二十四の瞳 | 続・日々コラム・・・

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昔、出会った小説や映画に再会すると、以前とは違った感情がたくさん湧いてくることがあります。

たぶん、絵画や音楽も含めて芸術作品というのは、受け手である私たちの人生経験が媒体となって、それぞれの心に届くものだと思うのです。
なので、価値や評価の押し付けはもっての他ですし、作家の豊かな感性や根深い主張によって作られ他作品は、触れるたびに新しい発見があったりします。
「ああ、そういうことだったのか」と、まるで自分の人生経験のリソマス試験紙のような存在、それが名作と言われるものなのでしょう。

ふとしたきっかけで「二十四の瞳」を思い出しました。
この小説を扱った作品として一番お気にいりなのは、あの不朽の名作映画です。瀬戸の美しい風景と、高峰秀子さんの大石先生。木下恵介監督で1954年の作品です。
モノクロならではの豊かさと、高峰秀子さんの気高い美しさ。何度もリメイクされていますが、この作品は現代のアーティストでは出せない魅力がいっぱいです。

壺井栄の原作が1952年だそうで、僕は実は戦前のものかと誤解していたのですけれども、この小説を、その時代に映画化していることにとっても意義があると思います。
現代人の、いまの「まろやかな世情」と価値観によって描くと、ただの反戦ものになってしまいがちです。

1928年から1952年までの日本の経緯を、当時の人がどう思いどう描いたか、とても貴重な資料でもあります。

「役に汚れる」ことのできた名優たちが演じている演技も素晴らしいです。

娯楽を求める観客に安易に媚びていない作品は、なんども見たくなる根強いものを感じます。

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