※今日二度目の更新。

ダイア編。こっちも後二回で終わらせる。


 なんだか、貴方は私に似ていた。
 誰も信じられないで、誰にも心を許さないで。
 最初は、ただの同情。
 貴方の笑った顔、少し寂しそうな横顔。
 それらを見ているうちに、いつの間にか私は貴方に惹かれてた。
 もっと笑っていて欲しい、そんな寂しそうな顔しないで欲しい、私に心を許して欲しい。
 私も少しずつ貴方に心を許していくから。

 私は、エリックがくれたくまのぬいぐるみを抱えながら、街中を走っていた。
 アクアさんがいなくなった。
 アクアさんは、エリックの大切な友達。
 ずっと塞ぎこんでいた彼女だったのだけど、今日はカイト親衛隊隊長と共に祭に来ていた。
 そして、居なくなってしまった。
 アクアさんは、言葉が話せないらしい。
 もしかしたら、戻れなくなって困っているのかもしれない。
 私達は、手分けして彼女を探した。
 だけど、人ごみの中で彼女を探すのは難しい。
「どこに行ってしまったのかしら」
 私は、一人呟く。
 ふと、視界の片隅に海が見えた。
 違う。海じゃない。それは、人。
 人と人との間に微かに見える海の色。
 私は人ごみを掻き分けながら、その後を追う。
 確か、アクアさんは海のような綺麗な髪をしていると、言っていた筈だから。
「あっ」
 何かにつまづいて、転んでしまう。
 慌てて顔を上げると、そこに彼女はいなかった。
 私は、立ち上がり周囲を見渡しながら歩く。
 まだ、遠くに行っては居ないはずだから。

※後、二回で終わる予定。


 私は、カイトさんに手を引かれながら人ごみの中に居た。
 街は華やかだった。
 沢山の明り、楽しそうな声。
「エリックの奴どこに行ったんだよ!」
 カイトさんの声は大きくて、騒がしい人ごみの中でもよく聞こえる。
 これだけ人が居るのだから、エリックに会うことはないかもしれない。
 エリックに会わなくてすむという安堵感と、少しの寂しさを感じながら私はそう思った。
「     」
 えっ?
 どこからともなく、エリックの声が聞こえてきた気がした。
 私は辺りを見渡す。
 すると、人ごみの中からエリックの姿見えた。
 笑っていた。
 私も見たこともないような、素敵な笑顔で笑ってる。
 知らない女の人に向かって。
 気がつくと、私はその場から逃げ出していた。

私は貴方が好き
でも何で・・・
こんなに・・・・
不安何だろう?
貴方のそばにいたい・・・
でも貴方のそばにいれない・・
苦しいよ・・・
悲しいよ・・・
寂しいよ・・・
私の心は何かの鎖に
縛られてる・・・
泣きたいけど・・・
泣く事を忘れ・・・
泣きかたも忘れた・・・
いっそ貴方の事を
忘れたい
でも忘れられない・・・
貴方が好きだから

 ※自分の小説ばっか更新してないで、絵とか更新しやがれって感じだが、正直自分の小説だけで一杯一杯だ。

 そろそろ連載終わる(後、四、五話ぐらいかな。)ので、終わったら、絵とか更新できると思う。

 休日に絵とか更新できたらしたい。

 エリック編毎週金曜日更新です。


 街は賑やかだった。
 あちこちに電灯が点けられ、出店が出ている。
 沢山の人で溢れかえっていた。
 時折声をかけられ、俺はそれに適当に返した。
 祭の嫌なところは、常に人に見られているというところだろう。
 少なくとも俺にとっては、そうだったし、今でもそうだ。
『よく聞け、エリック。王子らしからぬ言動をしてはいけない。特に人前に出るときは、気をつけるんだ。いいな?』
 その言葉を今も昔も頑なに守っている。
 祭では、いつも愛想笑いを振りまいていた。
 自分を抑制し、祭を楽しんだことなど一度もなかった。
 小さい時、同じ年ぐらいの子供が親に何かをねだる姿が、とても羨ましかったのを今でも覚えている。
 窮屈なもの、それが小さい時から俺が祭に対して抱いているイメージだ。
「エリック王子! どうだい、挑戦していかねぇかい!?」
 そう声をかけてきたのは、輪投屋の香具師だった。
 まだ若く、年は俺より三つほど上だと言っていた気がする。
 この香具師は、いつも俺に勝負を挑んでくる。
 勝負は簡単、俺が景品を取れるかどうか。
 景品に輪をかけることができれば、その景品を取れる。
 普通に置いたのでは、簡単に取られてしまう。
 だから、店主は景品を投げにくい位置に置いたり、取りにくい形のものにしたりしてくる。
 俺は景品を狙って投げる。
 そして、俺は一度も負けたことがなかった。
「いいですよ」
 断る理由はない。
 それに、これは俺の祭の中での数少ない楽しみだった。
 ふと横を見ると、ダイアの視線が景品のくまのぬいぐるみに向かっている事に気がついた。
 その視線は、どこか物欲しそうだった。
「ダイア、あのくまが欲しいのか?」
 俺が小声で尋ねると、ダイアはぴくりと、体を振るわせた。
 図星のようだ。
「取ってやるよ」
「えっ、でも、あれ取りにくい位置にありますし、大きいですし、無理なさらなくても……」
 ダイアはそう言うが、その表情はどこか嬉しそうだ。
「大丈夫だ」
 俺は、ダイアに向かって微笑んだ。
「じゃ、今回はくまを取ったらお前さんの勝ちでどうだ?」
 話を聞いていた香具師がそう提案しながら、俺に輪を渡す。
 俺は、それに同意した。
 俺の同意を確認すると、香具師は少し景品を動かした。
 くまを守るように、五つの景品を置いていった。
 くまを守る景品は、くまより一回り大きい。
 一発でくまをしとめるのは不可能に近い。
 香具師は、俺に向かって不敵に笑った。
 勝負を難しくしてしまったかもしれない。
 だが、後悔はない。
 勝負は、難しい方が燃える。
 俺は、受け取った輪を見た。
 輪は六つある。
 これら全てを使って、あのくまを取る。
 俺は、くまではなくその周りの景品を狙った。
 輪は吸い込まれるようにして、次々と景品を取っていく。
 障害になりそうな景品は、全部で五つ。俺は、それら全てを一発でしとめる。
「うわ、嘘だろ!? わざと取りにくいので囲んだのに」
 香具師が関心しながら、景品をどけていく。
 そして、最後の一回。
 これで、全てを決める。
 俺は、輪を投げた。
 輪は弧を描きながら、くまのぬいぐるみに吸い込まれていく。
 俺の勝ちだ。

「はい」
 俺は店主から受け取ったくまをダイアに渡した。
「ありがとうございます!」
 ダイアは、子供のように無邪気に笑い、くまのぬいぐるみを抱きしめた。
 俺もつられて笑った。

 ※異様に長い夏の話シリーズ。

 ちなみに、もう大分後半戦なので、あとちょっとで終わります。

 三月から、連載してたんだ。すごいな。 

 次回、長いです。後、来週アクア編休み。


 大人びているのに、時折見せる子供っぽさ。
 何もかもを包み込むような笑顔。
 時折見せる無邪気な笑顔。
 それら全てに惹かれていた。
 王子ではなく、エリックとして扱ってくれた彼女。
 彼女となら、結婚するのも悪くない。
 今は、そう思う。

 祭の日当日。
 俺とダイアは、城の玄関でアクアを待っていた。
 祭は六時から開催される。
 今は、六時半。
 三十分ほど待っていたが、アクアは来ない。
「エリック、何をしているのだ?」
 ふいに声をかけられた。
 父上だった。
「いえ、その……」
 正直に話していいものかと言いよどんでいると、俺の答えを待たずに父上は早く祭りに行くよう促した。
「この祭は、毎年王家の人間も参加する仕来りになっている。 早く行って、国民にその姿を見せて来い。ダイアンサスさんもだ」
「しかし……」
「私に意見するつもりか? エリック」
 真っ直ぐ見据えてくるその瞳は、反論を許してはくれなかった。
「いえ。行って参ります」
 俺は淡々とそう答えて、祭へと向かった。
 結局、どこまでも俺はこの人の言いなりだった。