創作◆あなたと始める物語は。34★《ダーリンは芸能人》二次創作 | 二次元のカレに逃避中♪

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主に、SNSアプリの乙女ゲームについてのレポ、および携帯恋愛ゲーム《ダーリンは芸能人》(LoveDuetを除く)をベースとした妄想2次小説を書いてます。※PC推奨です
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 あなたと始める物語は。34

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作





その後、私は荷解きをするためにホテルに与えられた部屋へ戻った。

ドアを開けた瞬間、眼の前に広がるのは開放的なリゾートホテルのダブルベッドルーム。

これを一人で使うのはちょっと寂しいというか虚しいというか。

ま、仕方ないよね。

仕事で来ているわけだし、こんなに素敵な部屋を用意してもらってるのにそんな贅沢を言ってちゃバチが当たる。

……でもこれ、休暇にパートナーと来たのなら本当に最高だと思う。

天蓋付きのダブルベッドにテラス窓から見えるのは碧い海。

ジャグジー付きのお風呂からも海が見えて。

……。


「はぁー……出かけようかな」


一人で考えていたら益々寂しい気分になりそうだ。

今日の夕食は初日ということでホテル本館にあるレストランで摂ることになっていて、それまでは自由に過ごしていいと言われている。

が、ふと気付いたのは明日からの食材のこと。

先ほどチーフさんとキッチンの確認はしたものの食材の準備についての話をするのを忘れてしまっていた。

レストランからコテージへのミールケータリングサービスはないらしく、そのレストランも利用できる時間帯は決まっているから今回の場合はあまり頼れそうにない。

まあ、だからこそ私が居るのだけど。

そのため、先ずは日持ちのする食材だけでも揃えておかなければならない。

私はまだ彼らのヴィラに居ると思われるチーフさんに連絡し、買い出しに行くことを告げた。

半袖シャツの上に薄手のロングカーデを羽織って部屋を出、島の中で一番大きな市場を教えてもらおうとフロントへと立ち寄る。

ところが、その市場の場所を教えてもらったのはいいものの、そこまで行くのは徒歩では非常に厳しいことが分かった。

レンタカーやレンタバイク、もしくはバスかタクシーを利用するしかないらしく、さらに利用できるバスはというと空港ホテル間の送迎用バス以外だと島内循環バスのみだと言う。

とりあえずはとホテル前に掲示されてある循環バスの時刻表を見ると、次のバスは、遊歩道を下りたところにあるバス停に来るもので50分後、ホテル前まで来てくれるのは1時間50分後だった。

よく見ると10分前に出たばかりだ。

……うーん。

このホテルにはレンタカーサービスはあるけれど、何せ車が必要無いところで暮らしてるからほとんど乗ったことはなく、さらに言えば私自身の運転技術はビミョーな域にある。

ここまで来る途中にかなり狭い道があったし事故を起こすわけにもいかないので、対策を練ろうとホテルの中に戻ろうとしたときだった。


「おねーさーん、市場まで送りますよー」


と、クラクションを鳴らして後ろからそう声を掛けてきたのは京介くん。

ナニゴトかと駆け寄ると助手席には一磨くんがいることに気付いた。

レンタカーで二人揃ってどこか行くのかしら。


「愛優香、食材の買い出しに行くんでしょ? 一緒に行くよ」

「それはめちゃくちゃありがたいけど作詞はいいの?」

「まだ1日目じゃん、何とかなるって」


ケラケラと笑いながら言う京介くんに対し、一磨くんは苦笑いしてるけれど。

それでも車で一緒に来てくれるのは正直言って助かるかも。

大荷物を持って遊歩道を上がるのはちょっとキビシそうだしね。


「じゃあ、お願いしようかな」

「まかせて」


国民的アイドルの二人をつかまえて荷物持ちなんて言っちゃダメなんだろうけど本当にありがたい。

私が後部座席に乗ってすぐ、車はホテルのバス停前を出発した。

片方が退避しなければすれ違えないような細い道をしばらく行くと少し広めの道に出て、そこから更に進むと海岸沿いの道路と合流する。


「わぁ、海キレイ!」


何処までも続きそうな海は碧く、さざ波は太陽の光を乱反射させ、はるか向こうにはいくつかの島影が見える。

都会の湾岸道路を走ってる時に見かける風景とはまた違うものであり、また、走りながら見るものはヴィラからのものとは何だか違って、テンションも上がってくる。

彼らに断って窓を開けると、潮の香りを含んだ心地よい海風が車の中を通り抜けていく。


「風が気持ちいいわねぇ」

「だねー」

「愛優香さん、寒くない?」

「ありがとー、大丈夫、寒くないよ」

「愛優香、ラジオつけていい?」

「どーぞー」


運転中の京介くんに代わって一磨くんがカーナビのタッチパネルを操作すると、軽快なオープニング曲が流れてすぐ、陽気な男性DJの声がタイトルコールを告げた。

この地方特有の言葉を含むタイトルと少し訛りのある話し方は本当に遠くまで来たことを感じさせる。

また、協賛企業の名前を聞いていると地方の名称を冠するものが多く、地元との密着性を窺わせた。

そのCMの後、カーオーディオから流れてきたのは彼らのアルバム《Wave》に収録されている『Eternal Sunshine』のイントロだ。

番組のDJが言うにはこれはリスナーからのリクエスト曲で、思い出のある一曲というテーマで募集したものらしい。


『Wave大好きさんからは《Eternal Sunshine》、それから、京介くんLOVEさんからは《Secret Summer》のリクエストをいただきました!それでは2曲続けてどうぞ!』

「二人の曲、同時にこんなところでラジオで聴くなんてすごい偶然ね」

「あはは、偶然じゃないと思うよー。 タイミング的に考えるとマネージャーたちがリクエストしてたんじゃないかなー」

「え?」

「予告の前段階とでも言えばいいのかな、前振りみたいな感じで流してもらうことはあるんだ。 何しろかなり前の曲だしデビューしてすぐのものだしね、知ってる人は少ないと思うよ」

「少ない? そうかなぁ」

「だから2曲同時にリクエストってのも、ね。 来週あたり、義人の《Leaves》とか亮太の《Snowflake》とか流れるんじゃない?」


一種のステマみたいなものだろうか。

かなり前にリリースした曲が流れてくると懐かしくなってまた気に掛けるようになるし。

ただ、《Wave》に収録されている曲は本当にいいものばかりだと思うし、彼らのファンの中で新参者となる私の一番のお気に入りはこのアルバムだ。


「そう言えばさ、作詞って難しいの?」

「うーん、どうかな」

「オレは苦手。 前回は翔と一磨にめちゃくちゃ助けてもらったしなー」

「そうなの?」

「義人と亮太も苦戦しててさ。 あのアルバム、翔と一磨が居なかったらどうなってたんだろうって思うくらい」

「そうでもないだろう。 何だかんだ言ってみんな仕上げてたじゃないか」

「いろいろとアドバイスがあったから何とかなったんだよ」


そんな会話の途中で《Secret Summer》の一節が流れて私は思わず口ずさんだ。


「え」

「あ、ここの歌詞、すごく好きなのよー」


ふと前を見ると、一磨くんが京介くんの肩をバンバンと叩いていて。

そして京介くんの耳がほんのりと赤くなっていた。


「?」

「よかったな、京介」

「う、うっさい!」


前の二人の様子に疑問符を浮かべる私をよそに、車はこの地域一番の市場へと向かうのだった―――。


〜 to be continued ~