朝日新聞の塾通いの低年齢化の記事について、茂木健一郎氏が以下のようにツイートしている。
受験のペーパーテストのために、脳が柔軟な大切な時期をこのような狭い学習に費やすのは一人ひとりの人生がもったいないだけでなく、国家的な損失。「偏差値」という受験産業のマッチポンプにいつまで付き合うのか?
— 茂木健一郎 (@kenichiromogi) November 28, 2020
中学受験塾、進む低年齢化 「席埋まる前に」早めに入塾https://t.co/LA5BGbwhQ7
(以下茂木氏の意見への反論めいたものになりますので、ご留意ください。)
茂木氏(などの有名な学者)によくありがちだが、専門外の知識も何もないところに対して自分の思い込みで発言することがある。私は、それが「あの有名な学者がこう言っている」という形式で世間へのミスリードとなるのは非常に有害だと思っている。
サピックスの都心校舎における過熱ぶりは私も何回もこのブログで触れている。ただ、低学年からのサピをはじめとする中学受験塾への入塾は、必ずしも悪くはないし、使い方によっては子供にとってもプラスになると思っている。
まず茂木氏の意見の背景にあるのは、こういった受験塾では、ペーパーテストをクリアするための限定されたテクニックを教え込むだけ、あるいは知識を詰め込むだけ、という事実誤認だろう。
サピックスの低学年の教材を見てみると、もちろんそれが中学受験に役に立たないとは言わないが、直結するような内容ではない。算数はパズル的ものがメインだし、国語もいわゆるテクニックよりも、文章を読むことを楽しませようという内容だ。つまり、「知らないことを知る、難しい問題を考える」ということが「とても楽しい」ということを低学年のうちからわかってもらい、勉強に対するポジティブな姿勢を育成するところに主眼が置かれていると思う。
茂木氏は野原や公園を駆け回って、友達と遊ぶ中で「学び」を得るのが本来の姿だ、と言いたいのだと思うし、それも確かに重要だ。ただ、サピは低学年のうちは週1回だけである。その程度であれば「野原や公園を駆け回る」時間がなくなってしまうことはあり得ないだろう。他の習い事と大差ない。
「国家的な損失」と茂木氏は言う。こういう大きい言葉を使うのもこのようないっちょかみ学者に特徴的で、意味不明な場合が多い。
サピックスに通えば全ての子の向学心が常に育成されるかといえばそうではないかもしれないが、もし低学年からサピックスに通うことによって、勉強というものに対するポジティブな姿勢が得られる子が一定割合生まれるのであれば、それはむしろ我が国の将来にとってプラスなはずだ。
そして、全ての子供はそのような塾に行くのは嫌に決まっている、というのが茂木氏のもう一つの事実誤認だろう。
子供が全く楽しめない、行きたくないサピックスや中学受験塾に、低学年から通わせるのは私も反対だ。ただ、低学年のうちのサピックスは、正直緩すぎるくらいのカリキュラムだし、半ば頭をつかった遊びみたいなもので、通っている子の大半は楽しんで通っているのではないだろうか。そのような「楽しくて塾に通っている子供」という存在のことはおそらく想像したことがないのだろうと思う。
もちろん、私も低学年からのサピックス通塾にもろ手を挙げて賛成という考えではない。費用もかかるし、中学受験の準備としては早すぎると思う。勉強へのポジティブな姿勢を学ばせたいなら、家でもできることはたくさんあるし、塾に通わなくたってできることはあると思う。
が、茂木健一郎氏のような何も理解していない学者が、専門外の分野について思い込みで意見を言うことで、世間をミスリードするのは本当に辟易するので、このような記事を書いた。
茂木氏は自分の影響力というものを理解して、きちんと背景などを理解してから発言するようにしてほしいものである。
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