないと素敵に見えないのさ。
二人を応援することの方が、恋愛するよりずっと楽しいから、しばらく独身が続きそうだ。
だから、二人に責任とってもらうぞ。
二人の幸せが私の幸せなんだから。
※このお話は終わりです。
最後まで大きく盛り上がらなくてすみませんw
早く、二人に会いたいですね。