続:国際結婚に伴う子の親権(監護権)とハーグ条約セミナー9-18 | あいせきさん

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それで終わりです。あくまでも、フランスという国に戻す手続きだってことです。
はい、この1から7で全てです。ハーグ条約については、概要は、これで終わりで
す。

00:25:45~ 「ハーグ条約を起こされても戻さなくて済むんじゃないか」の問い合わ
せ先
で、皆さん、知りたいのは、いざ日本に帰った場合に、そのまま仮にハーグ条約を
起こされても、戻さなくて済むんじゃないかと。あるいは、皆さん、既にいろんな方
に相談されていて「そういった場合には大丈夫なんじゃないの」と言われているかも
しれません。それが果たして本当かどうかてことを、これから少し話をしたいと思い
ます。
実際、私の事務所にも、外から、海外から電話がくるんですけども、結構、日本の
行政書士さんに、電話で聞きました。そしたら、戻っても大丈夫だよって言われたと
いう方もいらっしゃるんですね。そもそも、行政書士さん全然関係ありませんから
ね。電話するときには、きちんと弁護士とかに電話してください。あるいは、ちゃん
と外務省に電話してくださいね。で、フランスの国内でハーグ条約について質問する
ことは、大丈夫、良いですけども、フランスの弁護士さんはあくまでもフランスの法
律しか知りません。ハーグ条約の問題が起こるのは日本なんです。日本の裁判所がど
う判断するか、なのでフランスの弁護士に対して、日本に連れ帰った場合、戻さなく
てもいいんですかってことは、聞いても駄目です。つい最近いらっしゃいましたけど
も、赤ちゃん、ちっちゃい場合には、フランスから日本に戻ってもハーグは大丈夫だ
よって回答された弁護士さんが、フランスにいたんですよね。これ違うんですってい
うことを、これから話をしますから聞いてください。

00:26:52~ 子が新しい環境に馴染むことが、返還拒否事由になり難いことの説明
さて、ケースを見ていきますと、3番目ですよね。まずは、日本に帰ってきた後、
お兄ちゃんは、小学校に入りました。編入しました。で、お姉ちゃんも保育園に行く
ようになりました。も、すっかり日本の生活に馴染んでます。生活環境考えても、実
家の協力を得られる日本の方がずっといいと思います。子供にとって、こんなに環境
もいいし、こんなに馴染んでいるんだから、これでも返さなきゃいけないんですか、
という素朴な疑問がありますよね。もう馴染んでるじゃないのっていう話です。で、
何かこういったのが返還拒否事由になるのかなーと思って条文を見ていきますと、似
たようなものがあるんです。このレジメの方の2頁の3の(1)なんですけども、
えーとですね、子供が新しい環境に適応している、つまり馴染んだこと、って書いて
あるんです。

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# 反訳における引用
#国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律
#(子の返還拒否事由等)
#第28条 裁判所は、前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる事由のいずれか
があると認めるときは、子の返還を命じてはならない。......
#一 子の返還の申立てが当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時から一年を経過
した後にされたものであり、かつ、子が新たな環境に適応していること。

ただしこれ、馴染んでればばいいってわけじゃなくて、その前に文章があってです
ね、1年経過した後、って書いてあるんですね。ま、連れ去ったりとか、連れ帰った
りとか、あるいは日本で留め置いてから1年経っていて、かつ馴染んだ場合にはもう
返さなくてもいいんですよってことを、書いてある。だから、1年以内であれば、い
くら子供が幼稚園行って頑張っていても、いくらもうフランス語忘れて日本語喋って
いても、ダメなんです。1年以内であれば、この要件に当たりません。
ここで一つ言葉として、連れ去りってとピンとくると思います。夫の許可を得ず
に、日本に急遽帰っちゃう場合ですよね。で、これ留置ってのがあってですね、留
置ってのは分かりやすくいうと、今回のケースの夫の了解を得て日本に帰るわけで
す。帰らせてくださいね、いいですよ、三か月後に帰ってきますからね、と言って帰
りました。で、3ヶ月後の、例えば、なんだろう、9月30日を過ぎても帰らなかっ
た場合には、これ留置っていうんです。一定期間は夫の許可のもと日本に居るわけで
す。ただし、その後、約束を超えて日本に居た場合には留置と、そのイメージで構い
ません。だから、このAさんのケースについては、留置に当たるわけですね。ただ
し、これAさんといいますかこの人、いついつ帰るっていう約束を、夫とはあまりし
てない状況なわけです。しばらく家に帰りますから、と言って帰ってきた。往復チ
ケット取ったと思いますけど、現実にフィックスしてる日は無いという状況で、
じゃ、いつから1年始まるんだということが、たまに問題になります。これ簡単に書
いてますけど、基本的には、この米印ですけどね。TPっていって、テイキング・ペ
アレント、お母さん、連れ帰ったお母さんと思って下さい。(お母さん)が、子供を
常居所地国、フランスに帰しませんよっていう意思を表示したと客観的に判断できる
時期、つまり、この状況であれば「もう私帰りませんから」とはっきりと言ったとか
とかですね、はっきりと客観的にわかる状況があった時から、一年が始まりますって
話です。なので、このままズルズル、ズルズルと、もうすぐ帰るんだけども、もう少
し待ってくださいと、お父さんの状況まだまだ治んないんですっていう話を引っ張っ
ていると、この間は1年て時間は始まりませんので、いつまでも1年経たないと思っ
て構いません。経ちません。よく1年間逃げ切れますかって相談がありますけども、
基本的に1年逃げるなんて不可能なんで、そんなこと考えないで下さい。結構、1年
ギリギリで裁判の申立がくることも、結構ありますんで、1年逃げることは考えない
こと。

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00:29:41~ 夫から「子どもを連れてフランスから出て行け」と言われたことが、返
還拒否事由になり難いことの説明
そうなんだ、じゃあそれは、しょうがないですねって、4番目です。レジメじゃな
いや、事例の方に戻って、ケースの4番目。
実は、私がパリに居たときに、夫から、「お前なんか、子どもを連れてフランスか
ら出て行け」と言われました。つまり、もう、なんか、要らないと、子供を連れて、
子供も母さんも妻も日本に帰っていいと言ってましたと。こうやって出て行けと言っ
たんだから同意してるんじゃないですかと。何今更、戻れって言うんですか、という
のもよくある話なんです。
じゃ、これは何か返還拒否事由になりますか、というと、レジメの2頁目の
(2)28条1項3号ってあるんですけど、これは分かりやすく書いてます。留置と
か連れ去りのときに前に同意していた場合とか、あるいは連れ去った後、留置の後に
承諾していた場合、まさに同意ですよね。あの時は、日本にはっきり帰っていいです
よ、と言ってた場合には、基本的に返還しなくていい、という話になってるわけで
す。じゃあラッキーと、メールで、とにかく同意させるようにいっぱいなんか書いて
もらおうとか、あるいはいろんなメール見ていくと、なんだろうな、それこそ、も
う、お前なんか日本に行けと書いてあったとか。で、それでもって日本の裁判所は、
はっきりと返還拒否事由だといって、返還しなくて良いっていうかっていうと、そん
な簡単ではありません。そもそも、夫の気持ちは、揺れてますよね。そら、喧嘩した
ら「戻ってくるな」と言うかもしれません。でも、その後、やっぱりごめんって、
帰って来いって、言うかもしれません。なので、基本的には、何か一言を取り上げて
同意だっていうことにならないんです。あくまでも、これに書いてますように、基本
と、あの「LBP」ってのはお父さん、レフト・ビハインド・ペアレントですけど
も、お父さんにおいて、子供が一時的に日本に滞在するに留まらず、その後も日本に
相当期間、相当長期間に渡って居住し続けることまで合意・承諾し、かつ、子供の返
還を求める権利を放棄したといえるような状況が必要です。分かります?、だから、
はっきりと書面で「君たちは、もうフランスに戻って来なくていいですよ」というよ
うなものが、はっきりと書かれているような問題じゃない限りは、無理だと思って下
さい。まあ、あの、よく、空港まで送ってくれました、とかいう話があるんですね。
で、空港まで送ってくれた段階では、同意してたかもしれません。「お前なんか帰っ
てくるな」と。ただ、その後、寂しくなって、「やっぱり戻ってきて」というメール
があったりすると、裁判所は、なかなか同意があったという風には見てくれません。
なので、この同意っていうところで、戻らなくていい、ということにはなかなかなら
ない、と思うしかありません。

00:31:45~ 夫からDVを受けていたことが、返還拒否事由になり難いことの説明
そうなんだ、じゃあ次、5番目です。「私はフランスにいる間、夫から、すごく暴

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力を受けてました。こんな場合にも子供を返還しなくっちゃいけませんか。」これ、
ハーグ条約入るときから、皆さん、よくお聞きになっていると思いますけれども、い
わゆるDVがあった場合とかに、返還拒否事由になるんでしょうか、という問題があ
ります。このあたりについて、結構、日本でも裁判のケースが積み重なってきまし
た。なので、今の状況をお伝えしたいと思います。
で、条文を簡単に見ておくとですね、条文、ここは大事なので見ておきましょう。
このレジメ編の5頁です。ちょっと字がちっちゃくて見えないかもしれませんけれど
も、28条ってのがあります。28条ってのが返還拒否事由なんですね。ここに書い
てあるようなことがあれば子供を戻さなくてもいいですよっていう条文です。

# 反訳における引用
#国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律
#(子の返還拒否事由等)
#第28条 裁判所は、前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる事由のいずれか
があると認めるときは、子の返還を命じてはならない。......
# ......
#四 常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他
子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。
# ......
#2 裁判所は、前項第四号に掲げる事由の有無を判断するに当たっては、次に掲げ
る事情その他の一切の事情を考慮するものとする。
# ......
#二 相手方及び子が常居所地国に入国した場合に相手方が申立人から子に心理的外
傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれの有無

で、この28条の漢数字四のところを見ると“常居所地国に子供を返還することに
よって、子供の心身に害悪を及ぼすこと、その他子を耐え難い状況に置くこととなる
重大な危険があること”と書いてますよね。ようするに、子供を、このフランスに返
すことによって、子供の心とか体に害悪を及ぼすこと、あるいは子供が耐え難い状況
に置かれること、そんな重大な危険って書いてあるんです。
これだけ見ると、別にお母さんへのDVって入って無いわけですけれども、この下
の方に行くと数字の二ってのがあります。今の第四号なんですけど、“四号にあたる
かどうかを判断するに当たっては、次に掲げる事情その他の一切の事情を考慮す

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る”って書いてあって、その2の、一、ニ、三の中でですね、二だな、横二ってやつ
です。2の二ってやつ、“相手方及び子が常居所地国に入国した場合に相手方が申立
人から子に心理的外傷を与えることとなるような暴力等を受けるおそれ”って書いて
あります。相手方って、これお母さんです。皆さんのことです。相手方です。ハーグ
条約をされる相手です。連れて帰る方です。(相手方)と子供が、もしフランスに今
後が戻ってきた場合に、夫の方の申立人から、子供に影響があるような暴力を受ける
ことがあるかどうかっていうことが一つの判断要素になりますって書いてあるんで
す。だから、決してDVがあった場合には返還しなくていいとは書いてません。あく
までも、条文上は、子供に心理的外傷を与えるような暴力だって書いてますね。子供
に心理的外傷を与えるDVって何だって話かもしれませんけども、それはこの事例で
いうと、かつ、裁判所がどう考えているかというと、基本的には、レジメの3頁に戻
りましょう。「暴力について」っていうのが「ア」で書いてますけども、まずは、そ
もそもバコって喧嘩で殴られました、じゃダメなんです。離婚原因になるかどうかの
暴力ってのはね、もちろん、それは言葉の暴力も当然、暴力ですし、DVに含まれま
す。ただここでいってる暴力ってのは、一定の強度の暴力が、継続的とか、恒常的、
もっぱら毎日になったとか、そういった状況がまず必要です。しかも、その暴力が子
供の面前で行われるなど、子供の認識できる状況下でされたものであること、つま
り、その暴力、お母さんに対する暴力によって、子供が害を受けなきゃいけないわけ
ですから、子供の目の前で行われているかどうかっていうことが、すごく根本となり
ます。だとすると、子供がそもそも生後6ヶ月だったら、子供、認識できないわけで
すから、いくら暴力があっても、実は、これ、「子供の危険」には当たらなくなっ
ちゃうわけです。
じゃあ、目の前でボコボコにされてました、しかも子供も見てました、すごく子供
も泣いてました。じゃあ、もうこれだし、返さなくていいんですかっていうと、更に
もう1個要件があってですね、仮にそういう状況でも、このフランスに戻ったら、こ
んど、子供とかお母さんをきちんと保護してくれるような制度があるかどうかっての
を、見るんですね。つまり、例えばフランスで、当然、保護命令とか、シェルターが
あったとか、するわけです。そんな制度があるということは、実際フランスに戻って
きても、ここでお母さんちゃんと逃げられるじゃないのと、子供を保護できるじゃな
い、だったら子の返還拒否事由に当たらないね、というのが今の日本の裁判所です。
かつ、多くの国がそういった判断をしています。

00:35:28~ DV関連証拠を、返還拒否事由とするための具体的方法
となると、じゃあ、そもそもフランスの場合、ちゃんとした法律があるんだから、
無理なんじゃないのっていうと、それは基本的にはケースバイケースです。例えば、
フランスで保護命令が取られてました。にもかかわらず、夫が無視して家に来たこと
がありましただとか、何度も何度も警察が入ったときでも、夫は、いうことを聞いて
くれませんでしたとか、あるいはシェルターに行こうと思ったら全然満員で入れてく
れませんでしたとか、そんな状況が実際あったとして、かつ、それが証明できれば、
保護要件というんですけども、この要件はクリアできると。なので自分で、これ暴力

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があったから返還しなくていいなんてことは、自分で判断しないで下さい。基本的
に、きちんとした専門家に相談をして、かつ、どんな証拠があるかっていうことも、
すごく大事です。いくら暴力がありましたっても、全然、それは言った言わないに
なっちゃいますからね。きちんとした証拠を持って帰って来ることも大事です。例え
ば、フランスの病院に行って、きちんと診断書を書いてもらうとか、あるいはシェル
ターに入っていたならばシェルターの方に証明書を書いてもらうとか、警察に行った
ならば警察に相談した履歴記録等を書いてもらうとか、この辺り、また橋本事務所の
先生に、ご説明頂きたいと思いますけれども、そういった証拠をちゃんと持って帰
るってことが必要です。

00:36:33~ 「お母さんが帰らないだけでは、残念ながら、そこは返還拒否事由とし
て認めてくれません。」
はい、で、このさっき読んだ28条1項4号の中にはですね、その暴力だけではな
くて、その子供、どこだったかな、条文の中には、“子供を耐え難い状況に置くこと
となる”、って書いてあります。つまり暴力に限らず、子供が耐え難い状況になれ
ば、じゃ返還しなくていいんだと。で、いったい耐え難い状況になる可能性がありま
すよって、いうわけですよ。例えば、どういうことがあるかっていうと、このでレジ
メに書いてますけども、さっきの暴力の下ですね3頁目の「イ」です。具体例とし
て、そもそも、子の監護が困難な事情ってところに入ってますけれども、そもそも、
このお母さんがですね、あそうか、そうか、これ、ケースの6にも当たるんだ。6、
見よかな。6。ケース編の6の方です。
わかりましたと、もう暴力もありませんし、子供返せっていうんなら返しますよ
と。でも、私は帰りませんからね、という話ですね、もうあんな夫とは一切会いたく
ないし、目も見たくないし、怖いし、だから私はフランスへ戻るつもりはありませ
ん。でも、それでも子供を返せって言うんだったら、子だけ返しますよ。でも、あん
なお父さん、子供を戻しても絶対子育て出来ません。母、無では、そもそも子供は生
きていけません。この状況でも返せって言うんですか、ていう話も皆さんよく主張さ
れます。もっともですよね。これまでは、お父さんお母さんが居て、子供は育ってき
たわけです。でもお母さん居ないところで、子供を、例えば生後9ヶ月の赤ちゃん
を、フランスに戻して、お父さん、ちゃんと世話ができるかっていうと、厳しいかも
しれない。こんな状況が、さっきの返還拒否事由、「子を耐え難い状況におく」と、
いう状況にあたるかどうか、という話なんです。ただ、これについても裁判所は割と
シビアなんです。お母さんじゃあ戻りませんって言ったら、それが全部返還拒否事由
になってしまったら、皆そういう言いますよね。「私、帰りませんから」。ただ、お
母さんが帰らないだけでは、残念ながら、そこは返還拒否事由として認めてくれませ
ん。

00:38:30~ お母さんが戻らないことを、返還拒否事由とする具体的方法1

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ただ、いんな総合的な状況として、例えば、この「イ」で書いてますけど、常居所
地国つまりフランスにおいて、お母さんが帰るとしてもね、滞在資格、例えば、どん
なビザで帰れるのか、もう離婚しちゃってると、そもそもフランスに残れないではな
いかとか、あるいは働けないのではないかとか、というような問題が考慮されます
し、実際、子供が学校に通うための確保できる可能性があるのかとか、あるいは家族
とか友人とか支援機関からの受けられる援助があるのかとか、あるいはお父さん側の
事情として、アルコール依存症なのかとか、薬物依存症とか、精神疾患とか、こう
いった心身の状態だとか、こんないろんな事情を総合的に考慮して、これは子供を戻
したら無理ですね、と判断されれば、返還拒否ということになります。ただ、こう
いったところで認められたケースはほとんど無いんです。実際、皆さん主張されます
「お父さん無理だと思います」と。ただ裁判所は、そこは、当然お父さん側は大丈
夫って言います。じゃ、大丈夫か大丈夫じゃないのかってところは、このハーグの6
週間の裁判の中では、じっくり判断する時間が無いので、最終的には問題が無いとい
う判断をされかねません、まぁ、されますんで、あまりここも安易に考えないで頂き
たいと思います。むしろ、本当にお父さんが、アルコール依存症とか、心廃(?)、
あるいは薬物で捕まったとかあるならば、そんな記録を持って帰るとか、いうぐらい
のことが必要です。

00:39:40~ お母さんが戻らないことを、返還拒否事由とする具体的方法2
その括弧下で書いてますけども、お母さんが戻らない場合に、どんな場合で、例え
ば返還拒否になるかっていうと、確実にフランスに戻った場合には捕まると、絶対
に、このフランスで逮捕状出てるんですと、私、帰ったら絶対捕まっちゃいます、て
いうような状態だとか、あと、絶対にフランスでは生活をしていくことができませ
ん、支援うけることも絶対期待できません。実際に生活保護とか、いろんな社会保障
があると思うんで、これなかなかフランスでは言いにくいですけども、こんな事情だ
とか、あるいは、私、絶対戻ったら死んでしまいますとか、そういうことを自分で言
うことは難しいですども、自殺、自傷に及んだりする危険性が極めて高いとか、こん
な場合には、お母さん戻らないって事情が、返還拒否事由として考慮されてるという
のが、今の裁判所の現実です。

00:40:21~ 子供の意思が、返還拒否事由となり得ることの説明
はい、6まで、はい6まできました。もう、全然、これまで
1、2、3、4、5、6、全部否定されちゃって、私、やっぱり返還するしかないの
かな。でも最後、実は、うちの息子は、もうフランスに帰りたくないと言ってるんで
す。子供の意思、子供が嫌だと言ってるんだと、これでも返すんですか、というとこ
ろが7番目。事例で書いてます。ケースの7番目です。6歳の長男ってのが、この人
ですよね、フランスには帰りたくないって言ってます。子供の意見は尊重されます
か、というところです。で、条文は、レジメの方の28条1項5号の方です。3頁の
一番下です。これは、ちゃんと子供が嫌だって言ってる場合、拒んでる場合には、返

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還しなくてもいいという条文があるんです。

# 反訳における引用
#国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律
#(子の返還拒否事由等)
#第28条 裁判所は、前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる事由のいずれか
があると認めるときは、子の返還を命じてはならない。......
# ......
#五 子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合
において、子が常居所地国に返還されることを拒んでいること。

読んでみると、“子の年齢とか発達の程度に照らして、子供の意見を尊重、考慮する
ことが適当である場合において、子供が常居所地国に返還されることを拒んでいるこ
と”、と書いてます。ただ子供が嫌だったと言った場合ではないんです。あくまで
も、子供がちゃんと意思表示ができるような年齢ですか、発達してますか、というと
ころを、まず見ます。で、その上で、子供が自分の意思として言ってる場合です。

00:41:21~ 「帰ったらすごくいじめられてるんだ、学校で例えば差別を受けてると
か、そんな場合には、子の異議って通る」
で、これ、まず本質として、決して、あんなお父さん嫌だ、とかではないんです
よ。あくまでもフランスという国に戻りたくない、と言ってることが???んです
ね。わかります?お父さんが嫌でもフランスでいっぱいお友達がいるとかいう状況っ
てありますよね。普通にフランスが大好きな場合には、子の異議っていうのは、そも
そも通りません。
逆にあってです、お父さんは好きなんだけども、帰ったらすごくいじめられてるん
だ、学校で例えば差別を受けてるとか、そんな場合には、子の異議って通るんです。
あくまでも、子供がフランスに返還されることを望んでない事って所が、ポイントで
す。

00:41:54~ 子供の意思が返還拒否事由として考慮される子供の年齢について
で、この子供の年齢とか、発達ってのは何歳ぐらいから考慮されるんですかってい
うことなんですけど、明確な何歳っていう法律は無いんです。で、実際、日本の運用
上は、少なくとも6歳未満の子供について、子供もの意思を考慮されることはありま

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せん。6歳以上10歳未満の場合は、あるいはケースバイケースとありますけど、多
くありません。で、10歳超える場合には基本的には尊重されてるってのが日本の運
用です。諸外国を見てると8歳とかで、立派に尊重されている場合もありますけれど
も、日本の裁判官の説明によると、6歳未満は絶対ダメですよと。6歳以上10歳未
満の場合にはケースバイケースです。だから、このお兄ちゃん6歳ですけども、この
子供たちお兄ちゃんがフランスに帰りたくないと言ったからといって、裁判所の方で
返還拒否としてくれることはあまりないというのが現実です。

00:42:42~ (不返還を)「諦める必要はありません」(子の連れ去りを前提とし、
子の連れ去りを未然に防ぐというハーグ条約の理念とは逆)
じゃあ、私、もうこれで、全部返還拒否事由が満たされません。どれもダメでし
た。じゃあ、仮に日本で裁判起こされたら絶対返還ですかというと、そうではありま
せん。実際、これ、話し合いをするわけです。ハーグの裁判起こされると、基本的に
日本の裁判所は、調停っていうのを開きます。調停、いわゆる離婚調停とか使うんで
すけれども、話し合いをしましょうということで、夫も基本的には日本に来て話し合
いをします。その中で、仮に日本に残る場合、仮にフランスに戻る場合、と両パター
ンに分けて、それぞれ頭の中を整理するんですね。仮にフランスに戻った場合には、
お母さんどうやって生活しますか、子供をどうやって監護しますかってことを、いろ
んなことを、考えさせられます。仮に日本に残った場合には、お父さんどうします
か、日本に会いに来ますか、子供さんとどうやって会いますかってことを、彼に、お
父さんに、問いかけます。そんなこと、時間かけてやるんです。その中で、例えば任
意に父親の方が、「もう、お母さん、子供が日本に馴染んでるんだから、日本に暮ら
してもいいんですよ」という話されることも結構あります。あるいは逆に、お母さん
としても、一旦フランスに戻ろうと、戻った上で、きちんとお父さんと話をして、フ
ランスで生活していこうと思って帰って行かれる方もいます。なので、実際、ハーグ
裁判で0(%)・100(%)で決まるわけではなくて、話し合いをする中で、良い
条件、いい取り決めをして、戻るなり戻らないってことをしていく、というのが日本
の裁判所、日本のハーグの事件の特色なんです。なので、このケースで、戻ってき
ちゃった、で、返還拒否事由はありませんね、って弁護士に言われたからといって、
諦める必要はありません。むしろ、きちんと話し合いをして、望んでる結論になるよ
うに頑張って頂きたいなと思ってます。

00:44:10~ 不返還は認められにくいから「なので、戻ってくる前にきちんとできる
ことを、このフランスでできることをやってから、戻ってくる」(子の連れ去りを前
提とし、子の連れ去りを未然に防ぐというハーグ条約の理念とは逆)
ただ、今日、ここにいらっしゃるのは、まだこれから、まだまだ戻ってない方なの
で、私たちのアドバイスとしては、端的に言うと、戻ってもかわいそうです、気の毒
です、本当に返還になっちゃいます、ということを、きちんとお伝えせざるを得ない
と思ってきています。余程じゃ無い限りは、返還拒否事由ってのが満たされない、と

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いうのが日本の今の運用です。他の国もそうです。かつ、強制執行制度が甘いから逃
げれるんじゃないかと、そんな話も、もしかしたらあるかもしれません。けれども、
そんなこと全然ありません。基本的には裁判所の決定には従わなければいけません。
なので、戻ってくる前にきちんとできることを、このフランスでできることをやって
から、戻ってくるなり、自分の人生を考えて頂きたい、というところでございます。
私の方は、ざっとした概要で、一旦概要として終わりにして、このハーグの説明を
し、その後、フランス法の話をして頂きます。まず、ありがとうございました。

00:45:55~ 以下、未反訳