朝、目覚めたらめずらしく彼の姿がなく、コーヒーの香りがした。
ダイニングテーブルにはフルーツと共に、昨日彼と作ったバナナマフィン。
そしてテーブルの真ん中に豚の置物?
椅子に座ると、「おはよう」そう言って彼が入れたてのカプチーノを運んでくる。
「HAPPY WHITE DAY♪」
そう、言ってテーブルの上にあった豚の置物を手渡された。
てのひらに乗るくらいのその豚の置物は、桜の花が体にちりばめられ、
よく見れば指輪を入れるケースになっていた。
「サンチュペンからへジョンへってソンムルだよ」
『可愛いわね』
「指輪は俺が買ってあげてって書いてあった」
そう言って笑う彼。ポケットから取り出した指輪をケースにセットする。
銀色のシンプルな指輪。
「お気に召しましたか?お姫様」
『約束、守ったわね』
昨年、ホワイトデーに何ももらえなかったとツイで嫌味を言った私。
「去年は、バレンタインライブをへジョンに捧げたつもりだったんだけどな~。
だからさ、本当はホワイトデーに俺がもらう番だったんだけど。
まあ、十分体で払ってもらったけどね」
そう意地悪く笑って言う彼の顔を見ながら、こみ上げる幸福感をかみしめ、
バナナマフィンにかぶりついた。
「恋する季節」ナオト・インティライミ
香りはラベンダーかミント センチメンタルなクレヨン
シュガーたっぷりのハーブティ ほつれ気味のソファ
芯の切れたホッチキス 魔法じかけの時計
OK 週末はカプチーノ
なおさら気持ちはクレシェンド 寝不足でエトセトラ
幾千の愛のメロディも 足りない この想いが
ざわめきだして キマグレにキラキラ宇宙へと泳ぎだす